小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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新学期が始まり、僕は真新しい学生ズボンと開襟シャツを着て高校に通い始めた
県外の私立からの2学期からの編入ということで一応の注目を浴びた
学校での授業はすでに受けた授業内容で、ひどく退屈だった
ほとんど窓から見えるグラウンドの景色を見るか、机に突っ伏して寝てるかのどっちかだった

勉強への熱意は、もうとっくに薄れていた
何度か注意を受け、意地悪な教師に問題を解くよう言われたが
即答えるものだから段々と教師も僕の存在を無視するようになっていた

浮いた存在、だったと思う
クラスメートに喋りかけることもなくしゃべりかけられることもなかった

何よりもチームの活動が刺激的で、面白くて
同級生がみんなガキに見えた
ただ、卒業さえすればよかったのでできるだけ目立たないように心がけた

そうして僕は高校2年になった
学校生活でここに書くようなことはほとんどなかったといってもいいと思う

退屈な毎日

朝、出席をとって、授業後のホームルームまではひどく虚無な時間だった
成績もダブらない程度の3?4を取るように心がけていた
部活にも、学校行事(体育祭とか文化祭、修学旅行)にも参加しなかった

高3になって、初めて同じチームのジンという子と同じクラスになった
同じ学校にいるのを知って驚いた
ジンのほうはとっくに知っていて、ヒロユキから1年の頃から僕のボディガードを頼まれていたと聞いてさらに驚いた
夜のジンはすばしっこくて車内荒らしや、車や単車のパーツをあっという間にパクるほど器用な子だった


読んでくれている皆さんには申し訳がないけれど
高校での生活はほとんど記憶になくて
これぐらいしか書くことがない
それだけ夜の生活のほうが充実していたということかもしれない

高3になって初めて出席日数不足で日本史の単位を落としてしまい
補講をうけて、皆より2週間遅れで卒業証書をもらった

両親と弘樹さんに卒業証書を見せに行った
父親は涙を隠そうともせず喜んでくれた
その晩母親に命じて日本酒を買ってこさすと
二人して吐いて潰れるまで飲んだ

「今でも弘幸君のこと好きなんだよな?」
父親は照れたようにモゴモゴと問いかけてきた

「うん。一緒に暮らそうと思ってる。」
僕も照れが伝染してうつむきながらモゴモゴと言った

「そうか…いろいろ大変だろうけど頑張るんだぞ」
そう言ってまたコップに注いだ酒を飲んだ

次の日は二人してゲロゲロの二日酔い
母は呆れながらも介抱してくれた

弘樹さんも里美さんもすごく喜んでくれた
ヒロユキは一年早く卒業して
今は引退したもっちゃんさんの部屋で暮らしていた

「背、伸びたね」
「うん、今170くらい」
「そうかー」
里見さんが我が子を見つめるように優しく見つめてくれた

「弘幸と暮らすんでしょ?」
「うん、そのつもりです」
「あの子の事よろしく頼むね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
なんだか嫁入りの挨拶のようでおかしな具合だった

「もうおっきくなったし、レディース物の服中々ないねぇ」
里美さんは少し寂しそう

「今度L?LLの服一緒に見に行こうね」
いつまでも僕は亡くなった裕子ちゃんの代り

「うん、連れていってください」
笑顔で答えた

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