「…………お?」
気付いた時には目の前にあったはずの白い空間は消え去っていた。
代わりに目に飛び込んできたのは夜の幻想的な草原地帯。
周囲一キロに明かりは無く、月明かりだけが俺を照らしていた。
「……さて」
俺はスマートフォンを取り出して電波状況を確認する……思った通り圏外だ。
ってことはここはもう異世界なんだろうか?
それともミカのいたずらでとりあえず電波の届かない場所にでも送られたのだろうか?
まぁ、後者はありえないだろう……メリット無いし。
しかし異世界に来れたのはいいのだが、地図も何にも無いんじゃどうしようもない。
一緒に来るとか言ってたミカでさえいない始末。
「とりあえず……森と反対の方向へ進もうかな」
木が生い茂った森に背を向ける。
ジャングルでもないなら、集落を作るならああいった場所は選ばないはずだ。
それにああいった場所の近くに村を作ると森を進んできた敵に奇襲を受けてしまう。
まぁ、この世界が思っている以上に平和ならいいのだが。
「あーマジかよ……最近身体動かしてないからなぁ」
俺はやや運動不足気味の足を進ませる。
目指すは人が住む場所、俺の旅は始まったばかりだ。