小説『星屑の記憶  【完結】』
作者:伊豆員浩()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

音楽とマリファナはとても相性がいい。

中でもレゲエとの相性は抜群に良く、そこにビールでもあれば俺は最高にご満悦なのである。

カナビノールという物質は五感に作用し感受性を高めてくれる。

特に聴覚は通常の何倍も敏感になり、メロディーから作り手のメッセージを感じ取る事が出来る。

ミュージシャンがジャマイカでレコーディングするという話をよく聞くが、本来の目的は正にそれなのだ。


俺達は一日の大半をベッドの上で過ごした。

そして、その傍らには マリファナとレゲエとビールがいつもある。

心地良い空間は時間の感覚を麻痺させ、俺達は無限の時間の中でSEXと麻薬を繰り返した。

もはや二人にカレンダーや時計など全く必要無かった。



「ねぇ、今 何月何日?」 傍から見れば、完全に終わっている人間の台詞である。

「分かんねぇ」

81.3FMからは、ワムの 「ラスト・クリスマス」 が流れていた。

彼女は何日かぶりにカーテンを開け、ぼんやりと全裸で外を眺めている。

いつの間にか街はクリスマスムード一色に様変わりしていた。

行きかう人達は両手に荷物を抱え、足早に通り過ぎて行く。


正直、クリスマスなんてどうでもよかった。

大事なのは、おまえが側にいて、そして麻薬があること。


今想い返せば・・・

たとえ人から何と言われようと、あれだってひとつの 「幸せの形」 だったと言いえる。

あの頃の二人にとって、麻薬さえあれば いつだって 「ハッピー・クリスマス」 だったのだ。



満天の星空は 俺の人生の中の最悪でいて最高だった記憶を呼び起こし、束の間の幸せをくれた。

俺は、室戸岬灯台の灯りを横目に針路を245度に取り、通過時間を航海日誌に記入した。





                      2007年 七夕


              *このストーリーを天国のFに捧げる・・・





-9-
Copyright ©伊豆員浩 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える