小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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僕がもぞもぞしていると

「お、気が付いたみたいだ」
と男の声がしました

そして声の主らしき男が目隠しを外しはじめました
ガムテープでぐるぐる巻きにいていたらしく、外すのに時間がかかりました

真っ暗闇から突然明るさの中に放り出された視界は慣れるのにしばらく時間がかかりました
焦点が合い始めると、ようやく周りを観察し始めることができました
部屋は段ボールで窓をかこいガムテープで目張りしてありました
まぶしさの原因は蛍光灯でした
首を振って見回すと男たちは4人
全員骸骨の笑っているお面をしていました

必死になって状況を判断しようと、自由になる頭だけを持ち上げて視界の中を探りました
僕は全身裸にされていました
ペニスにはゴムチューブが刺さっていました
お尻の下には大人用の紙おむつがしいてありました
ベッド自体も半透明のビニールシートで覆ってありました

相手はどう考えても、拉致と暴力のプロのようでした

腕も足もベッドの4隅に大の字を描くようにガッチリと固定されていました

(おわったな…)

部屋の蒸し暑さのせいで、あふれてくる汗がビニールシートに溜まってひどく不快でした

「んーんー!!んーー!」
と必死に唸っていると男の一人が口のガムテープを剥いでくれました

まだ口の中が変です
ペッと吐き出すとピンポン玉よりも小さなゴムボールが出てきました
こういう時に虚勢を張ったり、いらぬことを言わないほうがいいと直感が告げていました

「お願いだから、エアコンだけつけて」
それだけいうと黙りました
リーダー格らしいそれまで動かなかった男が、リモコンを取ってエアコンを入れました
また僕の口にはゴムボールが押し込まれガムテープで封をされました

「ヒカルさんは、シャブ打った事ある?」
何かカチャカチャと金属の触れ合うような音をさせながら男が聞きました
首を横に振りました
男は手慣れた様子で準備を整えると、僕の目の前に小さなプラスティック製の注射器をよく見えるように持ってきました

「これからヒカルさんを痛めつけるんだけど、これ打ってればいくらかましだから」
ひどく冷静なその声が怖かったのと、注射針が折れてしまわないようにじっとしていました
男は僕の左腕にゴムチューブを巻いて血管を浮き出さすと、手慣れた様子で注射針をすっと差し込みました
ゴムチューブをほどくと、血とシャブがよく混ざるように男はポンピングして、シリンジを最後まで押し込んで中の液体を注入しました

2秒か3秒、とにかくあっという間に目の前に光が飛びました
目の焦点があわなくなり、ぐんにゃりとした厚みのない世界が視界いっぱいに広がりました

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