小説『問題児+転生者たちが異世界から来るそうですよ?』
作者:沈黙の道化師()

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「さて、どうしようかな・・・」

先程謎の光に包まれたかと思うと、一瞬にして見た事も聞いた事もないような異世界へと飛ばされてしまった彼だが、何故か今は冷静に現在の状況を何とかしようと頭を働かせている。そもそも上空推定4000メートルからものすごい速度で落下中であり、更に下には大きな湖がありこのままでは大怪我をしてしまう。そんな状況をパラシュートを持っている訳でもない15歳の子供がどうかできるとは思えない。が・・・

「うん。濡れるのはヤダし荷物もあるし、近くの木にでも降りよう」

と、あっさりと言う。しかし彼は降りる、と言ったのにも関わらずそのまま道具を取る事も無く落下し続けて行く。そして後100メートルほどで湖に墜落と言うところで彼は、まるで何かを放つように右手を湖へと向け・・・

ゴオオオオオォォォォォ!!!!!

と凄まじい音と共に右手から暴風が吹き荒れる(・・・・・・・・・・・・)

「うわっ!・・・っとと。久しぶりだから力出しすぎちゃった」

暴風でスピードを急激に落とし少しばかり体勢を崩したが、宣言通り湖の近くに生えている木の枝の一本に降り立つ。そして目の前の湖に、ボチャン、ボチャン、ボチャンと一緒に落ちていた3人が落ちる。

「・・・・大丈夫だよね?」

もしも普通の人間ならば大丈夫じゃないかもしれない。しかし、そんな普通の人間ならばこの異世界には呼ばれないだろう。そんな事は分かってはいるものの、どうしても気になってしまい枝からスルリと降り湖面を覗く。湖面には3つの気泡と薄い影があり丁度上に上がって来ているところだった。そこで安心した彼は引き上げるのを手伝おうと3つの陰に向かって鎖を投げ込む。

「・・・よし、掛かった」

その声と共に3本の鎖をまるで魚釣りのように纏めて引き上げると、胴体に鎖を巻きつけられた少年少女+猫が釣れた。3人を釣り上げるとすでに鎖は無く、彼も近くの茂みに隠れた。着地した途端赤いリボンの長髪の少女とヘッドフォンを付けた学ランの少年が罵詈雑言を吐き捨てる。

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。それになんだあの風は?おかげでスピードが上がっちまったじゃねぇか」

「此処・・・・・・何処だろう?・・・・・・それに、私たちを引っ張り上げたあの鎖は一体・・・?」

服を絞りながら猫と一緒にいた短髪の少女が疑問を投げかける。

「そうね・・・もしかしたら私たちと一緒に落ちてきていた、もう一人の子がやったんじゃないかしら?」

「俺もそう思うが・・・。一体、何処に居やがる?」

当たりを見回す3人だが、他に人を見つけることは出来なかった。その様子に更に不機嫌となる少年『逆廻十六夜』とフンと不愉快そうに鼻を鳴らす少女『久遠飛鳥』、そして興味をなさそうに猫を抱き抱える少女『春日部耀』。そして、そんな彼らを物陰から見ていた『黒ウサギ』は密かに思った。

(うわぁ・・・なんか問題児ばっかりみたいですねぇ・・・)

そしてこの4人に気付かれる事無く、かつ今現在黒ウサギの後ろにいる彼『金剛魁』の5人たちが起こすハチャメチャで滅茶苦茶でハイテンションな物語の幕はこうして開かれたのだった。

-3-
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