小説『リリカルなのはの世界へ飛び込んだ少年の物語』
作者:ryo()

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 リニスを加え住人が3人になった。この家はとても広いためにそれぞれの個室を用意してもまだ部屋が余っている。残念なことにリニスは人型に戻ってしまった。俺の魔力消費を抑える為に必要のないときは猫の姿でいてくれるらしい。とても優しい使い魔だ。その気遣いは俺には必要が無い事だが。俺たちの事情は所々誤魔化したが何とか納得してもらった。
 リニスが仲間に加わったため、これからの行動についての議論をしなければならない。今現在リニスが抱えている問題があるようだったからそれについての話し合いだ。
「わたしのことを話しますが、これからすることは大変危険ですので一人で行動します。あなたたちは今までと同じように生活してください」
「それは無理だわ。わたしはあなたと共に戦う力があるわ。そんな状況の中で手伝うな、なんて言われて聞けるわけがないじゃない。わたしは戦うわ!」
 面倒だ。非常に面倒だ。こういう奴に限って死に掛けたりするのだ。
「まあ、そう熱くなるなよ。とりあえず続きを聞かせてくれ」
「分かりました。わたしの前の主人、プレシア・テスタロッサは娘のアリシアを事故によって亡くしています。それまでは優しかったのですがそれ故にプレシアの心は壊れてしまいました。そうして蘇生の術を探して見つけたのが、『プロジェクトF.A.T.E』でした。完璧なクローンを作ろうとし成功したかに思えたのですが、様々なところにアリシアとの差異が視られた為に失敗作として『フェイト』という名前が付けられました。そして、戦えるように訓練をさせました。フェイトに魔法や戦闘方法を教えたのはわたしです。そして、わたしが教えられることは何もなくなってしまうほどに成長したのです。それを確認したプレシアはフェイトにお願いをしたのです。「お母さんの為にジュエルシードを取ってきて。とても大切なものなの」と。アリシアの蘇生を諦めきれなかったプレシアは娘を使い、望みを叶えることが出来ると言われるジュエルシードを集めようとしています。わたしはそれを止めなければなりません。自分の願いの為に娘を傷つけるなどあってはならない事です!それがたとえクローンであっても、です」
 なるほど、まだ幼い子供なら親である自分の言うことは聞くと考えたわけか。なかなか厄介だな。どうしたものか。魔法が使えるなら場所さえ分かれば転移が出来るんじゃないか?
「リニス、プレシアの居場所は分からないのかしら?」
「探っては見たんですが、どうやらそう上手くは行きそうにはありません。座標が変わっていて今どこに居るか分かりません。」
 さすがにそんなに甘くは無いか。もう少し馬鹿なら簡単に対処できそうだったのにな。
「打つ手もない以上、考えても仕方ないだろう。ご飯にしよう」

 辺りは暗くなっている。そんな中を俺とリニスは歩いている。あのバカは、醤油を買い忘れていたのだ。日本料理を作るのに醤油なしにどうしろというのだ。
「買い物なら私だけでもよかったのですよ?」
「無理だと思うぜ。どこにスーパーがあるのかわかるか?」
「すいません、また地図でも見て覚えます。」
 リニスは少し恥ずかしそうに俯いた。俺も似たようなものなんだがな。

 無事に醤油を買い終えた後の帰り道、大きな音が響く。周りを見渡すがさっきまでいた人たちがどこにも居ない。何が起こったんだ?
「リニス!これはどういうことだ!」
「結弦さん!これは魔法結界です!早く逃げてください!」
 結界だと?ならなぜ俺は巻き込まれたんだ?
「ウウォォォォォ!!」
 黒い塊、そう言い表すしかないだろう物体がそこには居た。明らかな敵意を持って俺の前に、現れた。大きさに似合わず俊敏な動きで俺の方へと走ってくる。
「リニス、これ持っててくれるか?」
 そう言い、俺は持っていた醤油をリニスに投げた。これで戦闘の準備は整った。
「待ってください。危険ですから戻ってください!」
「大丈夫さ。さあ来いよ、化物!俺が相手だ。」
 化け物は駆けて俺に襲い掛かる。俺はそれがどうしたとばかりに、真正面から殴り付けた。盛大に吹き飛ぶ化物、コンクリートにぶち当たった化物をさらに殴り付ける。徐々に化物の反応が薄くなっていく。そして、完全に動きが止まった時にはその化物の内部から光を放ち現れた青色の宝石を残し跡形もなく消え去った。
「ユーノ君!準備できたよ。この後はどうすればいいの?」
「とりあえず急ごう!結界が壊されたら厄介なことになるから。」
 誰か居たのか?見つかる厄介かもしれんが仕方ないか。
「え、なんでここに居るの?九条君」
「待て、お前は誰だ。なぜ俺の名前を知っている?」
 こいつは俺の名前を知っているのか。情報を調べたから知っているのか、それとも本当に会ったことがあるのかどっちなのか判断に困るな。
「ユーノ君?九条君も魔法使いなの?」
「分からないんだ。でも少なくともさっきの化物を倒したのは彼だよ。ねえ、どうやってさっきの奴を倒したんだい?」
 今、喋っているのはフェレットか?でもフェレットにしては何かがおかしい。
「殴り殺しただけだ。それより、なぜ俺は結界に巻き込まれたんだ?分からないとは言わないよな、コスプレ女とフェレットもどき」
 二人ともなぜかプルプル震えている。
「これはコスプレじゃないの!」
「好きでこんな格好でいるんじゃないんだよ!」
 え、俺の聞き方がまずかったのか?何でキレてんの?
「なんかごめん、怒らせた?とにかく理由を教えてくれ。早く帰らなきゃならないんだ」
 そろそろ帰らなきゃ露菜が心配するからな。
「九条君、憶えてないの?クラスメイトの高町なのはだよ。」
 クラスメイト?学校の?寝ていたのだから覚えているわけはない。
「それなら今じゃなくていいか。じゃあ詳しい話は学校でいいな!じゃあ今日はこれで」
 俺は走り出す。リニスも慌ててその後をついてくる。
「待ってなの!話は終わってないの〜。」
 明日からは忙しくなりそうだ。最悪だな。

-4-
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