小説『フリースクール奮闘記(短編)『完結』』
作者:下宮 夜新()

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「勝切君から情報の提供をしてもらえます。ただ、子どもに無理強いさせないでください。そうすると子どもの家庭不和や人間不信などになってしまう危険性もありますからね。願わくば子どもにとっても居場所の相性がありますから数ヶ所見学や体験入学をしていただきたいとお伝えして私の一つ目の話は終わります」
 古奥理事長の説明は長かったがその意味を理解できた親の方達にはすでに覚えがあるのか考え込む人の姿も見えた。それからも古奥理事長は優しい声の中にどこか厳しさのある口調で語り続けてゆく。

「次に多い質問は子どもの考え通りに自由なことをさせていたらわがままになるのでは?という疑問です。これは大抵の方が驚かれるのですが、子どもが好き放題にしているのは一時期だけで自己責任で立派な行動を取れるようになっていく姿を何度も助言・必要ならばサポートをしているので知っています」
 
 一度間を置いて、今度は子どもの気持ちについての演説を続けた。
「それは子ども自身だって(親に心配かけたくない)・(自分の将来をどうしたらいい?)などと葛藤しているからでしょう。でも中学生になったから・高校生年齢になったからと子どもに急激な変化を求めないでください。子どもが少しずつ確実に行動に移そうとしているのを見守っていただけるのが一番の理想です」

 見学会に参加中の親の中からも『さすがは長年フリースクールを経営してきた理事長は違う』・『私たちの考えが見透かされているようだ』というささやき声が聞こえてくる中、古奥理事長は黙って静かになるのを待っていた。そして静かになると最後の話を発表し始める。

「最後の質問になりましたね。その三つ目は子どもとの接し方がわからないということです。長年フリースクールをやっていてわかったのは子どもが人一倍自分の考えに共感を持ってくれるのを待っているということです。 大半の子どもは自分の考えを否定されてきていることが多いから当然といえなくもありません。 それから子どもとは昔と同様(不登校前みたいな感じで)に接してあげてください」
 
 古奥理事長が自らの体験から親の方達の対応方法について諭していく。
「その代わり、子どもと落ち着いて話が出来る環境を作ってからです。そして子どもの話を否定しないでください否定されると子どもは話す気力をなくしてしまいます。 それと質問してきたお子さんに自分なりの考えを聞かせてもらうのもいいと思いますよ。お子さんの柔軟な発想に驚かされる楽しみが得られるかもしれませんしね」

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