小説『日常の中の非日常』
作者:つばさ()

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七月に入ったばかりの日曜日。

私はある高校の文化祭に行くために、布団から起き上がった。時計を見ると、朝の八時三十分。

本当は八時に起きて、八時五十分には家を出るつもりだったのに、久しぶりに寝坊してしまったようだ。急いで布団から出て、まだ夢の世界にいる姉を横目にもそもそと着替え始めた。鏡の前で服装と髪型をチェックする。お母さんが朝ごはんにと作ってくれた小さなおにぎりを二つ頬張って、歯を磨き、外に出た。


太陽の光がじりじりと世界を照りつけている。平日でも休日でも人通りの少ない道を、少し早足で歩く。
横を自転車に乗った子供たちや、ジョギング中のおじさんが通り過ぎていく。


ああ、今日も今日がやってきたのだな、と思う。


最寄りの駅に着くと、定期を使って改札口を通る。すぐに電車がやって来て、ゆっくりと私の前に止まった。電車の中から、冷たい空気が漏れだして、頬や首筋に浮かんだ汗を冷やす。


電車に揺られて数十分。目的の駅に到着した。


外はもわっとした熱気に包まれていて、それから逃げるように人々は急ぎ足で改札口のある地下に向かう。

改札口から出て、しばらく歩くと外に出る。
太陽の光が眩しい。目を細めて、目的の高校まで、まっすぐ歩き始めた。


人の合間をぬって、私は目的の高校に足早に向かった。靴屋の前を通り過ぎ、大きな橋を渡り、スクランブル交差点を通る。コンビニの前を通り過ぎ、交番の前で大あくびしている警官を横目に、人通りの少ない裏道を通る。


十数分すると、目的地に到着した。二人組の高校生や親子連れに混ざって校門をくぐる。


校舎は、伝統校と有名なだけにちょっと古かった。所々が汚れている。校舎の綺麗さだけで言ったら、もしかしたら私の中学校の方が綺麗かもしれない。


それでも、学校は文化祭の活気に溢れていて、煤けた校舎がそれを彩っているようにも見えて、どこか心地よかった。
私はまず、小ホールに向かった。演劇部が劇をやるらしいのだ。

不慣れな学校だから、階段を上がったり下がったりと、少し迷った。校門前で貰ったパンフレットを片手に学校内を右往左往する。


なんとか小ホールに到着した頃には、開演の十分前だった。
できるだけ前の方の空席に腰をおろして、劇が始まるのを待つ。


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