小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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その時を境に僕に家庭での居場所はなくなってしまい
学校で荒れることで自分の居場所を作ることにしかできなくなっていた

僕の周りには自然にそういう仲間が集まってきた
小学校5年で友達と二人で、初めて理科準備室で盗んできたシンナーを吸った
(ラリったけど、こわくなって1回でやめたけどね)

小学校6年の夏休み、校区の公立中学校の恭子さんという先輩と仲良くなって
原付のパクりかたや、直結のしかた、車のウインドーから
針金ハンガーを加工して突っ込んでロックを外す方法を教えてもらった


夏休み中パクった原付で公園内を走りまくったり、堂々と学校のプールに乗り付けて
夜中の水遊びを楽しんだ

それが近所の人に見られて学校で呼び出しをくらったけど
もうその頃じゃ、教師に何を言われても何も感じなくなって居た


その頃からだったと思うのだけど
僕は母の衣装を身に着け、見よう見まねの薄化粧をして
悪い仲間の溜まり場に行くようになった

今も疑問におもうんだけど女子の恰好をした僕を誰も僕を笑うことはなかった
それどころか「名前」を付けようということになった

今日子、とか聖子、とかその頃のアイドルの名前を次々と口にする友達の中
黙っていた中学の女子の先輩、恭子さんが「ひかる」とポツっと言った

男か女かぱっとは分からなくて、あんまりそこらへんに転がってた名前じゃなかったので(当時)
僕を含めた皆がそれにしよう、ということになった

恭子さんは不思議な人で、中学生にもなって、いつも一人で小学生の僕たちのたまり場にいて、何かの文庫本をずっと読んでいたかと思うと、ふと思いついたかのように、スっと立ち上がると僕たちに「悪い事」を教えてくれた


僕が小学校5年の時、新築の分譲マンションを買って
インテリアを贅沢に飾った僕の家はTVのセットみたいな
全くの虚無な空間だった

無理なローン返済に共働きを始めた両親は夜遅くまで帰ってこなかった
夕食は食卓に置かれた500円玉だった

僕はそのお金をせっせとため込んでは、ゲーセンにいったりお菓子を買うお金にしていた

夜中、両親が罵り合う声で目が覚めたことも何度もあったけど
布団にもぐりこんで小さなラジオから流れるオールナイトニッポンを
聴きながら、眠れない日々をすごした

小学校にはいかないか、いっても保健室にこもっているかのどっちかだった

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