――他愛のない会話をしながら俺達はディナーを食べ終える。
こっちの世界の食べ物はおいしいようでよかった……女王陛下の国の味付けなら泣いてたよ。
腹八分目と言ったところだが、これ以上食べても苦しいだけだし何よりこの人達に悪い。
「ごちそうさま、おいしかったよ」
「ええ、とっても。これならお嫁に出しても恥ずかしくありませんわね」
ぼそりと「主に私が嫁にします」と言っているのはきっと俺の気のせいだ、そうに違いない。
少女は何かを言いたいのか、ずっともじもじしている……うーん、可愛いけどこうモジモジされるのはなれていないんだよなぁ。
今までずっとはっきりした女の子と話してきたからさ。
その時、ふと親父さんが唸り声をあげた。
俺達が親父さんの方を向くと、彼は背中を押さえてうずくまっていたのだ。
「おい、大丈夫ですか?」
なれない敬語で接するが彼は苦し紛れに笑顔を見せる……よく見ると背中から出血しているようだ。
「お父さん!」
少女とその母が駆け寄って父のシャツを脱がす。
背中には血が滲んだ包帯が丁寧に巻いてあった。どうやら先程の襲撃の時に斬られたようだ、元から滲んでいた血が真新しい。
俺とミカも駆け寄り、包帯を外された傷の具合を確かめる……これは適切な処置をしないと死ぬくらいの傷だ、よく耐えてたな。
「二人ともどいて……お母さんはお湯を沸かして。ミカ、俺のポーチからメディキットを……おい、しっかりしろ!嬢ちゃん、呼びかけるんだ!」
思ったよりも重体だ。
皆が俺の指示に従う……よく見たらこの人の喉、浅い傷がある。喋らないんじゃなくて喋れないんだ。
俺はミカからメディキットと彼女の羽をもらう。
「これでなでると痛みを和らげます」
その言葉を信じて俺は傷に当てる。
どうやら本当に痛み止めとして機能しているようだ、唸り声が収まって来た。
その間に俺は止血剤の粉を傷跡に掛ける。
痛いだろうが、我慢してくれ。