小説『リリカルなのはの世界へ飛び込んだ少年の物語』
作者:ryo()

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 家に帰るとリニスが夕飯を作っていた。キッチンを見に行くと想像道理の惨状が見えた。
「リニス、なんでお前が作ると魚介類ばかりなんだ!」
 キッチンでは昼食と同じような光景があった。捌かれている途中の鯛や、炭火で焼かれた秋刀魚、烏賊飯など様々なものが並んでいた。しかし、それはすべて魚介類だった。
「結弦君はお肉の方が好きですか?でも、魚の方がおいしいと思いますよ?」
「ああ、その意見には全面的に賛成しよう。肉が食べたいとは言わん。しかしだ、なぜ野菜類が一切存在しないんだ!料理をしたことが無いわけではないだろう?なのになぜこんなことになるんだ。栄養バランスが悪くなるだろう!」
「すいません、あまりに美味しそうだったので夢中になってしまって・・・」
 あまりその気持ちは分からないが一方的に攻めるのも悪い気がしてきた。
「すまん、言い過ぎた。リニスはそのまま続けてくれ。俺はサラダを作るから」
 と言ってもまだ4時半くらいだ。料理をするには少し早すぎる。
「露菜、何か食べたいものは無いか?少しくらいなら作ってやろう」
「ん〜、ケーキが食べたいわ。偶に無性に食べたくなるのよね」
「ケーキだと?そんな物作るほどの時間は無いぞ。仕方がない、この前そこで見つけた喫茶店にでも買いに行くか。リニスも来い。少しくらい置いておいても問題は無いだろう」
「分かりました、準備をするので少し待っていてください」
 少ししてから全員で喫茶店へと向かった。子供だけで行くよりは保護者を連れて行った方がいいだろうと思ったのだがそれが今回は悪い方向へと転がったようだった。

その喫茶店の名は『翠屋』という。そこのケーキはとてもおいしいらしい。どうせ食べるなら中途半端なものは食べたくない。だが、この世界に来て初めて後悔した。
「いらっしゃいませ〜。何名様ですか?あれ、結弦君だ。どうしたの?」
 喫茶店に来て何か食べに来た以外にあるのかとすごく聞きたいが、それはいいとしてもなんでなのはがウェイトレスをしている?
「ケーキを食べに来た。席はどこだ?分からんから案内しろ」
「失礼しました、席はこちらになります」
「結弦、あんたなのはが居ること知っててここに来たの?」
「そんなわけがあるか。本当に評判が良かったから来ただけだ」
 最悪だ、今日だけで何で二度も会わなければならんのだ。
「探し物はいいのか、あれだけ執着してたくせに」
「闇雲に探し回っても無駄だからってユーノ君に止められたんだ。親に心配かけてもあれだしって言ってたんだよ。でも、結弦君に会えたからそれでもよかったなって思ってるの」
 露菜からの視線が物凄く痛い。しかもリニスは温かい目で見守ってやがるし。なんだよこの状況は。そうだ切り抜ける方法があるじゃないか。
「なのは、注文を頼みたいんだが・・・いや、やっぱりテイクアウトだ。家で調理をしている途中だったことを忘れていた。」
「テイクアウトならカウンターの方なの。こっちだよ」
 これでなんとか家に帰れそうだ。無駄な面倒事は避けたいからな。
「お母さん、お客さんなの!」
 カウンターにはなのはが母と呼んだ女性が居た。まだ20代に間違われそうなほど若く見える。その女性はこちらへ振り向き接客を始めた。
「いらっしゃい、ご注文は何かしら?」
 満面の笑みで振り向いたがこちらを確認して驚いたような顔をした。
「子供なのね。なのはのお友達かしら、それともお使い?」
 どうやら普通の客扱いはされていないらしい。と言っても、最初からそんなことは気にしていないのでどうでもいいのだが。
「じゃあ、ティラミスを1つと、お前らは何がいいんだ?」
「わたしはショートケーキとモンブランにしようかしら」
「え〜と、結弦さん。何を食べるのがいいんでしょうか」
「食べたいと思ったものを頼めばいいじゃないか。こういうのは直感だよ」
 まさかとは思うがマスターの命令の通りにしか動いたことが無いのか?別に俺は命令なんて滅多にしないからその考えは捨ててもらわなきゃ困るが。
「ではわたしもティラミスをお願いします」
 よし、決まったことだし会計を済ませて早く帰ろう。
「結弦君〜、また明日なの〜」
 こうして初めての『翠屋』訪問は終わりを告げたのだった。

 長い、長い一日だった。疲労がたまる。そして現在5時半だ。夕食の準備に取り掛かった俺だったが、早々に挫けかけた。魚介の量が多すぎる。
「リニス、次から魚介類ばかりが食卓に並んだら人間体のままでひたすらネコ耳触ってやるから覚悟しておけよ。」
「わ、解りました。バランスよくご飯を作るようにします。」
 怯えたような声でそう言うリニスだった。

「しかも、うまいから大した文句も言えないし、さらにイライラするんだよな」
 我ながらカルシウムが足りてないと思うような物言いだった。あまりにも傍若無人すぎるとは思うが魚ばかりしかも5品以上食卓に並んでみろ、言いたくもなるという話だ。
「リニスも反省してるんだから許してあげてよ。本当に面倒な人ね」
失礼なことを言ってくれる。まあ気にしてもいないが。
「話は変わるんだけど、これからどうするの?詳しく言うなら、ジュエルシードを取りに行くの?それとももう少し様子を見るのかしら」
 こんな楽しそうなイベントに参加しないという選択肢はないだろう?
「もちろんこれからは取りに行くさ。魔力反応が俺が確認できただけでも6つある。ユーノとなのはで二つ、リニスが言っていた『フェイト』がおそらくいる」
「フェイトにはアルフという使い魔が居るので残りの不確定要素は2つですね」
 なるほど、そいつら全員がジュエルシードを取りに来ているわけではないのかもしれないが警戒をしておくべきではあるな。するべきことも大体が決まったな。
「さて、明日から本格的に動くとするか。争いが起きても死ぬことにはならないだろうからな。そうと決まればさっさと寝ようか、明日も早いからな」
 これからが本当のお楽しみだな。こんなに気持ちが昂るのはいつ振りだろうか。これからはこんな日々が続くのだろう。俺はようやく人らしく生きているかもしれないな。

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