小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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思った以上に僕はクールでした
部屋に戻って荷物をまとめました
教科書やノートはもう必要ないと思いまとめてゴミ箱に捨てたので、意外と少ない荷物でした

ノックする音が聞こえました
ドアを開けると担任教師でした

「お前、意外とやるなぁ」

布団も片付けたマットレスだけのベッドに腰掛けて彼は言いました

「もっと金額吹っかけてもよかったんですが、それだと恐喝になっちゃうでしょ」

目一杯の笑顔を作って答えました

「そうだよ、お前。高1でできる芸当じゃないぞ。上出来だ。」
「明日の午後にでも荷物を送って高知に帰ります。それまでに色んな手続きお願いします。」
「わかった。できるだけのフォローはするよ。中学の卒業証明もとっておく。」

担任教師との付き合いも3か月に満たないものだったので、淡々としたものでした

ふとおもいつき1Fのロビーにある公衆電話で家に電話しました
でたのは母親でした
母はある程度の学校の運営方針転換の事を、事前にPTAの会合で知っていたので話は簡単でした。

「僕やけど。とうとう排除された。退学や。明日の夜には高知帰るよ」

それだけ言うと何か言いかけてる受話器をガチャ切りしました

ロビーの自販機でコーヒーを買って、くずかごから空き缶を一つとって部屋に戻り、WCからセブンスターをビニールにくるんだパッケージごと取ってくると、今度は遠慮なく空き缶を灰皿にして吸いました
会議室の電気は消えていたので、話はまとまったのだと思いました。

全くなんて人生だろうと思いました
また、1年生の1学期か。

その夜は大人たちとの交渉の精神的興奮で眠れませんでしたが
朝方気が付くと床に寝そべって小一時間くらいは寝ていたようでした

まだすこし肌寒かったけどこれで丸亀の空気も終わりだと思って
窓を開け放ってまたタバコを吸いました
対面の寮の中学生がこっちを見て手を振っていたので、軽く手をあげ応えました

冴え冴えとした空気の中、スウェットから私服のスーツに着替えました。入学時にあつらえたものがまだ着れました
成長止まってんのか僕、と思いつつブレザーの制服もゴミ箱に捨てました

いらなくなった私物を、同級生が欲しがったものはあげて、部屋に残ったものを片付けると小さめの段ボール1箱と布団袋、ボストンバックだけが残りました

別に部屋を掃除していく気にもならなかったので、ぼんやりとベッドに寝転んでまた煙草を吸っていると、9時きっかりに寮内アナウンスで事務長から呼び出されました

わざとダルそうにのんびりと向かい事務長室にノックもせず入りました
いかにも厳格といった難しい顔を作っていた事務長でしたが、僕は頬のほくろから伸びた毛が気になって仕方ありませんでした

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