第16話
数日後。
俺は佐藤を連れて修行場へ来ていた。
「よし。着いた。」
「着いたって・・・ただの行き止まりですよね?修行って言いませんでしたか?」
ま、そう見えるよね。ってかむしろ見えないと困る。
「あらくやねらろさ」
そう唱えると壁に穴が出来る。
「・・・何をしたんですか?」
「別に、これ言わないと此処に張ってある結界内に入れない様ににしただけ。良い所が無かったから作った空間。一人の時も此処を使うと良いよ。」
「はい!」
そう言いながら中に入る。中はただ広い空間が広がっている。
「さて、んじゃま、戦闘における技術と、心構えを教えっから。」
「お願いします!」
六時間後。
「はい、終了〜。生きてる〜?」
「・・・・何とか。」
お、八回目の気絶から丁度覚醒したか。
「生きてるだけでも上出来上出来。」
たった八回しか気絶してないしね。
「殺す気ですか!」
「本物の殺気は受けて初めて耐性がつくんだよね。それに厳しいって言ったし。」
「・・・あぅ・・」
「さらに言うなら、強くなる為の最短ルートは実戦だからね。」
「・・・・はい・・・」
へぇ〜、納得出来たんだ。優秀優秀。
「あっ、因みにこれ週二位でやるからそのつもりで〜。」
「・・・はい。」
「プログラムの方も欠かさずに〜。」
その日、彼女・・・佐藤舞は本気でこう思った。
ーーー私、生きていけるのかな?
◆
佐藤の修行開始から暫く経って。
「へ〜、凄いね。格闘の基本を二ヶ月で修得するなんて。」
「・・・早く強くならなきゃ殺されるからですよ。」
その言葉にあえて驚きの表情をする。
「意外に物騒な時代だな・・・誰に?」
「貴方にですよ!」
見事に予想通りの反応。
「まぁ冗談は此処までにして、次は魔法の訓練に行きま〜す。」
「あっ、はい。お願いします。」
「んじゃ先ずは精霊を見る訓練から。」
「精霊?」
「あ、こっちだと魔力素とか言ったっけ?」
「魔力素って、見えるんですか?」
「すぐには見えないけど・・・ま、イメージとしては眼を瞑って、金色の粒が空中に浮かんでるのを想像して。」
「はい。」
「一日一時間づつやれば一ヶ月以内には見えると思うよ。」
たぶんだけど。
「後、管理局にこの魔法の事は話さない事ね。」
「どうしてですか?」
「非人道的な物も生み出せるから。」
「えっ?」
「例えば「全結界」。これも元はある魔方陣を頭の中に入れる事で、強制的に知覚範囲を広げる魔法なんだよ。」
「・・・はい・・・」
「んで、副作用として目は見えないし耳も聞こえなくなる。さらに大人には出来ない物でやればやられた人が死ぬし、子供にやっても九割は死ぬ。そんな奴なんだよ。」
「・・・どうして管理局に教えないんですか?」
「組織は皆同じ考えなんて持ってないんだよ。一人一人全然違う。「正義の為」とか言ってそう言う実験をしないやつがいないなんて、俺は思わない。」
「・・・分かりました。」
「んじゃ、精霊が見えたら本格的に訓練やっから、そのつもりで。」
そう言い俺は帰って行った。