小説『【ボカロ小説化第三弾】からくり卍ばーすと【改稿版更新中】』
作者:迷音ユウ(華雪‡マナのつぶやきごと)

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1/刎殺事件

「おい、No.002(セカンド)。聞いてるのか?」
 自分のNo.(なまえ)を呼ばれ、レンはハッとなった。見ると、自分の上司であるカイトが睨んでいた。
「すみません、ぼうっとしてました」
「しっかりしろ、説明中だぞ」
 カイトはそう言い、再び説明を始めた。無表情な白い壁に囲まれた部屋に声が反響する。
 ここは特殊警察部隊「SR」の作戦会議室だ。最近、急速に凶暴化している犯罪者を取り締まる――――対抗する組織。レンはそんな「SR」に最年少十七歳で入った。ランクで呼ばれる組織内、レンは入隊一年で第二位(セカンド)まで上り詰めた。ある目的の為にがむしゃらに――。

「以上が今回の事件の概要だ」

 その事件は殺伐とした現代においても、なかなか異色なモノだった。部屋の前方にある電子パネルに映し出されている被害者の写真。その首から上がバッサリ斬られた死体は、死体を見慣れているレンでも目を逸らしたくなるものだった。
 切断死体ではなく、電子パネルには刎殺死体と書かれている。首を切ったのではなく首を刎ねた……微妙な違いをレンはきちんと理解していた。
 それにしても、どうやったらこんな死体ができるのだろう。一人一人ギロチンにかけでもしないとあぁもきれいには切れない。レンは色々想像してみたが適当な殺害方法を見出すことが出来なかった。

「犯人はいまだ不明。目撃者もゼロ。おそらく、見たものは全員()られてるんだろう」

 口封じ……という言葉が一瞬頭に浮かび、しかしレンはそれを否定した。口封じなんかじゃない。この犯人は単純に殺すことを愉しんでいる。

「同じ理由から凶器も不明。死体からの特定も出来ないそうだ。まぁ、刃物の類の可能性が高いが、人間の力じゃあのように首を刎ねるのは無理だろう。あるいは殺してからチェーンソーで切断したか……」
「いや、それはないでしょう。うちの鑑識が刎殺と判断したんでしょう」
 レンは間髪入れずに口を挟む。「SR」の鑑識は絶対間違えない。彼らが刎殺といえばほぼ確実に刎殺なのだ。
「そうだ。よく分からないんだ。レン……いや、すまない。No.002(セカンド)、お前はどう思う?」
「どう、といいますと?」
「そうだな、犯人はどんなやつだと思うか?」
「そうですね……」
 レンは思案する。死体は十一体。そんな大人数を一人も逃さなかった殺人鬼。人間とも思えない。死神のような人物。
「今更こんなこと言ってもしょうがないですけど、残忍な奴でしょうね。それと手馴れている」

「そうだな」
 カイトではなく、部屋の端のほうで腕を組んで黙り込んでいたNo.001(ファースト)が呟いた。
「あきらかに初犯とは思えない鮮やかな殺し方だ。しかし、このような事件は今回が初めてだ。SRのデータには当てはまる者はいない。要するに本当に鮮やかな初犯なのか、それとも今までは残ってないのか」
 No.001(ファースト)の声は暗く、しかし鋭さを含んでいる。No.001(ファースト)もレンについで若い。入ったのはレンと同じ時期だった。
 それにしても、とレンは部屋を見回した。
 自分とNo.001(ファースト)それとNo.006(シックスス)もとい紅一点のメグだけしかいない。本来、「SR」の構成メンバーは七人。今日は全員に集合がかかっている。しかし集まったのは三人だけ。これがいつものことなのだ。レンは当初カイトに何故か、と聞いたこともあったが「知らん」の一言で返された。
 メグは手前の席で堂々と寝ている。彼女はレンの昔からの友人だ。いわゆる幼馴染というやつだった。彼女は事件なんてどうでも良いと言うようにスヤスヤと寝息を立てている。
 カイトはそんなメグを怒る様子も無い。
「さて、そろそろ時間だ。ほとんど情報はない。しかし、犯人は強暴だ。武器の携帯を許可する。捜査はいつも通り独自にやってくれ」
 そういい残して、カイトは部屋を出て行った。
 ほぼ同時に、No.001(ファースト)もゆっくりと部屋を出ていった。
 レンとメグ、二人になった部屋にはメグの静かな寝息だけが聞こえていた。

-4-
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