「おれ、サッカーに詳しいつもりなんだけどなぁ…。そろそろ当たってほしい」
主人公の彼は愚痴を言いつつ、あまり期待もせずに趣味で購入している『サッカーくじの券を確認する。これが利道の人生における転機となった。数少ない高額当選者になっていたのである。
(え?本当に…。夢じゃないよな……)
なかなか信じられずにいた利道は何度も確認してようやく実感が湧いた。
(間違いない。これだけお金があれば俺は夢を叶えられるぞ)
だからといって、家族には一億もの大金が当選したことを言うつもりはなかった。しかし、代わりに五百万円当選したことにしてフリースクールを設立するとの自分の夢を両親に訴え続けてみる。
「お父さん、スポーツの宝くじで高額当選しました。この新聞を見てください」
「ほほう。あれでか?どれどれ」
利通の父親は利道にうながされるまま、新聞に目を通す。
「ふむ。この五百万が当選したのだな?」
「そうなんだよ、お父さん。それで僕はあぶく銭になる前に夢であるフリースクールの設立をしたいんだ!」
「うーむ………」
利道の父親が苦渋の決断をするまでに数分かかった。
「一度も就職していないことに対しては心配していたが、お前の一番やりたいことだったなそれは。お前の情熱にかけてみるか、失敗しても大きな経験になるだろうしな」
「父さん、ありがとうございます」
彼は父親から許可をもらった。
「母さんも私の意見に従うそうだ、後、私からも親類にお願いするからお前も親類のみなさんに一人前になった姿を見せるんだぞ」
父親にそこまでしてもらって、利道は決意を新たにする。そしてその言葉によって決意を固めようとする。