小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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次の日は完全に寝坊していたので
親の買ってくれた学ランを着て、セーラー服は袋にきれいに畳んで袋に入れて家を出た
途中ひょっとまだいるかもしれないと思い恭子さんの家によって
チャイムをならすと案の定、寝ぼけ眼の恭子さんが玄関からパジャマのまま顔を出した

「んん?私今日学校やすむよ?」

思いっきりサボるつもりみたい

「あ、いや、この服ありがとう。面白かった」

といって袋を恭子さんにさしだすと、手をヒラヒラさせながら

「いいよいいよ、それ私のお古だし、もう着ないからあげるよ」

と大あくびをしながら言ってくれた

「いや、でもほら僕んち親厳しいし朝これで家でるわけにいかないし…」
「あ、そうか」
「恭子さんちで着替えらしてくれない?」
「ん??うちはオカンが夜遅いから、朝バタバタしたくないんだよねー」

恭子さんちはお父さんがいなくてお母さんが夜働いていた

「そうかぁ。。。」
「あ、ヒロユキんちは?あそこ親、なんにもいわないんじゃない?放課後いってみる?」
「あ、うんうん」

そんな約束をして学校に向かった
授業はとっくに始まっていて、体育の授業をしているクラスがいて、その様子をしばらく見ていた
あんまり楽しそうじゃなかった
自分があの体操服を着てグラウンドを動き回るのを想像するだけでうんざりした
そのうちに体育教師がこっちを見て、目が合ってしまったのでペコっと頭を下げて仕方なく校舎に入った

教室の後ろの戸をカラカラとあけて入っていくと
また授業をしていた教師がこっちをにらんだので、ペコっと頭を下げた
学校ってこんなにペコペコ頭を下げなくちゃいけなかったっけ?

座席に座ると、僕の机には彫刻刀か何かで「オカマ死ネ」とご丁寧に掘り込んであった
ひまなやつら
クラスメートの数人がこっちを向いてニヤニヤしていた

休み時間そいつらの一人が来て言った
「昨日は呼び出し無視しただろ?今日はつきあわすからな」
自分ではドスを効かせたつもりの声変わりもしてないかわいい声だった

どっかの極道でもないだろうにメンツにこだわってどうするんだ、と思いながらも
尻ポケットのカッターをズボンの上から確認して、苦笑交じりでうなずいた

とはいえ、恭子さんとの約束もあったので放課後、また今日もシカトして逃げるつもり満々だった
だけど授業が終わると同時に数人に囲まれて両腕をつかまれてしまった

(おわった…逃げれないなぁこれは…)
そうおもいながらもずるずると校舎裏の自転車置き場横の特設リングに連れていかれた

でも、なんか喧嘩するような雰囲気じゃない…あれ?…
一番奥に座ってたガタイのいいのが出てきて、僕の正面に立って言った
「俺、雄一。一応一年のリーダーになったみたい」
「みたい?」
「うん。自然と。」
面白そうなやつ
「で、ここまで連れてきて何するつもり?僕をリンチ、とか?」
「まさか。お前何にも悪いことしてないじゃん」

見回すと小学校の頃の悪がき、サノと目が合いました
「お前もこのグループ入ってたんだ?」
サノに向かって一応聞いてみた
サノは目で合図した

「ということは勧誘?」
「そうそう。俺達とツルまないか?」

僕は正面に立つ雄一の耳元に近づき小声で言った
「僕、2年のヒロユキさんとか3年の恭子さん達とツルんでるんだよね、ごめん」

雄一はしばらく考えてから、口を開いた
「じゃあお前、この中のだれかとタイマンはれ。勝っても負けてももう手は出さない。皆いいな?」
一同をみまわしながらそう言った
こいつVシネとかビーバップかなんかの見すぎだろ…
というか変な派閥争いに僕を巻き込まないでくれ

僕は一番体格はいいけど愚鈍そうなやつを指さした
誰とやっても勝てそうもないし
負けても、一番大きな奴とやって負けたなら
それなりの大義名分は立って、二度と声はかけてこないだろうと思ったからだ

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