――森から三キロ離れたとある高台――
歩く事数分、なめらかな斜面を登るとその場所から明かりを発見した。
どうやら俺の予想は間違っていなかったようだ。
第一印象では単なる村のようだったが、この高台に到着して人の有無をスコープで偵察した結果、ちょっと良くない事が判明した。
どうやらその村、どっかの強盗集団に襲撃されているようなのだ。
いや、もう襲撃は終わっていて、今の状況はもっと酷い。
家々は所々に火を放たれ、村人は手足を縛られ、品定めをされるかの如く一列に並ばされて盗賊の暴力に遭っているのだ。
村人も抵抗していたようだが、そう言った人たちは容赦なく虐殺されてしまったようだ……
「くそったれ……着いて早々人殺しなんてたまったもんじゃねぇぞ……!」
理不尽な暴力をスコープ越しに眺めながら、俺は歯を食いしばる。
これは俺が介入すべきか、しないべきか……今、俺の頭をこの二つの選択肢が行き来する。
いや、そんなかっこつけたもんじゃない。
単に戦うのが怖いのかもしれない。
正直に言おう。
俺はとある理由で人を殺した事がある。
俺が殺してた理由は、別に昼ドラの殺人みたいなシチュエーションじゃない、もっと単純にシンプルな問題だった。
今はその事を思い出したくないし、思い出す気も無い。
しかし、俺はこの恐怖の出所を知っている。
戦場が醸し出す独特の威圧感……きっとそれに違いない。