小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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いつだってガキは自分を利用しようとする大人が嫌いだ
大人も聞き分けのないガキは嫌いだ
僕たちはその狭間にいた
僕は久保田さんが嫌いだった
ヒロユキを大人の世界にに連れて行こうとする
正直言って僕はチームはどうでもよかった
チームの皆は好きだったけど
ヒロユキとさえ居られればそれでよかった

でも世の中そんなに甘くなかった

久保田さんと話に出かけたヒロユキはそのあと2日帰ってこなかった
僕たちのアパートメントは私服の少年課のおまわりさんや、パトカーの巡回が重点的に始まっていた
ジンとマサとコウジが僕のガードについていた
僕たちは極力外出を避けた
チームGはガキのストリートギャングと認識されていたようだけど、抗争を開始したチームSはモロに暴力団の準構成員達と警察は認識していた
いくらGが武闘派で名を売っているといっても本職相手ではかないようがない
一人つぶしても次はすぐ補充される

二日して帰ってきたヒロユキは見たこともない高価なスーツを着ていた

タイトに体にフィットしたダークなアルマーニだった

「戦争は回避された。スクランブルを解く。」
そう僕たちに伝えると革張りのもっちゃんおさがりのソファーにどっかり腰を下ろした
ジン・マサ・コウジが電話に飛びついて連絡網にその件を伝える

その代償がヒロユキが本職になるってことなの?
弘樹さんとショップ開くんじゃなかったの?
僕とずっと一緒にいてくれるんじゃなかったの?

それ以上そこに居れなくなって、換気扇をつけると外の景色を見ながら煙草を吸った

「次の頭はマサ、おまえがやれ」
「…はい。」
「ヒカルのこと頼んだぞ」
「…はい」

それからヒロユキは、チームGのバックには神戸、長田に本拠地を構える広域指定暴力団の枝の組がついており、
チームSのバックは高知に昔から拠点を置く老舗の暴力団なので、完全に封じ込めることができる事
ただし、動いてくれるにはヒロユキが組入りをしなくてはならなかったことなどを伝えた

僕は煙草を吸いながら気づかれないように、泣いた

それから皆は挨拶を残して、部屋を去って行った
皆、考えることもあっただろうし、2人きりにしてくれたんだろうとも思った

2人きりになって気まずい雰囲気がながれた

「どうよ、ヒカル。この服。アルマーニなんて初めて着たぞ」
「どっかの銀行員みたい」
思いっきり不機嫌な声を出した

「…それから言わなきゃいけないことがある…」
「ヤクザになったことやったら一目見たらわかるわっ!」
クッションを投げつけた

僕は泣いていたと思う
「スウェット着て電話番して、ペコペコ頭下げて、チンピラに成り下がるつもりっ?」
「ヒロユキのお父さんとお母さん悲しむよっ!一緒にショップ出すっていってたじゃんっ!!」
泣きじゃくりながら大声でわめいた

「ちがう…ヒカルそうじゃないって」
「なによ!」
「今は本家のほうもインテリばっかりになって、力があって腕の立つやつが減ってるらしくて
久保田さんが本家に2年行く間、そのボディーガードしてくるだけ。それでおわり。」
「おわりって?」
「それで極道辞めれる」
「はぁ?そんな話まじで信じてんの?ありえん、信じられんっ!!バッカじゃない!」
うつむいたヒロユキ

「ごめん、ヒカル。チームの皆、誰も傷つけたくなかったし、何よりヒカルをターゲットにされるのが一番怖かった。守るにはこれしか思い浮かばんかった。。。」
「あんたヒロユキ、本当に馬鹿やろ?皆そんな軽い気持ちでGのメンバーで居るわけないやん!私だってそんなん全然怖くない!」
「2年もまた離れなきゃだめなんだよ?それ嘘やったら、ずっと会えないじゃん」
もう鼻水と涙で顔中グダグダになっていた

「…もう決まったことだ。」

一気に身体の力が抜けた。こうなったヒロユキは誰にも止められない
優しすぎるストリートギャングの頭

ため息ひとつ。

「…で、いつからいくの?」
「今週末から。」
「じゃあ急いで準備しなくちゃね…」
「うん」
「親父とお袋にも言ってくる。ヒカルは来なくていい」
「うん。…私も顔向けできん。」
「次の頭はマサや。チームの一員としてヒカルはここでずっと暮らして待っててくれ、絶対2年したら戻ってくる」
「…うん」

ヒロユキと同棲できたのはたった半年にも満たなかった

また夏休み前。学年でいうと1年の1学期みたいなもの

ろくなことがない

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