小説『天使ちゃんはS級魔導士のようです』
作者:コタツマン()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

まえがき
主人公出番ナッシング回
不定期とかいっといて普通に週1更新になりかけてます。
ログインのしにくさで一気にやる気が削られますorz


第六話



「皆さんのお陰で我々もこうして記憶を取り戻すことができました。本当にありがとうございます。これが今回の報酬です。」

ガルナ島。
ナツ、ハッピー、ルーシィ、エルザ、グレイの四人と一匹は見事村の呪いを解き、悪魔の姿に戻った村人と共に宴を楽しんでいる途中、村長から報酬を受け取っていた。

「700万J!」

「おお!!」

「黄道十二門も&#8252;」

ルーシィは鍵に、ナツ達は大金に喜びを表していたが、当然そんなことがエルザの前でまかり通るわけもなく、「この依頼は正式に受理されたものではうんぬん」「しかしそれでは我らの気がかんぬん」そして結局黄道十二門の鍵だけ受け取ることとなっていた。

ナツ達は当然不満を示すが、自分達が規則を破っている負い目から何も言えず、ただルーシィだけが得をする結果になっていた。

その後夜も更け、宴も終盤に差し掛かり、ひとしきり騒いだというところで、いまだに料理を食べ続けていたナツがふとエルザの方を向き、ゴクンと一気に食べ物を飲み込んだあと、質問を投げかけた。

「そういやエルザ。お前どうやってここまで来たんだ?」

「どうやって、とは?」

「俺たちにはボボのオッサンがいたけどよ。それ以外にどうやってこの島に来たんだ?ってことだ」

「そういえばそうよね、この島は気味悪がられて船は近付かないんじゃなかったの?」

すぐにルーシィが続く。
実際この二人はこの島に来る際、ことごとく船乗りに断られたため、余計に不思議に思ったのだろう。

「私は船など使ってはいないさ。それよりも速く確実な手段があったからな。」

「んだァそりゃあ?こんな島に船を使わずに来る方法なんてそれこそ空でも飛ばなきゃ無理だろ?」

上半身の服を何処かへやってしまっているグレイが話に加わってくる。
それはグレイからしたら冗談に近く、どのような方法できたかを促すつもりの発言であったのだが、グレイの期待していた反応に反してエルザは少し驚いたような顔をし、こう言い放った

「よく分かったな。グレイの言う通り、空を使ったんだ」

「「「「・・・え?」」」」

しばし呆然とする一同。

「え?え?なに?エルザって空も飛べたの!?」

「オイラは飛べるよ!!」

「うおおおお!!燃えてきたァ!」

「なんでだよ!!?」

数秒後に復活したそれぞれが思い思いの反応を返していたが、エルザは数度目を瞬かせ、慌てて首を横にふった。

「いや、そうではなくてだな。私が飛べるわけではなく、ほら私達のギルドにはもう一人いるだろう?ハッピーとは違う【翼】の使い手が」

自分が飛べるという認識を改め、少し遠回りに、しかし分かりやすく答えを示すエルザであったが、今度は何言ってんだこいつと言わんばかりの怪訝な表情が返ってきていた。

「ハッピー以外に【翼】を使えるやつなんてギルドにいたか?」

「いや、知らねェな。ギルドの奴らにそんな奴はいなかったと思うが・・・」

「オイラも同じ魔法を使う人にはまだ会った事ないよ?ルーシィ知ってる?」

「アンタ達が知らない人を私が知ってるわけないじゃない・・・」

「お前達何を言って・・・ああ、なるほど。すまない、私のミスだ。そういえばアイツの魔法を知ってる者は少ないんだったな。」

新人であるルーシィは兎も角、ナツやグレイが知らないことに動揺するエルザだったが、すぐにその理由が思い付き、そういえばそういう奴だったなと納得した、そしてその様子を見ていた面々もその様子に当てはまる人物を見つけ出していた。


「・・・なるほどな、ミスって言うほどの事じゃねェだろ。逆にお前がアイツの魔法を知ってる事の方が驚きだ」

「魔法が知られてなくて、エルザと交流がある奴つったら一人しかいねえな」

「オイラも分かったよ!!」

「え?え?」

「いま思い出すと、私が知っているのも、共にS級試験を受けたからだな。それ以外であいつの魔法は見たことが無いかもしれん」

エルザの言葉に約一名を除いて皆が理解の意を示したようだった。
それからはどうやって見つけただの、帰ったら勝負を挑もうだの、自分とどちらが速いかだのと、ここにはいない仲間の話で大いに盛り上がっていたのだが、そこでつまらないのが新人であるがゆえに唯一皆の言う“アイツ”の存在を把握出来ていないルーシィである。
彼女はしばし誰かが説明してくれるのを待っていたが、耐え切れず未だ盛り上がる仲間達の間に割り込んだ。

「ちょっと!私にも分かるように話してよ!その“アイツ”って人はどんな人なの?」

すると、少し頬を膨らませているルーシィを見て「すまない置いてけぼりにしてしまったか」と心底反省している声色でエルザが答えた。

「カナデは私と同じS級魔導士だ。さらにギルド最年少魔導士でもある」

「えっとぉ・・・カナデって事は女の人よね?最年少でS級魔導士って相当凄いんじゃ・・・」

「あい、それに多分戦闘も相当強いよ、エルザと戦ったらどっちが勝つかな?」

「それは私にも分からんが、面白そうだ。今度手合わせをして貰おうとしよう」

「あ、ズリィぞエルザ!!まずオレが勝負するんだ!!」

「ちょ、ちょっと待って!エルザってフェアリーテイル最強の女魔導士なんじゃないの!?」

それはアイゼンヴアルドとの戦いの時に聞いた話であり、妖精女王の異名を持つ程の魔導士であるエルザが戦ってどちらが勝つか分からないというのはルーシィにはにわかに信じ難いことだった。

「事実上の最強さ、戦ったことがない二人に優劣をつけるには実績が一番。そしてそれが優れていたのがエルザだったってだけだ」

「実績も知られていないだけでかなりのものだ。こなした依頼の数こそ私のが上だが、カナデは殆ど無傷で帰ってくるからな。あれでなぜ評価されないのか・・・」

この時の彼らには知る由が無いがカナデの評価が低いのは目撃者がいないからであったりする。
たとえ幾ら強大な魔獣を倒しても“どうやって”が不明のままでは、どのように凄いのかが伝わらず、また下手に問題を起こさないため、結局派手に活躍する他のフェアリーテイルの魔導士の名ばかりが有名になっているのだ。(主にナツ)

「へぇぇぇ・・・凄いのねえカナデって人」

「あい、それがカナデです」

「それで、私がどうやって来たかを聞いてどうするつもりだったのだ?」

「おっとそうだった。いや、お前が船で来たならどれだけ乗れるか聞いとこうと思ってよ、全員乗れるんだったら帰りを気にしなくていいだろ?」

「ああ、そういうことか。何、私は来る時に帰るまで待っててくれと・・・たの・・んだ・・」

ナツの言葉ににこやかに返していたエルザだったが、途中からどんどん声が小さく、顔が青ざめていき、「あ、あ、あああああああああ!!!」・・・ついには突然大声を出して、勢いよく立ち上がり、恐ろしい速度で海岸の方向へ走り去ってしまった。

そしてその突然の行動についていけず、村に取り残された三人と一匹は半ば呆然にその後ろ姿を見つることしか出来ないのだった。





そして遅れて海岸に辿り着いた彼らが、海岸に浮かぶ巨大な海賊船と、白く長い髪の小柄な少女に必死に頭を下げ続けている鎧を着た緋色の髪の女性を見ることになるのは、実に30分が経過した後のことであった。




-7-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




FAIRY TAIL 31 講談社キャラクターズA ([特装版コミック])
新品 \1980
中古 \790
(参考価格:\1980)