小説『フリースクール奮闘記(短編)『完結』』
作者:下宮 夜新()

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「皆様、はじめまして。私は都内シューレの理事長をしております古奥久遠と申します。本日はフリースクールに通っている子どもの親から質問でよく聞かれる事柄ベスト三を発表して欲しいとこちらの近藤理事長からの要請でやってまいりました」
 見学会に参加して頂いている人達の中からざわめきが起こった。 都内シューレはフリースクールの代表的居場所として認知されているので不思議はない。

 古奥理事長の言葉一つ一つに利道はエネルギーが違うというか、強い説得力を感じ取る。彼もこうありたいと目標にしている人物だからなのであった。
「親の方達からの質問で一番多いのは自分の子どもがまた学校に戻れるのかという相談ですね。それは子どもが学校が嫌になった理由やフリースクールの方針によって違います」
 古奥理事長は説明の途中で理解しやすいようにわかりやすく図をホワイトボードに書いていく。
「まずはこの居場所や都内シューレ等ではですが『自分のことは自分で決めるという自主性を主に尊重しています」
 ここでそんな指導で大丈夫なのかという感じで一部の動揺が見られた。古奥理事長が微笑むと続きを聞きたいという雰囲気になる。

「未来は子ども自身に自らの手で捕まえさせるという方針です。この方法で長らく都内シューレを続けているので補足説明をしますね。当然ながら子どもが困っていたら適切なサポートを心がけています。悩み事であっても勉強であってもです。 それから子どもの意見で勉強表を作っていく形ですから知識が偏るという批判もあるでしょう」
 
 見学会参加者が批判について聞こうとしていたが、ちょうどその話が始まりそうだったので一旦話を聞く態勢に戻った。

「でもそうはなりません。子どもたちは勉強したくなったり、やりたいことがあればすすんで自らの意思で必要な勉強をします。どうしても勉強させたいのであれば勉強重視方針のあるサポート校をご利用ください」
 
 古奥理事長は他の場所についての情報を伝えながらも気持ちはわかるが不登校の子どもに無理矢理ということだけはやめて欲しい旨の助言をする。

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