小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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高校中退した子を持つ親の気分ってどんなだろう
駅前の喫茶店にみんなで入りました

僕はもう別になにがどうなろうとかまいませんでした

10万ちょい入った封筒を親に渡しました
「振りこんでくれた学費の残り」

サラサラと嘘は平気で僕の口からこぼれました
「いいから、あんたが持っておきなさい」

封筒を母親が押し返してきました

ここまでは思わく通り


「これからどうするつもりなんだ?」
父親が重苦しい雰囲気で切り出しました

「ところで、なんで弘樹さんとこがきてくれてんの?」
僕は話題を変えました

「心配してくれて来てくれたに決まってるだろうが」
父親がつぶやくように言いました

僕が香川に行ってからヒロユキが一週間に一回は我が家に来て
両親の寂しさを紛らわす話し相手になっていたそうです


「俺は工業高校に通ってる。親がどうしても行けって」

ヒロユキが弘樹さんのほうに目をやりながら言いました

「今は高校ぐらい出ておかないとしんどいよ?」
里美さんが心配そうに僕を見つめてきました

「お前が高校行きたいなら、定員割れしてる高校探すぞ?」
父親は全く怒っていませんでした
激怒する父との対決を覚悟していただけにちょっと気が抜けました

「うん、まあ昨日退学になって今日すぐには決めらんないよ…」
僕はアイスコーヒーの氷をストローでつつきながらそう答えました

一同がそれはそうだという風にうなずきました
それよりも、またあのマンションでの生活が始まると思うとうんざりだったのです

空虚な空間での家族ごっこ
いい子ちゃんを演じるのにはもう疲れていました

結局その夜は、僕も疲れているだろうということでそこで解散になりました


本当に疲れ切って、何もする気がしませんでした
自宅に帰ると着替えてお風呂にも入らず寝ました
次の日も、そのまた次の日も部屋にこもって昏々と眠り続けました
食事もめんどくさくて摂りませんでした
何がどうなってもいいと思ったのです

そんな状態が2週間ほど続きました
何曜日なのか、何時なのか、全く興味が無くなっていたのです
途中何回かヒロユキがきてくれていたらしいのですが
無視して寝続けました

人間ってこんなに眠れるんだっていうぐらい眠り続けたのです

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