小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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僕のタトゥーを掘り終わるともう2時間以上経っていた
後で知ったのだけど、「筋彫り」という画のアウトラインを掘るときに急いで針を動かすと、痛みがきついらしく、もっちゃんさんは気を遣ってゆっくりとその作業をしてくれたらしく、思ったより痛くはなかった

もっちゃんは締め切っていた窓を開けてエアコンを切ると
セーラムライトを取り出して換気扇の所で吸った

「これでヒカルちゃんもGの一員だね」

こっちを向いて屈託のない笑顔をみせる

ええ、そうですね。半強制ですけどね。心の中でつぶやいた

「しかし、次期リーダーの女がこんな可愛らしい男の子とはね」

その時だけもっちゃんの目が刺すようにヒロユキを見たような気がした
ヒロユキが肩をすくめる

「守れんのかよ?お前に、この子が。まだクソガキだろうが」
はいはい、僕はクソガキですよ。だって16歳だもん。

「大丈夫です。ヒカルはそんなにヤワじゃありません」
おいおいおいおいおい。僕はやわっちいよ。。。
それより次期リーダーなのね、ヒロユキって。

「うちは少数精鋭っていえば恰好がいいけど、実の所人手不足でさ。うちのエリアのおいしい餌にありつこうと周りのチームが虎視眈々と狙ってるわけさー。このエリアってどうしてもガキは少ないしさー。ま、その分本職さんがいるからバランスはとれてるんだけどね。ヒカルちゃんも頑張ってね」


なにを?


「あ、あとアンパンとシャブはうち、ご法度だから。食うのも売(バイ)もだめよー」
「はい」
「んじゃあボク、夜があるから寝る。またねー」

と手をヒラヒラっとふるとソファーに横になって寝てしまった
ヒロユキを見てもっちゃんを交互に見た。あきれた。本当に寝てる。
僕とヒロユキは目配せしてそうっともっちゃんの家を出た

「ねえねえ、ヒロユキ」
「うん?」
「チームってなにするわけ?」

それが一番疑問だった

「そうだな、チームによって色々だけど、俺らはポン婆のガードとか、ピンクビラ貼ったり、あとは出逢い系のTELカード売りかな」
「ふうん…じゃあ、ヤクザの下っ端ってこと?」
「いや、またルートがそれとは違うなぁ」

でも、そう答えるヒロユキは暗い目をしていた
そういう目をしている時のヒロユキは隠し事をしているか、嘘を吐いているかだった

「ま、でもヒロユキと一緒やったらなんでもいいよ、いひひ」

そういって右手をヒロユキの左腕に手をまわした
僕は右肩に彫ってもらったのでヒロユキの左肩のタトゥー同士がキスをした

もう夏休みも終わりが近づいて
僕のN高での学校生活も迫っていた

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