第一章/記憶再生
0「記憶再生(序)」
何もなかった、といえる日は意外と少ないもので、一日一日の新鮮さは逆に日々薄れていく。
今の時代でいう何もない日々というのは即ち平和。
今はもうあまりない。
この街でもそうそう『平和』なんて言葉は耳にしないし、日常にそんなものは存在していないと思っている。
ここ数年で爆発的に増えた犯罪。『悪』とも言えるそれらが日常を侵食していた。侵された日常は非日常にならなくてはいけないのに、それが新たな日常としてすりかわっている。
今更ながらそんなことを考えていた僕の脳裏にある光景がフラッシュバックする。
■ ■ ■ ■
あの日、何が起きたのか、そのとき幼かった自分には分からなかった。
――――今は分かる。