小説『東雲晴樹の野望』
作者:MSF()

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ーーーーーワァーワァー……


腰ほどある草が生い茂る平野に無骨な鉄と鉄とがぶつかり合う音と雄叫びと断末魔がこだましていた。


「な……侍!?モノホン!?て言うか合戦場!?」


その中に明らかに場違いな、現代の兵士の様な格好をした男が間抜けな声を出していた。


突然過ぎてわからないだろう。時は少し遡り…………








今流行っているFPS系のゲームでバーチャルの世界に入って死んでも生き返ること以外現実の戦争と全く同じVRFPSゲーム、ワールドオブウォーフェアーオンラインをプレイする男がいた。


「リロード!カバー、レディ!」


『了解!DADADADADAN!エネミーダウン!』


「RPGッ!全員伏せろッ!」DOGAAAN!


ワールドオブウォーフェアーオンラインは世界中のプレイヤーが参加して500対500で戦うミリタリーゲームである。このユーザー数約2億7千万人である大規模オンラインゲームはそのユーザーの多さから"本当の戦争"などと呼ばれるように他では味わえないVRならではの迫力、緊張感、このゲームならではの分隊での戦闘、潜入工作、など戦略でも遊ぶことができる。ゲーム中ではPADを操作して武器、兵器さらには軍用食まで出せるという手の込んだ造りだ。


「HQ!こたら陸軍空挺師団第7分隊!!敵の攻撃が激し過ぎる!!分隊も壊滅壊滅状態だ!!直ちに救援を!!」


『こちらHQ、新型UAVからの情報によるとそちらの周囲は敵軍に完全に包囲されていて地上部隊はそちらに到達できない。制空権も敵の物になっているためブラックホークを回収に送ることもできない。現状維持だ。敵を殲滅せよ。over』


「……了解敵を殲滅する。over……クソッ!」


周りは敵をだらけで完全に孤立しどうやら見捨てられたようだ。


『まずい!!11時の方向から敵のT-90、3両接近中!!応戦しろ!!』DADADADADAN!


『クソッ!誰かジャベリンかプァンツァーファウスト?持ってきてねぇのか!?』PAPAPAPAPAPAPAN!


『もうみんな使っちまったんだよ!』TATAN!TATATATATAN!


「仕方ない、全員スモークを焚け!そのうちに後方の敵を潰して撤退するぞ!!」


DOGAAAN!DOGAAAN!
『うわぁっ!?奴等サーマル使ってやがる!!これじゃm「DOGAAAN!」グハッ!?』


『新手のハインドDだ!矢野が殺られた!クソッ!敵のマーブ(戦術核兵器)接近中!!着弾五秒前!』


hyuuu………GOOOOOO!!
「ぐぁっ!………また死んだよ…リスボーン何回目だよ…」


そしてリスボーンした場所は………



ーーーーーワァーワァー……


「な……侍!?モノホン!?て言うか合戦場!?」


まさかの戦国時代の合戦場だった。


「おいおいおい!マジかよ!?ゲームのバグか?いやあり得ない!!戦国のステージなんて制作してすらいない!てことはタイムスリップか!?」


現状からしてどうやら男、東雲 晴樹(しののめ はるき)はタイムスリップをしたようだ。


「おみゃあなにもんだがや!怪しいやつだみゃあ!さては織田の者だぎゃ!くたばれみゃあ!」


「いきなり見つかった!やばい殺される!!なんかないか!?なにか武器になりそうなもんは!……PADがあった!えっとえっと!もうなんでもいいからとりあえず銃を!!」


適当に操作した結果出てきたのはSIG P225(自衛隊のハンドガン)だった。


PAN!PAN!PAN!


「ぎゃあ!?」「ぐえっ!?」「うっ!?」


戦国の戦場で明らかに場違いな乾いた発砲音が三つ響いた。周りには硝煙の独特なにおいが漂う。


「……初めて生で人を殺しちまった……いや生きるためだ!とにかく他にもちゃんとした装備を出して安全を確保しねぇと…」


PADを操作して武器のSCAR-L Mk16 Mod.0(アサルトライフル)ホロサイト、レーザーサイト、インカムランチャー(銃につけるグレネードランチャー)、心音センサー(心音に反応してモニターに表示する機械。主に銃の左側に着ける。)が装備の晴樹が愛用している銃を呼び出す。


「さっきの足軽は織田の者だとか言ってたな……とりあえずそっちに向かってみるか。」


足軽がしていた旗以外の旗に向かって歩きだす。しばらく歩くと心音センサーに複数の反応が出た。草むらから除きこんでみるとどうやら織田の足軽が敵に殺されそうになっていた。ホロサイトの照準を敵の頭に合わせて引き金を絞る。


DAWN!DADAWN!DAWN!


音がすると同時に敵が崩れ落ちる。足軽に駆け寄り話しかける。


「おっさん大丈夫か?」


「おみゃあさんが助けてくれたのか?たすかったみゃあ!おみゃあさんも織田の兵がや?」


「いや、ちょと織田に志願しようかと思ったんだ。あんたは織田の足軽じゃないのか?」


「わしも織田に志願しようと思って向かってるんだぎゃ、丁度いい。一緒にいくがや!」


「わかった一緒に行こう。」


と言うことで足軽のおっさんと一緒に織田の本陣に向かった。走りながらおっさんに話しかける。


「俺は東雲 晴樹だ、よろしくなおっさん。」


「東雲か、わしの名前はDGYUUUN!グハッ!?」


隣で走っていたおっさんの胸を鉛弾が貫通して赤い血が飛び散る。


「な…流れ弾なんぞに……むねんだみゃあ……」


「おっさん!?しっかりしろ!!今すぐ手当てを!!」


「東雲晴樹とか…ゆうたな…?よう聞け…わしはもうむりだぎゃ…おみゃあがわしの夢を継いでくれんか…?」


「……わかった、どんな夢だ?」


「一国一城モテモテのゆめだきゃ!ゴハッ!……あとはたのんだぞ…?」


「死ぬなおっさん!まだあんたの名前すら聞いてねぇんだぞ!?」


「わ、わしの名前は…木下十吉郎…」


「…木下十吉郎!?そりゃあ豊臣秀吉じゃねえか!?死ぬなおっさん!あんたが死んだら歴史がかわっちまう!!織田信長に使えて夢を叶えるんじゃねぇのか!?」


「お、織田の…姫様…は…織田…のぶ……な………」


「おっさん…?しっかりしろ!!おっさん!おっさん!」


十吉郎は死んだ。最後に何かを伝えようとして。


「クソッ!なんなんだよ…ただゲームやってただけなのに…うわぁっ!?な、なんだ!?女の子!?」


突然白馬にのった女の子が俺の上を飛び越えていった。そのままそこで馬にのった侍と斬りあいはじめる。


「ぬぉぉあああ!」ガキン!


侍が斬りかかり女の子が刀で受け止めるが刀が折れてしまう。


「目しるし頂戴つかまつる!」


「ちょっと待った!」


「何奴!貴様も織田の兵か?丸腰でどうするつもりだ?」


丸腰?ああこの時代の人間はアサルトライフルなんて見たことないのか。


「さっさと片付けろ!!」


「承知!!」


DAWN!DADADAWN!
「グハッ!?」

一人の侍を射殺する。
「なに!?おのれよくも!!覚悟ぉぉお!!」

もう一人の馬にのった侍が突っ込んでくる。

「危ない!!伏せてろ!!」ガバッ!
女の子を押し倒してそのままの体制でまた撃ち殺す。


「ふぅ……なんとかなったか……」


一息ついているとまた馬に乗った女の子が向かってくる。


「姫様!ご無事ですか!?」


「私は大丈夫、このまま一気に今川を追い払うのよ!」


「ははっ!」
女の子は馬に乗って走り去って行った。


「それとあんた……いつまでのってんのよ!」ガシッ!
いきなり蹴りとばされた。痛い……

「足軽の分際で織田の当主を押し倒すなんて最低ね!」

「あ?なにいって……当主は織田信長だろ?」

「信長ってだれよ?織田の当主はこの私、織田信奈よ!」


………………………………は?


「えぇぇぇぇええええ!?」










晴樹の戦いはまだ始まったばかりであった………

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