小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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中3に進級するとき、2人の同級生が学校を辞めました
原因は詰め込み教育と徹底管理下でのストレス
詰め込み教育といっても、中2で中3の勉強、中3で高1の勉強といった繰り上げ教育で、高3の1年間は受験勉強のみにあてるといった方針だっただけなんですが…。
僕のほうと言えば、図書室にある本を借りては読み、返してはまた借りて読み、国語力をあげようと必死だったけど、なかなか成績には反映されませんでした
数学は中3で微分積分を難なく解ける程度にはなっていました
おかげで普通科の高1の中間テストを受けて、普通科、全寮制あわせても2位でした

なにしろ特待生から落ちると、学校にはいられなかったので必死に勉強しました
またあの虚無の部屋に戻るのだけは勘弁でした
中3の教室には3人だけが机を並べました
中1、中2、高1、高2には新しい新入生や、編入生も入ってきて
各30人クラスが出来上がっていたので、僕たち中3と高3のクラスは異様な光景だったに違いありません

そしてついに2学期を前に今度は残りの2人も辞めてしまいました
一人は家の経済状態の悪化で辞めざるをえなかったようで
もう一人は同じ学校法人の運営する別の学校に転校してしまったのです

その転校の話は僕にも先生から打診があったのですが今の環境で充分だったので、お断りしていました
運営方針を切り替えて、少数精鋭ではなく全寮制も廃止して通学組も入学させて、門戸を開くということだったのですが、要は利に走ったということだろうと思います

僕には何の関係もありませんでした

ただ机一つを挟んで教師と1対1で授業を受けるのはなんとも不思議だったし、教師の熱のなさも伝わってきました。何しろ生徒一人ですから。
田舎の分校だってもっと生徒は居ると思います。やりがいのなさを感じて当然だろうと思いました
体育の授業は、テニスか卓球だけになってしまいました
まあ、もともと5人クラスのときからその2つしかなかったわけだけど
(バスケの3on3だってできない人数だ)

授業形態も有名高校(ラ・サールとか灘ね)の入試問題を解いてそれを採点して、わからなかった部分を講義していくといった形になりました
けど、わからないものはどうやったってわかりませんでした
だって試験問題だよ?広い裾野から拾い上げたたった一個の設問に答えるなんて、そのすそ野を知らなきゃ無理だし、たとえその問題に関してだけわかったとしても、それは理解とは違うよね。お受験用のインスタントな知識にすぎないんじゃないかな?

僕の成績順は 数学>物理>社会>英語>>>>国語

といった感じだったと思います
英検3級、簿記3級、剣道初級
これが僕が中学3年間で得た資格でそのすべてでした

そしてエスカレーターにのって高等部に進学したのです

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