次に俺は母が持ってきてくれた生ぬるいお湯を掛けて傷口を洗う。
この止血剤は流れてしまっても、もう血は固まっているようだったので問題ない。
「痛いが我慢してくれよ!」
そう言って勇気づけるがかなり痛いに違いない。
出来るだけ早くやらなければ。
俺は小さい医療用水筒の中の消毒液を傷に掛ける。
これである程度殺菌できただろう。
後は縫うだけなんだが……裁縫はまぁまぁ得意だけど久しぶりにこんなことしたから失敗しそうで怖い。
「君、裁縫は得意かい?」
少女に尋ねると、彼女は自信なさげに頷いた。
頷くって事はOKなのか、そうだろう。
「傷口を縫ってほしいんだ、頼む」
そう言ってソーイングセットを手渡す……おぉ、少女も頑張ってくれるみたいだ。
彼女は少しためらったが、針に糸を通すと綺麗に傷を縫って行く。
うわ上手いな、まるでミシンみたいに縫いやがる。
ある程度縫い終わると、俺は糸をハサミで切った。
後は包帯だけ。
どうやらそれも少女の得意分野らしく、くるくると綺麗に、適切に巻いていく。
ものの数秒で巻き終えると、彼女は俺の方を向いた。
「いいぞ、後は注射だけだ」
そう言って俺は小型の注射器を取り出す。
「待って、私がやります」
不意にミカが大きめの羽を持って、根元の尖った部分を親父さんの腕に突き刺す。
「モルヒネよりもずっと良いですよ、健康的ですしおすし……がんばりましたね」
ミカは聖母みたいな笑顔を親父さんに向けた。