世界は平凡で、未来は退屈で、現実は適当で……。
そンな世界を15年間生きていた俺は何故だかわからねェが人助けをしてしまった。
それも自分の命と引き替えに、だ。
見知らぬ少女が赤信号と知らずに横断歩道を渡ろうとしていた。
ンで、急に来たトラックが少女を轢こうとしていた。
安全確認をしなかった少女が悪いとは思うンだが、そン時の俺は何も考えず助けに走っていた。
別にスゴイ能力を持っているわけでもねェし、唯一他の人と違うのはアルビノだってコトぐらいだ。
まァ、そのお陰で俺は虐められたりしていたがな。
そンな俺にもヒーロー願望ってのはあるモンでなァ。
「あァ、畜生……。優奈に告白したかったなァ」
トラックは既に目の前まで来ている。
俺は助けたことに後悔はしてなかった。
唯、悔いが無かった・・・なんて言える人生でもなかった。
好きな女の子に告白出来ずに終わってしまう人生だったなンて、死ンでも死にきれねェよなァ……。
畜生ォ……。
俺は浮遊感に身体を任せた。
何故か目を瞑っていると、瞼を通して光が入った。
可笑しいと思いながら、目を開けてみるとそこは……森の中だった。
「……はァ?」
トラックに轢かれ血塗れになっているはずの服も、
まるで何もなかったかのように綺麗な真っ白の状態だった。
「ッチ……。一体なンなンですかァ?コレはよォ」
どォなっているのかを調べるため上を見上げると、幻想的な夜空だった。
現代の日本では見られないようなとても澄ンだ夜空だった。
不意に頭の中に【森羅万象あらゆる向きを司る程度の能力】という単語が浮かンで出てきた。
まるで元から自分の身体に有った能力なのか?と思う程ハッキリ鮮明に浮かンだ。
俺は悩みながら森の中を歩いた。
すると森の中から変な物体が出てきた。
人間一人分くらいの蜘蛛みてェだ。
「……ンだァ?ココはよォ」
そう一言呟くと急に蜘蛛が襲いかかってきた。
さっきの【森羅万象あらゆる向きを司る程度の能力】と言う物の力を確かめるためにも、
相手に向かって手を出して、風を螺旋状に集めてみた。
「螺○丸!!」
「ンギャアアアアアアアアアアアア」
蜘蛛って鳴き声あったっけ……?
しかもよりによって耳がキーンとするような甲高い叫び声って……。
ま、兎にも角にもまるでチュートリアルに出てくる雑魚キャラの様な蜘蛛を倒した。
森羅万象ってのは本当に意味通りなのかも疑問ではあるンだがなァ。
取り敢えず風は操れた。
そォ言えば小学生の時に、
『鏡は光を反射することが出来る』的なことをやった覚えがある。
ということは、だ。
アルビノの俺が何もせず外に出ていれたのは無意識のうちに能力が働いていたってコトなのかねェ?
つまりは、『反射』という物は基本デフォなンだ。と言うことが分かった。
自分の能力について考えながら森の中を歩いていると、向日葵畑を目の当たりにした。
向日葵畑の中に女性が居たので、ココが何処なのかということを聞こうと思った。
向日葵を踏まない様に気をつけながら女性に向かっていくと、不意にコッチを向いて。
「あら、こんな所に何をしにきたの?」
そう呟いた。
俺は、ココはどういうところなのかということを聞こうと思った。
「すみませンが、ココは一体何処なのでしょうかァ?」
「……?ココは太陽の畑だけど……それも知らずにやってきたの?」
太陽の畑、なンて場所はあったっけかァ?
俺の記憶では日本にそンなものは有ったかァ?
「えェと、ココは都道府県で言うと何処なンでしょうか?」
「……都道府県って何かしら?もしかして外来人?」
「外来人……?」
「それならばココを知らなくて当然ね。なら教えてあげる。
ココは『幻想郷』。『幻となったものを自動的に呼び寄せる土地』よ。
つまり妖怪の住む場所ということね」
……は?つゥことは何か?俺は違う世界に飛ばされたってコトか……?
不意に俺の意識は途切れた。
女性の驚いた顔が印象的だった。
目を開けると部屋だった。
周りを見渡してみると、女性がコチラを見ていた。
「……流石に驚いたわよ。急に気を失うなんて」
「すみませン。自分の今ある状態が信じられなくて……」
「良いわ。取り敢えず、三日も寝ていたんだから身体気持ち悪いでしょう?
お風呂が沸いているから入りなさいな。」
「何から何まですみませン。えェ、俺の名前は哀川拓也って言います」
「私は風見幽香よ。良いから早く入ってきなさい」
「で、ではお言葉に甘えて」
そう言って指を指した方向に進んで風呂に入った。
すると風見さンが、ココはどういうところなのか?ということを説明してくれるらしい。
「先ず、キチンと自己紹介するわ。私の名前は風見幽香。花の妖怪よ」
「……妖怪?」
この時の俺は物凄く顔が引き攣っていたと思う。
その顔を見て幽香さンは少し笑っていた。
「えぇ、妖怪よ。それも最強クラスの妖怪と同族にも恐れられているわね」
「……え?こンな美人がそンな妖怪なのか……?」
「フフ、褒めてくれて有り難う」
「え、でもそンな風見さンが、何故俺みたいなひ弱そうなのを?」
「なんとなく、よ。それと幽香で良いわ」
「あ、コッチも拓也で良いです」
「そう。気まぐれだったのだけど、少し気に入ったのよ」
……俺のことを?
何処に気に入る要素があるンだ……?
「あぁ、それとタメ口でいいわよ。敬語って何か壁を感じるわ」
「あ、あァ。分かったぜェ」
「それで、提案なのだけど」
「何だァ?」
「ココで働かない?」
「……へ?」
「衣食住は提供するわよ?」
「えェと、それは家政婦みたいなものと捉えていいのかァ?」
「えぇ」
……住むところも、食うものもねェから有り難い提案なンだが……。
幽香のメリットは何なンだァ?俺にしかメリットがねェ……。
「幽香のメリットは何なンだァ?」
「言ったじゃない。貴方のことが気に入ったって」
……美人に言われて嬉しいンだが……。
「取り敢えずは納得しておく。幽香、俺をココで働かせてくれ」
この出会いが俺の人生を変えたのだった。