小説『ハイスクールD×D〜魔乖術師は何を見る?〜』
作者:ロキ()

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どうも、次元の狭間にある自宅に戻ってきたライト・シュトレンベルグです。

イリナにはやはり衝撃が大きかった。元々、信仰に関しては並々ならぬ情熱を持っている娘だったから、当然といえば当然なんだが…。


「イリナ、入るぞ?」
イ「……どうぞ」
「イリナ、衝撃が大きいのは分かるがちょっとは部屋を出ろ。体に響くぞ」
イ「だって!我らが父である主が死んでいたんですよ?そう簡単に立ち直れる筈がないじゃないですか!」


そう言ったイリナは涙で顔を歪ませていた。…もう、頃合いかな。他の奴らを紹介しても良いだろう。


「イリナ、ちょっとついてきな。今のお前の思いを吹き飛ばせるくらい強烈な奴を見せてやる」
イ「え?」


俺はイリナの手を掴んで、お姫様抱っこの状態でとある場所に向かった。その場所は…こじんまりとした教会だった。

そこで一人、祈りを捧げている人がいた。俺達の気配に気付くとにっこりと笑っていた。…ちょっと引きつってたけど。


「待たせたな」
メ「ええ。勝手にどこかに行って、あげくの果てに別の女性を連れてくるなんて…ひどい人です」
「それは済まなかったと思っているよ。メイビス」


イリナが驚愕の表情を浮かべていた。俺が言った名前が誰のことを指すのか理解したのだろう。


イ「…主、なのですか?」
メ「紫藤イリナと言いましたね?初めまして。元神のメイビスと申します。今はライトの眷属です」
イ「…どういうこと、何ですか?」
「簡単な話だよ。あの三竦みの戦争が終わった直後、彼女たちをここに連れてきた。それだけ」
メ「彼を怒らないでくださいね?彼はあくまで、私たちを治療するために連れてきただけなんですから」
イ「それなら!天界に戻ってきて下さい!数多くの天使が、使徒があなたの帰りを待ち望んでいるはずです!」


メ「残念ですが…それは出来ません」


イ「何故!?」
「そりゃあもう選んでしまったからな。俺の眷属であることを」


メイビスやルシファー達には眷属になる時に忠告した。これを受け入れれば、もう二度と元の場所に、天界に冥界に戻ることは出来ない。と。だがそれでも受け入れた。

家族や仲間と共に歩む未来を捨ててでも、眷属になることを選んでくれた事が内心嬉しかった。不謹慎だと分かっていても。


「大体、メイビスはまだしもルシファー達には戻る場所なんてない。新しい四大魔王が選出された今、彼女達が戻れば新たな戦争の火種になるだけだ」
メ「そしてもう一度戦争が起これば、完全に三大勢力は共倒れ。そしてその影響は世界中に広がり、様々な諍いが起こるだけなのです」


「戻れるとしたら、三大勢力が協定を結んだ後じゃないと出来ないんだ」


だけど、今回の一件でその流れは加速する。このまま戦争を続けても何の意味も無いからだ。むしろ危険性の方がはるかに大きい。

なんせ堕天使の幹部が敵対行動をしたんだ。堕天使が悪魔と天使にやられてもおかしくはない。


「やっと、か…。ここまで長かった。やっと皆を表の世界に出すことが出来る」
メ「ライト…」


俺の体感時間で八百年以上。ひょっとしたら千年に届いているかもしれない。そんな長い時を皆に待たせてしまったんだから喜びも一塩だな。


ガ「そう簡単にいけばいいがな」
「ガイアか。お帰り。今のはどういう意味だ?」


入口を見ると、そこには真紅の髪と眼の女性が立っていた。真なる赤龍神帝であるグレートレッドことガイアだ。多分散歩から戻って来たんだろう。だけど、今のはどういう意味だ?


メ「どういうことですか?」
ガ「話してもいいが…その前にそこの女は誰だ?」
「…ああ、そういえば紹介がまだだったな。彼女は紫藤イリナ。教会の祓魔士(エクソシスト)で、俺の眷属さ。まあ、これからよろしくしてやってくれ」
イ「よ、よろしくお願いします」
ガ「また新しい奴を連れてきたのか…。まあ、それはいい。質問に答えるとな、奴が…オーフィスが動き出した」
「…【無限の龍神】が、か?」
ガ「正確に言うなら、あいつとあいつにくっついている【禍の団(カオス・ブリゲード)】の連中が、だな」


あいつらはお前の目的を叶える気なんてこれっぽっちだって無いんだ、ってことにどうして気が付かないんだ?オーフィス、お前は純粋過ぎるんだ。その純粋さはいずれ己の身を滅ぼすぞ。


ガ「子供達の中にも参加する者がいるようだが…どうする?」
「自分の身くらい自分で守るだろ。気にする必要は無いよ。むしろ馬鹿共の相手をする方が問題だよ。あいつの最終目標は俺とお前なんだぞ?無いとは思うが、気を付けてくれ」
ガ「それこそ余計な心配だろう。次元の狭間を統べる者と守護者だぞ?心配する要素が見当たらない」
「あまり人間を嘗めてると喉元を食いちぎられるぞ?人間は数多の神々や龍を滅ぼしてきた者達なんだからな」
ガ「さすがは【最強の英雄(アインヘリヤル)】と言ったところか?」
「あまりその名は好きじゃない。俺は英雄と呼ばれるような人種じゃないし、英雄なんて名乗っても驕るだけさ」
ガ「お前らしいな。まあ、しばらくはここにいるだろう?」
「いんや。ちょっと休んだらまた戻るさ。まだ仕事は終わってないからな。悪い」
ガ「いつになったら休みが取れるんだ?お前は。少なくともこの数年間は働き通しだろう。休んだ方がいいぞ」
「仕方ないよ。俺の力はそれだけの物なんだから。それにガイアや桜、それに皆が手伝ってくれているおかげで少しは楽が出来てる。感謝しているよ」


っていうか、俺ってそんな働いてるように見えるのか…。数百年も生きていると、何かしていないと暇なんだよな。そりゃあ子供を鍛えるとか、遊んであげたりとかいろんな事をしてるけどな?それでもたまに暇なんだ。


ガ「ライトがそれでいいなら構わないが…出来るだけ体には気を付けてくれ」
「ああ。ガイアも疲れたら休んでくれ。あくまで【禍の団(カオス・ブリゲード)】の動向は俺が注意しなければならない事なんだから」


俺がそう告げると、なんかガイアがニヤリと笑った。悪巧みしてる時みたいな顔をしている。いや、これは間違いなく悪巧みをしてる。


ガ「それじゃあ疲れたし一緒に寝て貰おうかな。報酬として、な」
メ「なっ…!ズルいですよ!ガイア!私だって添い寝はまだしたことないのに!」
ガ「報酬なのだから仕方ないだろう?したければ、お前も働く事だな」
メ「うっ…。こちらの弱みにつけ込んで…」
ガ「それでは行こうか?お前の時間もそうないだろうしな。何事も早め早めがいいだろうしな。よし行くぞ。それ行くぞ」
「ちょっと落ち着け。当事者抜きでガンガン話を進めるな」


まったく…この2人は何を焦っているんだ?そんなに急がなくったって添い寝ぐらいいくらでもしてやるのに。

※ライト達のいる次元の狭間の家では、働かざる者、食うべからず理論で成り立っている為何かご褒美を貰うためには、何かをしなければならない。という事になっているのをライトは知らない。


「イリナ。確かに今君たちが主と慕う神はいない。でも、君たちが神だと慕ってくれた天使は今でも君たちの事を見守っている。その事を忘れないでくれ」
イ「はい!主は今でも私達を案じてくれていらっしゃる…それだけでも十分です」


強くなったものだな。この分なら、もう解放してもいいだろう。俺は右手の人差し指に指輪を付けた後、イリナの胸元に当てた。


「我、ライト・シュトレンベルクの名の下に汝の枷を外すことを認可する」


俺がそう唱えると、指輪がその形を解きイリナの体に取り込まれた。するとイリナの背中から一対の天使の羽が生えた。この光景にはガイアもメイビスを目を見張りながら見ていた。


イ「これは…?」
「これは君の中の駒…【天使】の枷を外しただけだ。成長次第ではその翼も増える。今のイリナは人間と天使のハーフってところだな」
メ「ライト…それは」
「うん。今、イリナには3つの道が提示されている。人間でいる道、人間と天使のハーフである道、そして…完全な天使である道。この3つだ」


俺の眷属は基本的に人だ。だから、前者2つはまだしも、最後のは完全な別離を意味する。基本的に、というのはガイアたちのように人間でない者もいる。そういう人はハーフとなるからだ。


イ「私は……」



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