第5話
数日後。
「西条君。翠屋って喫茶店に行かない?」
「・・・行く理由が分からん。」
「ほら・・・この前のお礼って事で。」
絶対今考えたな。こりゃ。
「いや、じゃあ行かないっt「ちなみに拒否権は無いの。」はぁ!それって強制じゃね・・・分かったから広辞苑を放せ!」
そんな感じで俺は半強制的に付いていく事になった。
そして到着。
「いらっしゃいませ、ってなのはか。その隣の子は?」
「初めまして。西条 悠です。」
「ふむ西条君ね。家のなのはとどういう関係だい?」
怖いから。殺気を出すな。殺気を。
「ただのクラスメイトです。」
「そうか。まぁゆっくりしていってくれ。」
しばらくすると大きな殺気が近づいて来るのを感じる。
突然目の前に店員が一人現れ、
「少し道場へ来て貰う。良いな?」
と言われて連れ去られる。
・・・なんで最近人に絡まれる事多いんだろ?
不良、銀髪、高町、店員。
・・・俺、ただ静かに昼寝したいだけなのになぁ。
誰かぁ〜!とりあえずこの暴走店員を止めて下さい!
答えも聞かずに連れ去ろうとしてるんですけど!
ほら!店員さん達も合掌しない!
・・・俺、これからどうなるんだろ?
「それで?お前は何者だ?」
「何者って、只の中学生ですけど?」
「嘘を付くな。立ち振舞い、俺の殺気を受けても飄々としている事、何をとってもお前は訓練されている。」
「・・・まぁ間違ってないけど、何の用ですか?」
「なのはに手を出させる訳にはいかない。」
「俺、手を出す気は無いんだけど?」
「問答無用!」
店員は、そう言って斬りかかってくる。
「はぁ、何で俺の周りは話を聞かない奴が多いんだろ?」
そう言いながら俺は、近くに有った木刀を取る。
「うわっと!・・・つーかこの人滅茶苦茶強いしさ、あ〜面倒くせぇ。」
そう言いながら相手の剣を避け、弾き、受け流す。
速いし、威力は高いし、こりゃリミッターを外さないとヤバイかも。
「なかなかやるな!だがこれで終わりだ!「神速」!」
そう言った途端、動きが加速する。
「は?・・・うぇ!やば!」
とっさに頭を下げると、頭上を剣が通過する。
・・・どんだけだよ。あれ、ライナの記憶の中のフェリスレベルだぞ?
「なっ!」
避けられた事に驚いている間に、距離を取る。
「あ〜もうめんどい!俺、本気でやっからな!」
そう言い本気で動く。
彼方も「神速」で応戦するが、こちらの方が少し早い。
暫く打ち合った後、相手の剣を二本とも弾き飛ばし、首に木刀を添える。
その時、パチパチと拍手が鳴る。
「いや〜、まさか恭也に勝つなんてね。」
「見てたんなら止めて下さいよ。」
「まぁ良いじゃないか。僕は高町士郎。一つ聞きたいんだけど、」
彼ー士郎さんはそこで一度言葉を止め、殺気を少し出しながら、
「君は一体何者だい?」
と聞いてきた。
「何者って、どう言うこと?」
「そのままの意味だよ。」
「さっきも言いましたよ。只の中学生です。」
「そう言う事じゃない。君の動き、明らかに人の身体能力を逸脱している。あれでもまだリミッターを外していないんだろう?」
「あの短時間でそれを見抜ければ貴方も十分人外ですよ。」
「ははっ。まぁそれはおいといて、質問に答えてくれないかな?」
「まぁ、簡単に言えば、悪魔、だな。」
「悪魔?」
「んまぁ、正確に言えば、「女神」から悪魔と呼ばれた者、かな。」
「・・・話に付いていけないんだけど。」
「え〜、んじゃ、人知を越えた力を持つ化物、で理解出来る?」
「あ、あぁ。」
「んじゃ、質問は?」
「どんな力を持っているんだい?」
「どうせ話しても信じないだろうから実際に見せるよ。」
そう言って、高町のデバイスと同じ物を作り出す。
「それは?」
「あんたの娘のデバイスだよ。」
「知っていたのかい?」
「いや、知らない。けどこれが俺の、俺って言う化物の能力。世界の全ての構成を見て、見たもの全てを壊し、作り、改変する。」
そう言って作った高町のデバイスを消す。
「・・・とんでもない力だね。」
「まぁ基本は使わないし。んで?他は?」
「・・・辛く無いかい?」
「ん?まぁ化物って呼ばれるのは慣れてるとは言え少し嫌かな。だから基本は隠してるし。」
「その力を悪用する気は?」
「無い。ってかめんどくさいから嫌だ。」
「そうか・・・ありがとう。質問に答えてくれて。」
「んじゃ、俺帰って寝るわ。あ、面倒だから高町達には言わないでおいて〜。」
「あぁ、分かったよ。」
その言葉を背にして、俺は家へと帰って行った。
次の日、勝手に帰ったと言う理由で高町にO・HA・NA・SHIをされる事となる。
・・・絶対これは理不尽だ。
ー士郎sideー
ひらひらと手を振りながら去る彼の背中を僕は見つめている。
「・・・いいのか?父さん。」
「何がだ?恭也。」
「今の言葉が本当なら「まず本当だろうな」ならなおさら!」
「いや彼は間違った力の使い方はしないだろう。」
「何故分かるんだ?」
「それは・・・彼の目だよ。」
「目?」
「お前は彼の話してる姿を見てどう思った?」
「・・・ずっと笑ってるお気楽な奴だと。」
「そう。ずっと笑っていた。でも目だけは違かった。」
「どういう事だ?」
「彼の目はね、もうすでに諦めていた。本当はもう化物と呼ばれたくないのに、こんな能力があるから、呼ばれても仕方ない、と、全てを諦めた目だった。」
「・・・つまり、」
「あぁ、彼は自分で言った通り、もうすでに呼ばれるのに慣れてしまうほど化物と呼ばれてきたんだろう。」
「それで?」
「彼は自分の力がどんな影響を出すか知っている。だから自らを化物と呼び、僕等を引き離そうとした。」
「あぁ。」
「ここまで他人の事を思う人間が、力を間違った方向に使わないだろう?」
「・・・そうだな。」
・・・僕は君の味方だよ。西条君。
そう思い僕は、西条君が歩いて行った方向を見つめた。
ー士郎side終了ー