小説『フリースクール奮闘記(短編)『完結』』
作者:下宮 夜新()

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第二章
 
 フリースクール本格スタートまでの軌跡

 彼は近藤利道、二十三歳。フリースクールを地図上での東京の中心付近にある調布市の八雲台という場所に設立した人物である。
 彼自身でも上手くいくかどうかなんてわからないし、仮に失敗しても貴重な経験をしたと感じるのだけは間違いないと確信している。
(見学会、どれくらい人が来てくれるかなー?)
 
 彼はフリースクールの見学会を二週間後に予定しているのでそういう場所を探している親子などが気づいてくれることを期待している。そのためにチラシの作成方法や、ホームページ作成などをフリースクールのボランティアをしていたときに知りあったスタッフの方に教えてもらいながら見学会準備を始めていた。
 そしてチラシとホームページでの見学会告知の結果、当日には十人程の大人と二〜三人の子どもが見学に来てくれた。
「お忙しい中、ご参加頂きましてありがとうございます。私が理事長の近藤利道です。詳しいプロフィールは今から配らせて頂きますね」
 
 プロフィールの紙には利道の最低限の教えても問題ない個人情報とフリースクールを設立した理由等が記載してある。彼は見学会参加者達の注目を気にしないようにし(気にすると緊張してしまうので)、臨機応変に言葉遣いを使い分けて進行する。
「では不登校経験者の勝切さんよりまずはお話をうかがいます、どうぞ」
 フリースクール事務局という場所でボランティアをしたこともある利道は、この勝切という人物がこういうイベントの時には私もお手伝いしますと言っているのを聞いてきているのでお願いを申し出たのであった。彼はこの勝切事務局長に不登校の体験を話してもらえることになった時、正直心強いと思った。
「それではお話ください」
 不登校を経験したことのない利道は、自分の言葉には重みが感じられないのではと危惧していた。

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