「マスター、いくらなんでもやりすぎです!!!子供を人質にとるなど……聞いていません!!!」
俺とウルフィアスの間に、クリームヒルデが割って入る。
話を聞いていると、どうやら彼女はミカが人質に取られていることなど知らなかったようだ。
それもそうだ、初対面でわかるぐらいにいかにも真面目なもんだから、きっとウルフィアスがミカを人質にしたなんて聞いたらあの髪まで熱血が入った騎士っ娘は黙っていなかったはずだろう。
聞かされていないのも頷ける。
きっと俺がジジイの立場だったら同じ事をしているだろう。
「貴公は黙って見ていればよい。邪魔だ」
そんな善人で優良である騎士の娘は、ウルフィアスが腕を掴んで無造作に横へ投げると少しだけ宙を舞って壁に激突した。
仮想空間に近いとは言え、魔法も展開していない状態で痛みがもろに伝わった彼女は短い悲鳴をあげて事切れる。
と、言っても死んだわけじゃないが。
そんなこともあってか、俺の中に潜むウルフィアスへの敵対心というか、憎しみと言うべきか、とまぁそれが先程の爆発に油を注いでいた。
そうして、今度こそ俺はブチギレる。
「……む?」
ふらりと立ちあがる俺を怪訝な目で見つめるウルフィアス。
彼はにやりと笑い、剣を握りなおすと力を篭めて構えた。
何か攻撃が来れば防御、それ以外なら攻撃。
シンプル且つ無駄のない彼の戦略と剣技はそれはそれは素晴らしいものだった。
「うごぉああああ!!!???」
そんな素晴らしい奴も、次の瞬間には大きく吹き飛ばされ宙を舞っていたのだが。