小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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ある日ホームグランドになってた一角にあるスーパーで
いつものごとく僕達は友達数人と万引きをしていた

罪悪感があったのは最初の1,2回
(スリルと興奮はなんだって回数を重ねるごとに冷めていくよね)

ポケットをめいめいがすきな駄菓子でパンパンに膨らませて店を出た途端
後ろから来た誰かに肩をガっとつかまれた

友達はキョトンとその光景をみていた
僕の肩にかかった手を振りほどくように一気に振り返ると
ガタイのいいおじさんがニヤニヤしてこっちを見ていた

一番小柄で女の子の恰好をしている僕なら
抵抗しないだろうと思ってたんだろうと思う

「逃げて!」
叫ぶと同時に僕はおじちゃんに飛び掛かかった
(喧嘩の仕方とか知らなかったしね)

あっけにとられていた友達たちは
3回目の僕の「逃げて!」という叫び声を聞いてやっと事情を把握したようで、猛ダッシュで逃げ出した

追いかけようとするおじちゃんを僕は必死にしがみついて邪魔をした

おじさんは友達たちが見えなくなってしまうと、悪態をつきながら僕の両手をがっしりと捕まえて
スーパー裏の潰れた段ボールや何かが山積みになってる横の、事務所のようなところに連れ込んだ

名前とかどこ小学校なの?とかニタニタと半笑いで聞いてきた
そのおじちゃんの口臭が吐き気を催しそうだったのを覚えてる

「で、お嬢ちゃんは何年生なの?」

そういいながらいきなり抵抗するまもなくおじちゃんの手は
ワンピースの胸元からスルスルっと僕の胸に忍び込んでた

ばれた。女装してるのがばれた。そう思った。

目の前が真っ暗になった。
万引きとかは全然平気だったけど、女装がばれたことが顔から火が出るくらい恥ずかしかった

ギュッとつぶった目を薄く開けると
小鼻を膨らませて明らかに興奮している中年男の
脂ぎった汚い顔がアップで僕の視界に飛び込んでた

馬鹿なのか無知なのか興奮のあまりなのか、僕が男の子とは全く気が付いてないようで安心したけど

この格好のまま親とか呼ばれたらと思うと気が遠くなる気がした

-4-
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