小説『 ONE PIECE 〜青天の大嵐〜 』
作者:じの字()

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“閑話休題 〜余波〜”



[偉大なる航路<グランドライン>とある島]


とある町は今や廃墟になっていた。

この町はつい最近までおいしいお菓子で有名だったのだが、とある理由によって壊滅してしまった。

理由はたった1つ。

ある海賊団が要求した“お菓子”を期日までに用意できなかったからだ。

そして、その海賊団を率いる女海賊はお菓子が揃わなかったことに怒りながらただただ用意されたお菓子を食べていた。

<ボリボリボリボリ>


「ママー」


<ボリボリボリボリ>


「・・・ママー?」


<ボリボリボリボリ>


「ママー!!」

「・・・何だい?」


彼女は自分に話しかけてきた部下を睨んだ。


「これを見てくれ」

「?今朝のニュースクーじゃないか。これが一体」


次の瞬間、彼女は生まれて初めて息を飲む、という体験をした。

新聞の紙面には一面で『海軍大きな敗北!!作戦に加わった中将は左遷か!?』というニュースが乗っていた。

海軍が海賊に負けた?それも大規模な被害を伴って?


「これは本当かい?」

「間違いないよ!!情報屋のお墨付きだ!!」


“海軍と戦うかかわるべからず”

海賊にとってそれは常識だ。

下手に倒して中将以上の海兵を連れてこられでもしたら、その場で殺されるか、インペルダウンに投獄されるかだからだ。

だから海軍とは戦わない。

その時は全力で逃げろ。

しかし、こいつらは中将と戦って勝利してしまった。


「・・・中将以上は強さは異常と言っていたが、もしかしたらそうでもないのかもしれないねえ。」


今度海軍か政府の船を狙ってみるか、と彼女はその程度しか思ってなかった。

「・・・ママがお菓子以外のことを考えるなんて初めて見た。」

「ほう、食われたいのかい?」

「え!?ちょ、まっ、ギャアアアアアアアアアア!!」


ボリボリボリボリ

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「ヘイ、まいど。」

「ありがとう。」


その女海賊はニュースクーに金額を支払い新聞を買った。

彼女はある情報が気になっていた。

彼女が滞在する町でもすっかり話題になっていた。


『海軍の艦隊が海賊に負けた』


海軍の存在はこの世界において絶対の存在だ。

一般人は海軍のおかげで海賊に襲われるかもしれない、という恐怖を頭の隅に置きながらも生活することができる。

よって、こういった情報は逆に海軍の信用にかかわる。


「“海軍と戦うべからず”・・・とはよく言ったものね。」


最近出会うたびに砲丸の流星群を飛ばしてくる海兵の顔が頭に浮かぶ。

確かモンキー・D・ガープといったか。

自分からしたらあいつのほうが危険だ。

そう思いながら新聞を見ていると、今回の実行犯という欄に目がとまる。

どれも最近活躍している超新星達。

なるほど、もしかしたら彼らならば本当にやってのけるかもしれない。


「こいつは顔がきついからパス。・・・こっちはう〜んまあまあかしら?というかこの2人、シルバース・レイリーに“辻斬り”ちゃんか。おもしろそうね、ファンになっちゃおうかしら?」


1人、フフフと笑う。新参者の海賊が出てくるたび、彼らがどのような末路を迎えるにしろ彼女は心が躍った。


「もういい加減海賊も飽きてきたし・・・あともう少ししたらバーでもやろうかしら?」


彼女はコーヒーを啜りながらそんなことを考えていた。

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西の海<ウェストブルー>

「すげえ!!」


3歳になる少年は目の前の記事に胸を躍らせていた。

あの絶対的な海軍を海賊が倒してしまった!!

これほど面白いことはない!!

そもそも、海軍は気に食わなかった。

正義をうたいながらも平然と一般人を殺すこともある。

あんな偽善集団よりも海賊のほうが何倍も勇敢だった。


「おれもかいぞくになりてぇ・・・。」


頭の中で計画を練っていく。

自分じゃこの世代には追い付かない。

しかし、次の世代はこのおれが貰う!!

そして、この紙面に載っている海賊全員に認められ、俺は海賊王になるんだ!!


「たのしみだな、キシシシシシ!!」


まだ見ぬ未来に胸が膨らんだ。


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[聖地マリージョア]


世界政府を作った王達の子孫天竜人。

しかし、その実態は権力に酔いしれた愚か者と大差はない。

さて、彼らの住む聖地マリージョアでも一際目立つ建物がある。

世界政府本部。

そして、内部には世界を動かすとある5人のための部屋があった。


「この中将達はどうする?」

「何、考えが浅はかであるとはいえ、一応海軍の戦力であることに変わりはない。」

「そうだな、南か北の海辺りにでも飛ばせばよい。」

「それがいい、では彼らの後釜だが。」

「それはすでに選んでいる。そして空きが出た少将には准将のガープとセンゴク2人に入ってもらう。」

「実質ガープを制御しきれているのはコングとセンゴクだけだ。この2人は将来海軍の戦力になってくれることは間違いないだろう。」

「今は一時的にそがれた海軍、そして世界政府の信用を取り戻すことが重要。」

「左様。各地の海兵たちに海賊は見つけ次第叩き潰せ、という命令を出そう。」

「では、海賊共の件だが・・・。」

「情報によると未だ近くの町に滞在しているという。」

「すでにコングが動いている。あともう少しで到着するそうだ。」

「1人か・・・それとも全員打ち取れば十分見せしめになるだろう。」

「そうだな、それでも十分に信用は回復するだろう。」

「私も同意だ。」

「私も。」

「ふむ、ではそういう事で。では次の話題だが・・・」


こうして世界は廻っていく

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後の歴史学者たちはこの戦いこそが真の大海賊時代の始まりであり、歴史の転換点である、と主張している。

この戦いには海賊側に“海賊王” ゴール・D・ロジャーを中心とした名だたる海賊達が戦闘に参加しており、事実後の新世界を中心にこの世界を世界政府の意思とは関係なく回していく海賊ばかりだったからだ。

しかし、こう考えるものもいる。


「この戦いで海賊が負けていたら?」


そうなれば海賊王ゴール・D・ロジャーを始め、白ひげの時代も来なかっただろう。

海軍はタカ派の勢いが増し、海賊たちは駆逐される。

もしかしたらそういう時代が来ていたかもしれない。

そう考えると、惜しいと歴史学者たちは口をそろえる。

しかし歴史は無情にも起きた現実を糧に進んでいく。

この流れはだれにも止めることはできない。

未来とは不確定要素の塊であり、何が起きるかは全く予想できない。

歴史学者たちはしめくくった。



そう。




未来とは本来予想はできても見通せないものだ。




本来は異分子である存在がいるこの世界でもそうだ。




故に、これからグンジョーに起こることも、




グンジョー達に迫る海軍の艦隊も、



未来がいったいどうなるかは、



誰にもわからない。



〜海戦編終了〜

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