小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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弘樹さんと里見さん夫婦とうちの両親の話し合いは
意外とすんなりと話し合いは解決したようだった

それも夏休み前のゴールデンウィークからヒロユキさんちに厄介になることになった

普段から留守がちだった僕のこと
早朝から深夜まで両親が不在なこと
また世間体を異常なまでに気にする父親が「児童虐待」という
問題を突かれて、黙り込んでしまったことが決め手になったみたいだった

家を出る日、僕は一通りの着替えと、事前にヒロユキさんと一緒に出向いてもらってきた、剣道場の入会状に保護者印を押してもらった書類
そして生活費の5万円をもらって家をでた
迎えには弘樹さんが車で来てくれてた

「もう○○さんちの子供になったらどうだ?お前がいなくなって清々する」

父親が僕を送り出す時に言った言葉だ
母親は父親の言いなり、僕のほうを見ていても目には映っていないようだった
弘樹さんはそれを聞いても無視して、僕のカバンを持ってくれると肩をポンポンと叩いて振り向かずにエレベーターに向かって歩き出した

僕も振り向くことも「行ってきます」も言わず弘樹さんの後を追った


ヒロユキさんの家に着くと、一部屋をあてがわれた

裕子ちゃんの部屋だった
裕子ちゃんが亡くなってそのままにしてあったという部屋は
小学生の部屋らしくぬいぐるみやファンシーグッズがかざられて
勉強机にも小学校の教科書が並べられたままだった


なんだかすごく居心地が悪くて、汚しちゃいけないような気がして
ヒロユキさんと里美さんに頼み込んで
ヒロユキさんと同じ部屋に住ませてもらうことにした

里美さんが便所やお風呂の位置とかを教えてくれた
台所にもつれていってくれて冷蔵庫に入ってるものは、何でも飲み食いしていいよ、と言ってくれた

それより僕はヒロユキさんと、また枕を並べて一緒の部屋で寝られることが嬉しかった

不思議な気持ち

同級生の女の子を見ても、可愛いなあ、綺麗だなあと思う事はあっても付き合いたいとかは思ったことなかったし、むしろ小学校から女装し、中学校でもセーラー服登校をした僕には「ああなりたい」という願望の方が強かった

ヒロユキさんには絶対の安心感があった
その隣で寝られるのは、自分が本当の女の子になったような感じでドキドキした

その日の晩、簡単な歓迎会を里見さんがしてくれた
あれも、これも、とボクの隣に来て小皿に料理を取ってくれ、僕の目を見ては
「おいしい?いっぱい食べてね」
と、もう満腹になった僕に、まだ料理を進めてきてくれた

その様子を弘樹さんとヒロユキさんがニコニコしながら見ていた


歓迎会が終わって、弘樹さんとヒロユキさんは自室に帰って行ったので
僕は里見さんと洗い物や片づけをした
キッチンに並んで2人で洗い物をしてると
「私たち、本当の親子みたいね。来てくれてよかった、ヒカルちゃん」
里見さんは鼻歌を歌いながらお尻を僕のお尻にぶつけてきた
おかしくなって僕も力加減をしながら里見さんのお尻に自分のお尻をぶつけた
二人で大笑いになった

洗い物も終わって、おやすみなさいを言うと僕はヒロユキの部屋に戻った

やった。布団が二つくっ付けてしいてある

「ちっと狭いけど、我慢しろよ?それから布団は自分の分は自分でしけよ」
ヒロユキさんは寝転がってバイクの本を読んでいた
「うんうん。ヒロユキさんもバイク好きなんだ?」
「おー。オヤジの影響かな。今、ジャンク屋でバイク見つけて下の工場で直してる」
「え?ヒロユキさん用の?」
「そうにきまってんだろ」
といいながら本から視線をずらして僕を見るとニヤッと笑った

僕はヒロユキさんの寝そべってる布団の横にドサっとたおれると
「どれ?どのバイク?この本に載ってるの?」
一瞬ヒロユキさんはビクッと体を強張らせましたが、すぐに本を僕にも見えるように真ん中に持ってきてくれた

その夜は4月だというのにまだ肌寒く、途中で一回トイレに起きた僕は
部屋に戻るとスースー寝息を立てているヒロユキさんの布団にこっそり忍び込んだ

(暖かい???♪)
心の中で幸せいっぱいの温もりに包まれながらウトウトしながら2度寝の態勢に入ったとき
グイっと首の下に大きな腕が入ってきました、腕枕でした

寝ぼけてんのかな?と思ってそーっとヒロユキさんを見たけど、思いっきり寝てるみたいだった
腕枕なんてされたの初めてだったので、頭をどの角度に持って行っていいのかわからなかったけど、なんとか安定したポジションを発見してそのまんま寝入ってしまった

そうしてヒロユキさんの家での初日は過ぎて行ったのでした

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