音楽とマリファナはとても相性がいい。
中でもレゲエとの相性は抜群に良く、そこにビールでもあれば俺は最高にご満悦なのである。
カナビノールという物質は五感に作用し感受性を高めてくれる。
特に聴覚は通常の何倍も敏感になり、メロディーから作り手のメッセージを感じ取る事が出来る。
ミュージシャンがジャマイカでレコーディングするという話をよく聞くが、本来の目的は正にそれなのだ。
俺達は一日の大半をベッドの上で過ごした。
そして、その傍らには マリファナとレゲエとビールがいつもある。
心地良い空間は時間の感覚を麻痺させ、俺達は無限の時間の中でSEXと麻薬を繰り返した。
もはや二人にカレンダーや時計など全く必要無かった。
「ねぇ、今 何月何日?」 傍から見れば、完全に終わっている人間の台詞である。
「分かんねぇ」
81.3FMからは、ワムの 「ラスト・クリスマス」 が流れていた。
彼女は何日かぶりにカーテンを開け、ぼんやりと全裸で外を眺めている。
いつの間にか街はクリスマスムード一色に様変わりしていた。
行きかう人達は両手に荷物を抱え、足早に通り過ぎて行く。
正直、クリスマスなんてどうでもよかった。
大事なのは、おまえが側にいて、そして麻薬があること。
今想い返せば・・・
たとえ人から何と言われようと、あれだってひとつの 「幸せの形」 だったと言いえる。
あの頃の二人にとって、麻薬さえあれば いつだって 「ハッピー・クリスマス」 だったのだ。
満天の星空は 俺の人生の中の最悪でいて最高だった記憶を呼び起こし、束の間の幸せをくれた。
俺は、室戸岬灯台の灯りを横目に針路を245度に取り、通過時間を航海日誌に記入した。
2007年 七夕
*このストーリーを天国のFに捧げる・・・