小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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年が明け、マサの裁判が行われました

車椅子から僕は松葉杖の生活に移っていました
永野の計らいで事件は「傷害事件」として扱われることになったそうです

何度か審判を受け、最終的な判決を言い渡すだけの裁判でしたが、傍聴しにいきました
情状酌量、未成年ということを踏まえてもやっぱり執行猶予はつきませんでした
懲役2年という判決にマサは頭を下げて退廷していきました
上告はせず、そのまま刑に服するということでした

「ヒカルちゃん」
呼び止められた声に振り向くと、ちゃんとスーツをきた永野刑事でした

「永野さん、そんな服ももってるんだ?」
からかったつもりなのにちょっと赤くなって、まあな、と言いました

「あれで精いっぱいだった。あれ以上の減刑は無理だなあ」
「うん、ありがとうございます」
「いや、特になにもしちゃいないよ。」
「それでも、ありがとうございました」
そういって僕は頭を下げた

「いやいや、頭あげて。俺はねヒカルちゃんのファンなんだよね」
「は?」
「いや、別に変な意味じゃなくて」
顔を真っ赤に染めて頭をぼりぼり掻いている刑事が急に愛しく思えました

「これからはどうするの?」
「そうですね、リハビリと『普通の』生活をしたいって思います」
「そうか…普通ってなんなんだろうな。…おれにはさっぱり分かんないよ。まあじゃあ元気でな。困ったらいつでも電話して来いよ」
そういうと親指と小指で電話のサインをして急ぎ足で去っていきました

永野さん=まともな大人、頭にメモをしました。

ザックリ切られた髪の毛もショートボブに伸び、母親や里美さんが買ってくれたレディース物を着るようになり
それぞれの心の中に傷と痛みを残しながらも、僕たちは少なくとも前向きに歩きだしたんだ

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