小説『フリースクール奮闘記(短編)『完結』』
作者:下宮 夜新()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 そして自分で選んだ道なのだから同じミスをしないようにすればいいと割り切った。
(この失敗は次の成功につながるものだと思おう)
 この見学会での失敗を教訓にしながら彼は精力的にフリースクールに対する理解を求める活動を行い続けた。市役所に何度も足を運んでフリースクールのことを市民広報に掲載(学校関係で不満のある子ども・親が相談・居場所として活用する場所だと)してもらえるように何回も頼み込みに行ったし、調布市内の高校と大学から協力を得ようと説得を重ねて休日に公演会場として使用許可をもらうことに成功したりもした。

 市民が利用可能な多目的ホールを活用させてもらうことも出来るようになる。 そしてフリースクールを設立して一週間経つ頃には二人の子どもが居場所に通ってくれるようになっていた。その子ども達と利道は昼間、このフリースクールをより良い場所にするための知恵を出しあったり、自由に遊んでもらったりしていた。それでも利道は夜になると広報活動をしていたのである。

 それから彼はフリースクール設立から三十日(一ヶ月)経つ間にも事務手続きのため等のために子ども達を連れて市役所に顔を出したりもした。そしてどこからか評判を聞きつけて入会希望の話をしにきた子どもとその親に、利道は根気良く丁寧に話をしたりと多忙な毎日を送っているのだった。 成果が実り、四人の子どもがそれぞれ好きな時間に出入りするようになるまでに至った。
(そろそろ子ども達の意見を取り入れよう)

 そんなことを考えつつ、彼は自分に大切な子どもを任せることに決めてくれた親の方に感謝を内心で行う。そして最初から利道が決めていた最低限必要な掃除等のルールを子ども達に納得してもらえるまで話しあった。それから他に追加したいルール等も子ども達と一緒に考えてこの居場所を快適にするために必要なアイディアを出しあう。 長期展望を見据えて利道のフリースクールが長く続くも短く終わるも自分の力量に託されていると意識している。彼の挑戦はまだ始まったばかりなのだ。

-15-
Copyright ©下宮 夜新 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える