小説『日常の中の非日常』
作者:つばさ()

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『日常の中の非日常  〜匿名希望の男に贈る〜


私は伝えたい。

ある匿名希望の怪しい男に。私はその男をカイさんと呼んだ。


カイさんは、私とたった数十分、同じ時間を過ごしただけで私にたくさんの事を教えてくれた。


私は、彼のおかげで将来の夢を見つけ、それに誇りを持つ事が出来た。

どんなに昨日が悔やまれても、今はそうじゃない。どんなに明日が恐ろしくても、今はそうじゃない。

そんな当たり前の事を教えてくれた彼。


日常だった。

一緒に飲んだ缶ジュースも、一緒に仰いだ大空も。


だけど、非日常だった。

彼と交わした他愛も無い話も、彼が押してくれた背中の感覚も。そして、日常の中で見つけた非日常を、誰かと共有できた事も。


つまらないとしか感じていなかった日常の中で、嬉しいとか、楽しいとかの感情を教えてくれたあなたに、私が伝えたいたった一言。


『ありがとう』


あなたがこれを読んでくれているならば、ただ、これだけを。


もし、あの日の事をあなたが忘れてしまっていたとしても、あなたのおかげで、自分を見つける事ができた女の子がここにいた事だけは、忘れないでほしい。


本当に、ありがとう。

きっともう会う事は無いのだろうけれど、もう一度会える事を願って、ありきたりだけど、この言葉を残そう。またね。



匿名希望の、元中学生より』

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