小説『聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!  第2章:武士道プラン異聞録編』
作者:みおん/あるあじふ()

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第2章『武士道プラン異聞録編』



サブエピソード21「swallow’s encount」


模擬戦が終わってからしばらく時間が経ったある夕暮れ時。


ワン子は夕暮れの砂浜で一人座り込みながら、海へと沈む太陽を眺めていた。


後から聞いた話だが、模擬戦の結果はカーチャの勝利に終わったらしい。ワン子の放った最大の技、建御雷神の電撃を吸収し、カウンターの電撃砲で迎え撃ったのだが、カーチャが手加減してわざと外してくれたようで、幸いにも大きな怪我はしなくて済んだ。


気力を使い果たして気絶した所為か、細かい事は覚えていない。ただ分かっている事は、自分が負けたという事実だけである。


「………ぐすっ」


悔しい。悔しくて悔しくて、涙が止まらない。ワン子は涙を腕で擦りながら、悔しさを誤魔化すように夕日をただ眺め続けていた。


すると、


「ここにいたか」


聞き覚えのある声が、ワン子の背後から聞こえる。振り向いた先にはサーシャが立っていた。ワン子は慌てて残った涙を拭う。


「さ、サーシャ……?」


「大和達が心配している。そろそろ戻るぞ」


そう言って、サーシャは手を差し伸べた。迎えに来てくれたのだろう、そんなサーシャの気持ちが、ワン子は嬉しかった。


「あ……うん。ありが、と」


サーシャの手を取り、立ち上がるワン子。そして直ぐにサーシャはワン子に背を向けて歩き出した。ワン子も無言で黙ってその後を追う。


「――――ワン子」


突然サーシャが立ち止まる。サーシャは背を向けたままワン子に話しかけた。ワン子は何だろうと首を傾げる。


「お前の戦いは、俺の心を震わせた。だから―――――」


そしてゆっくりと振り返り、サーシャはワン子に向かって笑う。


「今度は俺とも戦ってくれ。もちろん、手加減なしでな」


それは、サーシャがワン子を戦士として認めてくれた瞬間だった。ワン子は途端に嬉しくなり、嬉し涙で一杯になるも、サーシャに向かって微笑むのだった。


「……うん!あたし、負けないわよ!」


「その意気だ」


サーシャとワン子が大和達の待つ旅館へと戻っていく。ワン子は思う。今はまだ未熟だとしても、認めてくれる人たちがいる。それが支えになるから、歩いていけるんだ、と。


「―――――ヒューヒュー。熱いねぇ、お二人さん」


突然、女性の声がサーシャとワン子を呼び止めた。サーシャは気配を探すが……その声の主は間もなく二人の前に姿を表す。


「やっほ〜」


軽快な態度で現れた、私服の少女が一人。腰にはベルト。そして黒いポーチがいくつもぶら下がっている。一体どこから現れたのだろう……気配を感じ取れなかった。


「貴様、何者だ」


一見普通の少女に見えるが、どこか怪しい……サーシャは警戒しながら少女を睨む。


「私は松永燕。よろしくっ!サーシャ君。後、君は……」


燕と名乗った少女は、サーシャの後ろにいたワン子に声をかける。


「あ、えっと……川神一子です」


「一子ちゃんか。うん、よろしくね!さて、早速なんだけど……」


話をどんどん自分のペースに巻き込む燕。何故サーシャの名前を知っているのか、一体何の目的で現れたのか、突っ込む隙もない。


そして次の燕の一言に、サーシャ達は耳を疑った。


「いきなりで悪いんだけどさ、サーシャ君。手合わせに付き合ってくれないかな?」


いきなり会って早々、しかも初対面で勝負をふっかけてきたのだった。ますます理解できない。


ただ、敵意は感じられないが……しかしサーシャには受ける理由がない。さらに聖乳ソーマも補給していない上、ビッグ・マムの特訓で体力を消耗している。戦うには不十分であった。


「断る。相手を探しているのなら他を当たれ……いくぞ、ワン子」


「あ、うん……」


申し出をあっさりと断り、サーシャはワン子を連れて早々に燕の前から立ち去っていく。すると燕は困ったな〜と声をあげながら、


「かわいい女の子の前で敵前逃亡かぁ。かっこ悪いぞ〜、サーシャ君。男としてそれはどうかと思うよん?それとも――――」


ニヤッと悪戯に笑い、そっと言葉を口にする。


「“致命者サーシャ”って呼ばれてるのは、名前だけかな?」


燕が口走ったその刹那、燕の喉元にサーシャの錬成した鉄の剣の切っ先が突きつけられていた。


「おおっ!?」


燕は驚いた……様子はない。むしろ、ふざけているようにしか見えない。


「松永燕……どこまで知ってる?」


「ふふ……教えて欲しい?手合わせしてくれたら、教えてあげてもいいけど?」


やたらと手合わせをせがむ燕。しなければならない理由があるのだろうか。サーシャの中でますます疑念が浮かぶ。


(まさか、こいつ……)


もしかしたら、燕も今回の一件について何か知っているのかもしれない。そして燕の次の一言で、サーシャは確信を得る事になる。


「知りたいんでしょ?“謎のエレメンタルサーキット”の事」


燕の言葉から出た、“元素回路”という単語。何か知っている……今は少しでも情報が欲しい。サーシャは燕との手合わせを承諾した。


「ワン子……力を借りるぞ」


「え?」


サーシャはワン子を抱き寄せ、燕から離れて距離を取る。そしてワン子の体操服のシャツをたくし上げようと手をかけた。


「ぎゃーーーーーーーーーーー!?何するのよーーー!」


「お前の聖乳を貰う」


冷静かつ眈々と言うサーシャ。


聖乳……つまり乳を吸うと言う事だ。ワン子は当然嫌に決まっているので抵抗を試みるが、力を使い果たしているので、そんな体力は残っていなかった。


そのまま服をたくし上げられ、露わになったワン子の胸に、サーシャはそっと口付けをする。


「ん―――――あ!?」


ワン子の胸に、サーシャの口が触れる。そして、自分の中にある聖乳が吸い出されていくのがはっきりと分かる。


(う……なんだろ……変な感じ……エッチな事なのに、優しい……)


これがクェイサー―――サーシャの優しさなのだろうか。ワン子は聖乳を吸われていく中、へなへなと地面に膝をついて放心状態になる。


「クェイサー……なかなかワイルドだねぇ」


燕が楽しそうに笑っている。元素回路を知っている以上、ここで逃すわけにはいかない。


(これが、お前の聖乳か――――)


ワン子の聖乳が、身体中に流れている。暖かく、そして活力が溢れ出すような力。それが今、サーシャの力となり糧となる。


「震えよ―――――畏れと共に跪け!」


大鎌を錬成したサーシャは、目の前の敵……燕と対峙した。


「全て話してもらうぞ、松永燕!!」

-4-
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