小説『天使ちゃんはS級魔導士のようです』
作者:コタツマン()

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まえがき

頑張って長くしてみました。
しかし話は進まない。そしていろいろ雑。何度も書き直しました。


・・・を…の表記にしてみました。


第七話


「お嬢ーーー!!そろそろつきますぜーーー!!」


見張り台からドデカい声で私を呼ぶのはこの海賊船のクルー、モヤックさん(35歳独身、職業:海賊兼魔法使い)だ。

頭にバンダナを巻き、顎にある蓄えに蓄えられた無精髭が良く似合うナイスおっさんである。

顔は中々に整っているのだが、今まで女性との出会いに恵まれてないらしく、彼女いない歴=年齢の方程式が成り立っている。

海賊なんてやってたらそりゃそうだよね〜


「そうね。皆にそろそろ降りる準備をしておくよう伝えてくるわ」

「「「お嬢の手を煩わせるまでもありません!!俺に任せてくだせぇ!!」」」

…私が皆のいる客室に行こうとすると、甲板にいたクルーのほとんどが我先にと船内に走っていってしまった。

優しいなー、紳士だなー、……何で海賊やってんだろ


「グハッ………何しやがるテメェ!!」

「ウルセェ!!お嬢のお役にたつのは俺だ!!テメェは引っ込んでな!!」

「ヤロォ…抜け駆けはさせねぇぞオラァ!!」

…いや、なにやってんのあんたら。

一人分の幅しかない扉に大勢で向かうもんだから、つっかえて誰も通れてない。

にもかかわらず誰も譲ろうとしないもんだから自分が通るために他のやつを攻撃しだして大乱闘。

この暴力性、流石海賊と賞賛を送ってやりたいのだがーーーー

「……私の役に立つって何」

思わず頭を抱える。

海賊の性格も何もこの状況を作り出した大元が私にあるというのだ。

何がどうなったら荒れくれものの集まりの海賊が見た目いたいけな少女にお嬢!!なんて呼んで忠誠らしきものを誓うことになるのやら。

「それだけうちのもんはお嬢に恩義を感じてるってことさ」


いつの間にか見張り台から降りてきたモヤックさんが私の呟きに答えてくれた。

「………ここまでされるようなことをした覚えはないわ」

何となくあなたは行かないの?と聞いたら「あいつらにできることはあいつらに任せるさ、俺は俺にできることでお嬢に借りを返してぇ」と返ってきた。

なにこのダンディなおっさん。

マジでダンディなおっさんでマダオの完成じゃないか。…やめよう、とても情けないものに聞こえてきた。

「謙遜はいけねぇよ、死にかけてた俺達を助けてくれたのはお嬢なんだからよ、所謂命の恩人ってやつだ」

「死にかけたのは自業自得ね」

「ははっ!!違ぇねぇ!」

何を隠そうこの海賊どもは海のド真ん中で食糧を切らして死にかけてたのだ。

しかも、クルーの喧嘩でコンパスを粉砕したらしく、どっちに行けば港があるかも分からない状態だった。

後は運と感だよりで船を動かしていたらしい

それを聞いた私は街まで飛んで食糧を買ってきてあげたのだけれど

「食糧も調達せずに海に出るなんて自殺行為でしょう?」

「その通りだ。だが、お嬢が救ってくれた」


したり顔でこっちを見てくるモヤック。俺今いいこと言ったってか。

だからってお嬢はないでしょお嬢は。

船に乗った時なんて一斉に「お嬢!!出港ですか!?」とかいって頭を下げてきた時は私はどこの極道の娘かと。

皆強面なんだから余計にそう見える。

おかげでルーシィには怖がられるし、ハッピーに「お嬢!!!ナマやって(勝手にS級行って)すんませんでしたァ!!!」何て言われてしまった。

しかし、誤解を解く過程でルーシィとはかなり仲良くなったから良かったのかな?

あ、やっぱ駄目だムカつく。


「ひでぶっ!」


腹を押さえてうずくまり、「な、何で…」とか呟くモヤックが出来上がった時だった。


「「「ぎゃあああああ!!!!」」」


船内から大量の船員が飛んできたのだ。

その後ろからは珍しく肩で息をしているエルザが。

こいつらさっき客室にいったやつらだよね?

私は戦いを挑めと頼んだ覚えは無いんですけど。

「……どうしたの?」

「ハァ……ハァ………すまん、いきなり大勢で部屋に入ってきたから、思わず切ってしまった」


あ〜、こんな血走った目で入ってきたらそりゃあね。

こんな目で大勢の男が特攻してきた時の反応は叫び声をあげて逃げるか、物理的に鎮圧するかであろう。

一般的な女性の反応は前者のハズだがどうやらエルザは後者を選んだようだった。私も後者だが。

とりあえず、もう視認出来るほどに近づいたハルジオンを指差す。

「そろそろ到着だから、支度をするよう伝えてもらうつもりだったんだけど…」

伝える前に吹っ飛んでるよねコレ

「む、そうだったのか。それは悪い事をしたな」

「エルザは荷物あるの?」

何も持ってなかった気がするのだが?

「ああ、村の人達からお土産をもらっている。中々に多いからな。後で降ろすを手伝って貰えないか?」

「構わないわ。他の皆は?」

「あいつらは着の身着のままだ。……そういえば、お前の魔法についてあいつらに話してしまったが大丈夫だったか?」

「魔法って…【翼】のこと?別に隠してるわけじゃないから構わないわ」

見せたことある魔法っぽいのってそれくらいだ。念とかまず見えんです。

情報は出来るだけ秘匿した方がいいかと思って、言いふらさなかっただけで、聞かれたら答えるつもりだったんだけど、誰も聞いてこなかったからみんな知らないだけなんだよな〜」

「それは隠してるのとそう変わらんだろう」

「…………読心能力?」

「声にでていたぞ……さて、到着するのなら皆に伝えてこよう」

エルザは何でもないようにそう言うとゆったりとした足取りで客室へと向かっていった。

が、甲板の中ほどあたりで何かを思い出したように立ち止まり、こちらを向いた。

…なんか危ない笑みだ


「そうだった…帰ったら手合わせをしてくれないか?ナツもお前と戦いたがっていた、私もお前の実力をこの目で見たい」

「……ナツもあなたも大概バトルマニアね」

「……佇まいを見れば分かるさ。お前は強い。何よりこうして対峙していて、魔力を全く感じない。S級にもなった魔導士の魔力を完璧に消すのは並大抵のことでは無いと思うが?」


思わず肩を竦める。なんとも恐ろしい洞察力である。

魔力を感じないと言うのは私が『纒 』を常に使っているからだけどね。

身体から放出される魔力を全て身体に纏っているのに感じろと言うほうが無理な話だ。

「佇まいで見分けるというのも至難の技でしょう?」

「私など、まだ未熟者さ」

あなたが未熟者なら他の人はどうなるのやら

「それで、受けてもらえるか?」


手を組んで考える

本当は私もいつかはエルザと戦おうつもりだった。しかしそれは体格的な差がなくなってから、具体的にいえば2.3年後に挑もうと思ってたんだけど。

予定より幾分か早いがそれを除けば願ってもない提案だ。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の最強の女魔導士。最強を目指すなら越えなければいけない相手。

…………よし

少し不安げな表情になってきたエルザを真っ直ぐと見据える。

どうやら私の言わんとすることを理解したようだ。口元が綻んだ。


「ーーーーその勝負受けるわ。私も全力をだす」

「フフッこれはいよいよ帰った後が楽しみになってきたな。私も負けるつもりは毛頭ない。こちらも全力で相手をしよう」

ニッ

見つめあって二人で笑い合う。

うん、やっぱエルザは美人だ。

笑うとそれが良く分かると言うもの。目が好戦的じゃなきゃもっといいんだけど。

いや、あっちから見たら私も同じような目をしてるんだろうな。

胸の内から湧き上がる高揚感を抑えられない。

私は実力が近い人と戦う機会は少ないからいい経験を積めそうだ。

自分の実力を測るのにもちょうどいい。

少しの間見つめあった後、「皆を呼んでこよう」と船内に向かうエルザを見送る。


これじゃナツやエルザの事を言えないな。

そんなことを考えながらーー



***



「ええええええええ!!?」

船からエルザの荷物を運んでいる途中。甲高い叫び声をあげられた。

みればルーシィが口をパクパクさせている。

「どうしたの?」

「ああ、お前は知らねェのか。こいつは馬鹿力なんだよ」

おいグレイくんその言い方はどうなんだい?女の子に向かっていうセリフじゃないよ。元男だけど。


「エルザの荷物を片手で持ち上げるってどんな半端ないわね…」

ヤメテ!!そんな目で私を見ないで!!

とりあえずこれ以上何か言われる前に荷物を降ろす。

オーバードライブはパッシブなのだ力があるのは仕方ない。

ルーシィよりもさらに頭一つ分ほど小さい私が大の大人3人分ほどはある物を楽々と持ち上げているのは確かにかなり奇妙な光景だろう。

ふとみればグレイがルーシィに私がマスターとの喧嘩で木を片手で引き抜いてぶん投げただのマスターと言い争って民家投げただのいろいろ吹き込んでいる。

さすがにルーシィもまっさか〜な感じだ。

………あんだよ、全部本当だよ


「帰ってきたぞーーー!!!」

「きたぞーーーー!!」


船からおりた途端に元気になったナツとハッピーが叫んでいる。

なんだかんだでS級クエストを完遂したのだ。

その喜びもひとしおだろう。

………単に船から降りたからではないはずだ。…多分。

船から降り、今はギルドに向かっているところだ。私はエルザの後ろ、その横にナツ達が並んでいる。

通り慣れた大通りだが、今日は皆がいるせいか、始めて通る道のように感じる。



「ルーシィが今回もらった鍵ってどんなのなんだ?

「人馬宮のサジタリウス!!」

「人馬だと!!」

「いやぁ…こんなのじゃない?」


そんな私の心境などわかるハズもなく、隣ではルーシィの鍵についての話で盛り上がっている。

と言うかイメージ大会のようなものだ。

Q:なぜ他人のイメージが見えるのか。

A:そういうものなんです。

とりあえず、未だワイワイと盛り上がる彼らに私が今回タクシーみたいなことをやらされた一番の原因を教えてやろう。


「のんきね。S級を達成して嬉しいのはわかるけどもう少し自分の状況を思い出したら?」

「お嬢!!」

「それはもういいから」

「わぁ!?」

嬉々として余計なことを思い出させるハッピーにハンドソニックを突きつける。

ここで止めずに延々といじられるのはごめんである。

余程驚いたのか、すぐさまハッピーはナツの後ろに隠れてしまった。

私もただの脅し目的だったのですぐにハンドソニックを消す。

「剣が生えた!?」

「エルザと同じ魔法か!?」

「いや、それにしては速すぎる。見たこともねェ魔法だ」

「……随分と簡単に見したな。秘匿したほうがいいんのではなかったのか?」

「一つ二つ知られたところで痛くも痒くもないわ。それに仲間に隠すものでも無いでしょう」


気まぐれで出したハンドソニックのせいで私の話題になってしまった。

ギルドの決まりを破ったことを思い出させようとしたんだけど…


「私の武器、ハンドソニックよ。魔力で刃を構成してて、他にも幾つかバージョンがある……まあ、言いたかったのはこれじゃないんだけど」

「分かっているさ。カナデが言いたいのはこいつらの処分のことだろう?」

その通りだ。私はただ待ってただけで何も知らないが黙ってS級に行ったならそれなりの処分が下るハズ。

エルザの言葉にギョッとした表情を見せる三人と一匹。

「処分!?」

「ちょっと待って!!それってもうお咎めなしになったんじゃ!?」

え?そうなの?

思わずエルザに目線で尋ねるが、エルザはゆっくりと首を横にふった。

「お前達の行動を認めたのはあくまで私の現場判断だ。罰は罰として受けてもらわねばならん」

「「いぃ!?」

「そんな〜」

あらら、やっぱりそうですか。

結果無事に帰ってきたんだからお咎めなしでもいいんじゃないかなーなんて考えながらまだ少し遠いギルドを見上げた。

うん、『いつも通り』だ。

………ん?

何か…違うような?

「カナデちゃ〜〜ん!どうにかして〜」

私が不思議な感覚を覚えていると横からルーシィが泣きついてきた。


んー私はみてないからなんとも言えないのだけど、多分マスターなら許してくれるんじゃない?駄目なら少しは弁護してあげるよ!とそんなような内容のことを言うとだいぶ安心したようだ。

ほっと胸をなでおろしている。

それにしてもなんだろう…ルーシィはこう…いじめたくなる魅力がある。


「でも、アレは確定ね」

「いやだぁぁぁぁ!!!アレだけはもう二度とやりたくねぇぇぇ!!!」

「アレってなに!!?」

途端にオロオロしだすルーシィ。

おおう、楽しい。

「フフッ腕がなるな」

「いーーーやーーーだーーー!!」

「アレってなんなのよーーー!」

ズルズルと引き摺られて行くナツと叫ぶルーシィ。

そんなやり取りをみながら私の中の違和感はいつの間にか忘れられていたのだった。



あとがき

実は漫画数冊が消失していまして。ここからアニメみてやってます。そして、船のくだりはほぼ意味ないっていうね。

ただエルザとカナデが戦う約束をするというのを書きたかったのです。

なのにまさかのオリキャラ、モヤックさん。

なぜ書いたのか自分でもわかりません。もしかしたらまた登場するかも?無いな。

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