小説『ハイスクールD×D  〜三大怪物〜 』
作者:地蔵菩薩()

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序章「禍の団」

禍の団。
早朝、古城。

★   ★

<???SIDE>

「……ううう」

本当に、大丈夫だろうか?
私は、小部屋の前の張り紙を見る。
『禍の団・相談所』

「……」

…………私の悩みを、聞いてくれるかもしれない。

「……」

……よし。
1回相談してみよう。

……コンコンッ

「…………失礼します」

私は、ゆっくりと扉を開ける。
そして、おそるおそる部屋の中を覗いた。

「……」

黒漆を中心とした相談室。
一目見た感想はこれだ。
相談するためだけの部屋。
それ以外のものは、一切置いていない。
そして、黒漆の壁越しに男性が1人。

「……ん?」

流れるような銀の着流し。
落ち着いた、紺色の浴衣。

「?」

褐色肌の、屈強な肉体。
野性的で、端整な顔立ち。
長い黒髪は、後ろに束ねてある。
キレの長い、蒼の瞳。
左目の眼帯、年季物の煙管(きせる)

「??」

…………綺麗だ。
身にまとう空気が、綺麗だった。

「……お〜い」
「!」
「相談があるのか?」
「……は、はい!」
「OK」

男性は笑う。

「そこの席にどうぞ」
「……し、失礼します」

私は、目の前の席に腰掛ける。
黒漆の壁越しに、男性と対面するような形だ。

「相談は、何かな?」
「……ッ」

…………。
……本当に、大丈夫だろうか?

「何でもいいぜ、誰にも言わない」
「ほ、本当ですか!?」
「当たり前だ、個人情報だろ」

男性は笑う。
…………よし。

「……あの、実は」
「実は?」
「私、禍の団を抜けたいんです」
「……」
「禍の団、旧魔王派から脱退したいんです!」
「……いいんじゃない」

…………へ?

「俺も連中は気に入らないし」
「……は、はあ」

男性は目を閉じる。

「本当に、脱退したい?」
「は、はい」
「OK」

男性は笑うと、懐に手を入れる。
そして、魔方陣が書いてある紙を私に渡した。

「それがあれば、古城の外に出られる」
「!」
「必要な身支度整えて、さっさと行きな」

男性は笑う。

「お嬢ちゃんの脱退は、俺が連中に伝えておくよ」
「……し、しかし!」
「いいから、早く行きな!」
「は、はいい!」

男性の怒声に驚き、私は相談室を出る。
…………。

「…………あ、ありがとうございました!!」

私は誠心誠意、感謝の気持ちを込めて頭を下げる。
男性は、微笑んだ。

「達者でな」
「ッ……はい!」
「カカカッ」
「……あ、あの!」
「?」
「……お名前を聞いても、よろしいでしょうか?」

私の質問に、男性は目を見開く。
そして、やわらかく微笑んだ。

「俺の名前はロタン。禍の団、相談役だ」


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