小説『ハイスクールD×D  〜三大怪物〜 』
作者:地蔵菩薩()

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第六話「開戦」

<Baal&Monster>

『あら、珍しいわね。あなたから連絡するのは』
「……別に」
『機嫌が悪いわね、どうしたの?』
「……別に」
『まぁいいわ。どうしたの?』
「そっちの現状は?」
『10分後、開戦予定よ』
「10分後、か」
『ええ』
「……わかった、俺も準備する」
『了解』

★   ★

『冥界戦争。禍の団・作戦内容』

今から10分後、旧魔王派は冥界全土と戦争を開始。
旧魔王派は、四大魔王とその血族を奇襲する。
……四大魔王に領土を奪われた彼らの憎悪は激しい。
彼らは四大魔王に、冥界に報復するつもりなのだろう。
これに対し、禍の団の上層部は不干渉を貫く。

『復讐するなら勝手にしろ、止めはしない』

そういう事なのだろうか?
…………まぁいい。
旧魔王派の大体の作戦内容はこうだ。
旧魔王派が奇襲する時間帯は、新人悪魔2名の試合開戦時間と同時刻。
リアス・グレモリーとディオドラ・アスタロト。
2人とも、新人悪魔を代表する冥界の期待の星だ。

「……」

……実は。
新人悪魔のディオドラ・アスタロトと旧魔王派は、秘密裏に同盟を結んでいる。
旧魔王派もディオドラも悪魔。
何かしらの共通点があったのだろう。
悪魔とは元来、欲に正直な生き物。
それが良くも悪くも、時代を動かす。
……今回は、どうなるかな?

「……」

ともかく、今回の戦争はディオドラの援助が入る。
それにより旧魔王派は、スムーズな奇襲が可能になる訳だ。
…………だが、冥界は旧魔王派の襲撃をおぼろげながらも察知。
迎撃態勢を整えている。
三勢力の和平により、悪魔、天使、堕天使は協力体制にある。
冥界の危機に、天使と堕天使は最高戦力を投入した。
天界は天使の頂点、ミカエルが筆頭の熾天使集団。
堕天使は組織の総督、アザゼルと最古参の幹部集団。
四大魔王も、自身の眷属たちと上級〜最上級悪魔に集合命令を下した。
この時点で旧魔王派に勝ち目は無い。
だがさらに、新人悪魔の試合を観戦しにきた各勢力の神々が参戦する。
北欧のオーディン、アジアの帝釈天、ギリシャのゼウス。
各神話の最高神たちだ。
その他にも、数多くの神仏が参戦する。
……正直、世界全土を敵に回しているようなものだ。
旧魔王派の面々、確実に消し飛ぶぞ。

「……」

あと、旧魔王派もディオドラも、リアス・グレモリーの眷属を見下しすぎだ。
リアス・グレモリー。四大魔王『サーゼクス・ルシファー』の実妹。
類稀なる才能と器量を兼ね備えた才女。
眷属悪魔たちも非常に優秀だ。
最強の龍『二天龍・赤龍帝』を宿す神滅具。
『赤龍帝の籠手』を宿す青年悪魔、兵藤一誠。
堕天使の大幹部『雷光のバラキエル』の血を引く才女、姫島朱乃。
異常中の異常『聖魔剣』を創造可能な騎士、木場祐斗。
などなど……
例をあげたらキリがない。
まだまだ未熟な点もあるが、数年後には確実に頭角をあらわす。
今の実力も、上級悪魔のそれと大差ないだろう。
……だが、旧魔王派の戦力は大きい。
数の暴力とはよく言ったものだ。
構成員一人一人の実力が低くとも、物量がそれを押し流す。
大人も、10人の中学生には勝てないだろ?
まぁ、四大魔王や熾天使、各勢力の最高神なら話は別だが。
まだまだ新人のグレモリー眷属に、旧魔王派の刺客全員の相手はきびしい。
数々の修羅場をくぐり抜けたグレモリー眷属も、今回ばかりは危ないな。
眷属悪魔の2、3人死ぬかもしれない。

「……」

んー正直、殺されるのは惜しいな。
それほどの面々だ。

「……」

……まぁ、助ける義理も無い。
無事に生き残ることを祈るよ。

「……」

それより。
俺たち、禍の団の全勢力の作戦をおさらいしよう。
旧魔王派の冥界襲撃から五分後、禍の団の全勢力は冥界に突撃する。
禍の団の本部から転移魔法府を使用し転移、全勢力が奇襲する算段だ。
……冥界側は、旧魔王派が禍の団の最大戦力だと勘違いしている。
何せ、禍の団の全勢力は未だ殆ど公開されていないからな。
…………あまい。
お前たちが見ているのは、氷山のほんの一角だ。
旧魔王派は、禍の団の最弱派閥だぞ?
お前たちは今から、禍の団の本当の怖ろしさを味わう事になる。

「……」

作戦内容は単純明快。
最高戦力を保有する派閥、英雄派は正面突撃。
神滅具持ちを中心に、戦場で暴れ回る。
白龍皇率いる特殊部隊は、側面からの幹部奇襲。
個人の実力が高い彼らには、各勢力の実力者を確実に潰してもらう。
金銀は無限の龍神の護衛、もしくは迎撃。
彼女たちの実力は神仏クラス。
各勢力の神々が予想外の行動をした時、彼女たちが素早く対処する。
……いや、彼女たち以外に神々を対処可能な存在は、禍の団にも数えるほどしかいない。
神々とは、存在自体が規格外。
魔王や熾天使とは、実力云々の問題じゃない。
強さの次元が違う。

「……」

まぁ、そんな神々すらも歯牙にかけない世界最強の神龍様が、俺たちの首領なんだが。
無限の体現者、無敵の神龍。
オーフィスは、赤龍神帝の捜索。
彼女?は戦う意思が乏しい、今回は殆ど見学だ。
……彼女の敵意は、赤龍神帝にのみむけられる。

「……」

禍の団副首領、ロタン・ベルフォルマーは神々の目を引く囮。
最古の神殺し、天災の権化。
彼の存在は、神々の恐怖そのものだ。
彼を怖れた神々が、その存在を隠蔽するほどに。
……世間上、彼は太古の昔に行方不明になったとされている。
そんな彼が、テロ組織に加担したとなれば各勢力の神々は動揺するだろう。
それが狙いだ。

「……」

これは、極めて重要な任務だ。
成功すれば戦況が一気にこちらに傾く。
失敗すれば、どうなるかわからない。
最悪、こちらが負ける。
……彼は今回の戦争のキープレイヤーだな。

「……」

彼の部下の指示も、本人に一任しよう。
……それが、一番いい。

「……」

……ハァ。
作戦内容の整理完了。
後は偵察に行った『バカ』に連絡するだけだ。

★   ★

午後、冥界。

<ロタンSIDE>

「……ふぅ」

俺は携帯を懐にしまう。
……『あっち』の準備は完了したらしい。
俺も準備しなければ。

「……」

俺は今、冥界の首都『リリス』の高層ビルの屋上に胡座を描いている。
……冥界の首都は、人口密度が高い。
周囲に悪魔、悪魔、悪魔。
……正直、鬱陶しい。

「…………ハァ」

自然と嘆息すると、隣のドラゴン人形を見る。
鮮やかな、紅。

「……」

剣闘大会、戦乙女。
隣の人形を見るたびに、
俺の頭に単語がよぎる。

「……」

剣闘大会。

あれは楽勝だった。
冥界最大の剣闘大会と聞いたが
あの程度の殺気に失神するようじゃ、冥界の剣闘士は脆弱だな。
……大昔の剣闘大会はあんなもんじゃなかった。
悪魔も、天使も、魔獣も、人間も。
古の剣闘士は全員、常識離れの実力者だった。
それにくらべ、今の剣闘士は……
ハァ、実戦経験が足りないのか?
昔は戦争ばっかりだったから。

「……」

ん〜、関係ないか。
単純に弱いだけかも。

「…………ハァ」

まぁ正直、冥界の剣闘会の事情なんかどうでもいい。
観客と剣闘士が楽しめれば、いんじゃない。

「……」

それよりも。
俺の頭に鮮明に残る人がいる。

「……ロスヴァイセ」

銀髪の戦乙女。
優しく、素直な女性だった。

「……ッ」

重なる。
容姿も、性格も、全然似てないのに……
あいつの面影と、重なるんだ。

「…………チッ」

ピロロロロッ

「……?」

不意に、懐の携帯が鳴る。
……誰からだ?

「……もしもし」
『ロタン』
「曹操か」
『ああ』

……ハァ。

『こんの阿呆め、戦争前だぞ』
「すまんすまん」
『怒るぞ? 俺は怒るぞ?』

曹操は声音は低い。
……ふぅ。

「すまん、もうしない」
『……ふむ、よろしい』
「サンキュー」
『金銀はご立腹だがな』
「そ、そうか」

まずいね、そりゃ。

『……ま、今は説教無しだ』
「マジか♪」
『戦争終了後、たっぷりとするがね』
「……」

はぁぁ。

『まぁいい、作戦内容を説明するぞ』
「作戦?」
『ああ、今回の戦争の詳しい作戦内容が決まった』
「……へぇ」

作戦、ね。
まかせますよ。

『今から数分後、旧魔王派が三勢力と開戦する。
俺たちはその五分後、戦争に介入。
転移魔法府を使用し、冥界に転移する。
各々の作戦内容はこうだ。
英雄派は全軍正面突撃、白龍皇の特殊部隊は側面から敵の幹部を奇襲。
金銀は無限の龍神の護衛&神々の迎撃、無限の龍神は赤龍神帝の捜索』
「……」
『ロタンは神々の視線をずらしてくれ。
なるべく派手に頼む。神々が狼狽するようなものを。
お前の部下の指示は、お前に任せた」 
「了解」
『……なら、数分後に』
「ああ、またな」

ピッ

「…………ハァ」

俺は嘆息すると、携帯を懐にしまう。
……余計な事を考えるのはやめよう。

「……」

悩みも、後悔も。
終わった後にすればいい。

『……避難警報、避難警報。
テロ組織の襲撃が確認されました。
繰り返します。テロ組織の襲撃が確認されました。
民間人は、周辺の警備員の指示に従い……』
「……はじまったか」

俺は目を細める。

「……」

俺は懐から転移魔法府を出すと、隣のドラゴン人形を転移させる。
……転移場所は、俺の家。

「……うん」

帰れるさ。
……皆一緒に。

「よっしゃ」

俺は立ち上がると、後ろにふり返る。

「…………さぁ、はじめますか」

-18-
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