小説『ハイスクールD×D〜魔乖術師は何を見る?〜』
作者:ロキ()

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言い忘れましたが話す人の前に頭文字だけ出しておきます。主人公以外ですが。それではどうぞ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇


あれから数日が経ったある日、5人が目を覚ましたらしい。俺と桜さんは5人を迎えに行った。


「御加減は如何ですか?」
神「あ、はい。治療してくださったんですよね?ありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらず。まだどこかに異常があるようでしたらいつでも言ってください」


樹の効力は分からないけど、この分だと効果はあったみたいだ。でも怪我は癒やしたとはいえ、幾分か心配がある。


神「いえ、今のところ心配はありません」
「そうですか。それは良かったです。さて起きたばかりで空腹でしょう?食事など如何でしょう?」
???「え!?いいの?」
「え、ええ。別に構いません。少々お待ちいただきますが、それでもいいのなら」
???「待つよ!幾らでも待つ!!だから美味しいのをよろしく!」
???「落ち着きなさい、ベルゼブブ。魔王としての品格が疑われるわよ?」
ベ「ええ〜。だってお腹空いたんだからしょうがないじゃん。文句言うならルシファーの分も食べちゃうよ?」
ル「はぁ!?ちょっと止めなさい!私だって久方ぶりにちゃんとした食事がしたいのよ!」


藍色の短髪に碧色の瞳の人がベルゼブブ様で、蒼色の髪に紅色の瞳がルシファー様か。楽しい人たちだなぁ。まったくこれだから世界は面白いんだよ。まったくもって奇想天外。一体何が起こるか理解不能というか予測不能。やっぱり人生ってのはこうでなくっちゃな。


「ということは貴女方がアスモデウス様とレビィアタン様ですか?」
ア「そうだよ。ところで君の名前は?」
「これは申し遅れました。明人(ライト)・シュトレンベルグ。異世界の住人でした」
レ「でした?それってどういうことなの?貴女は知ってるんでしょ?メイビス」
「メイビス?」

メ「私のことですよ。明人(ライト)君」
「え!?神様のことだったんですか?」
メ「ええ。メイビスと申します。以後、お見知りおきを」
「こちらこそ。というか、何故神様と四大魔王の方がそんなに親しげなのですか?」
レ「まぁ、数百数千年も一緒だったからね。自然と、かな?」
「なるほど。それでは食事の準備をしてきますので少々お待ちください」
ア「そんなに固くならなくてもいいのに。普段通りの喋り方でいいよ」
「そうですか?なら、その言葉に甘えさせて貰います」


でもどこの世界に魔王と神様相手にフレンドリーに話している奴がいるんだ?


零『お前のことだろうが』


邪魔しないでくださいよ零二さん。今わりかし必死に現実逃避している最中なんですから。


零『まったく、思っていたよりもへたれな主だな』


うるさいですよ!どう思おうと俺の勝手でしょう!?


零『まぁ、そりゃそうだな。…分かったからそんな怨念じみた視線をこっちに向けるな!』


分かっていただけたなら結構です。

などという漫才じみたことをしつつも、着実に料理を完成させてゆく。ふぅ、こんだけあれば十分かな?俺は料理をテーブルに運んだ。そこには料理をいまかいまかと待っていた魔王様がいた。


ベ「早く早く!!」
「そんなにがっつかなくても、料理は逃げたりしませんから、落ち着いてください」
ル「それにしてもいい匂いね。ベルゼブブの早く食べたいって気持ち、分からなくもないわ」
「ありがとう。さてあとは、2人を呼べば完了か。…そろそろ戻ってください!食事の時間ですよ!」
メ「そういえば今更ですけど、ここはどこなんですか?」
「ここですか?ここは次元の狭間に浮かんでいる家です。…ああ、この空間が破れることはそうそうありえませんよ」
ア「どうしてそう言いきれるの?」
「そりゃあ」



「我が支えとるんだ。そう易々と破られてたまるものか」



皆「「「「「っ!?」」」」」


「ああ、お帰り。桜さんは?」
ガ「え?帰ってきてないのか?先に帰ると言ってたんだけど」
桜「ただいま。お腹空いた。…っと起きたんだ」
メ「何をしているんですか!?グレートレッド!」
ガ「その名で私を呼ぶな。今の私の名はガイアだ。明人が私のために考えてくれた名前を侮辱するな」
メ「いえ、侮辱しているつもりはありませんが…」
「ほらほら、喧嘩しないで。皆で食べましょう?もうベルゼブブは耐えきれないようですし」
ベ「そうだよ!美味しそうな料理の前で喧嘩するなんて、全ての物事よりも酷い冒涜だよ!」


それはそれでどうかと思うんだが…まあいいか。喧嘩も止まったみたいだし。


ガ「むう…。明人(ライト)が言うなら仕方ない。早く食べるとしよう」
メ「私は別に喧嘩しているつもりは無いんですが…。そういえばガイアでしたか?」
ガ「なんだ?聖書の神よ」
メ「彼と結構仲が良いようですけど、貴女にとって彼はなんなんですか?」
ガ「ふむ…明人(ライト)、悪いけど耳を塞いでいて貰える?」
「別に構わないけど…なんで?」
ガ「この者らと話があるから」
「了解」

俺は眼を閉じて、耳を塞いだ。俺は読唇術が使えるから、雰囲気だけで分かってしまう。


〜精神空間〜


零『難儀な物だな。お前も』


気にしてません。それにしても一体何を話してるんですかね?


零『そりゃあお前、女子が集まったらあれしかないだろ』


恋バナって奴ですか?そんなの縁もゆかりもありませんからね。俺は長年幽閉状態でしたし、それに…。


零『それに…なんだよ?』


俺のような化け物を好きになる人がそう易々といるとは到底思えない。信じられない。零二さん、俺の最大の欠点はね?他人の好意を素直に受けとめられないことなんですよ。


零『なんていうか、大変な人生送ってるな。お前は』


重々承知していますよ。そんなことはね。…ねぇ、零二さん。俺にだってあったんですよ?他人を信じてみようと思った時期がね。でも、俺は彼女を救えなかった。彼女の期待に応えてあげることが出来なかった。そんな自分に対する不甲斐なさ故にね。


零『ようするにあれか?その彼女を救えなかった自分に幸せになる権利はないって奴か?』


いえ、単純に恐れているだけです。こんな俺が彼女たちの期待に想いに応えられるのか?こんな…救うと誓った女性すら救えないような俺にそんな資格があるのか?とまぁ、昔のことを女々しく引きずっているような人間なんですよ、俺は。


零『別にいいんじゃねぇか?ずるずると引きずってたってさ』


え?零二さん。それはどういう…?


零『だからさ、引きずってたって構わねえだろ。生きてりゃいつかそんな自分を肯定できる日も来るさ。とりあえずお前が前を向いて生きている限りは大丈夫だ』


とりあえず生きていればなんとかなる、か…。面白いなぁ。その考え方は。…ねぇ、零二さん。


零『なんだ?』


俺って生きててもいいんですか?俺は幸せになってもいいんですか?こんな…様々な者を殺めた殺人者と言っても過言ではない俺がっ!!



零『いいに決まってるだろ。よく言うだろ?全ての人に幸せになる権利があるって。それより、そろそろ時間みたいだぜ?』



俺の肩を叩く感触がある。もう話し合いは終わったのか。それじゃあ失礼します。零二さん、ありがとうございました!!


零『はいよ。どういたしまして』


〜現実世界〜


「もういいのかい?」
ガ「ああ、もう終わった。…ところでちょっといいか?」
「なんだい?何か不思議なことでもあった?」
桜「なんで泣いてるんだい?」
「え?」


ああ、そうか。どうりでさっきから視界が歪んで見える訳だ。


「…ねぇ、1つ訊いてもいいかい?」
ガ「なんだ?私たちに答えられるならなんでも言ってくれ」
「…俺はさ、こんな姿(なり)してたって化け物なんだよ。それはメイビス様も、ルシファー様たちも感じたでしょう?」


5人「…………」


ガ「それで?お前は何が言いたいんだ?」



「俺はさ、きっと皆のことが大好きなんだと思う。故に問いたい。どうして君たちはこんな化け物である俺を好いてくれるんだ?」



これを訊かないと、きっと俺は前に進むことが出来ないだろう。それぐらい俺にとっては重要で、とても大切なことだから。そんな俺の思いが分かったんだろうか?皆真面目な表情になっていた。


ガ「私は貴方のことを愛している。たとえ貴方が何者であってもこの心は揺るがない」


メ「他者のためなら命を省みない。そんな貴方の支えになりたい。それが私の願いです」


ル「何の関係もない私たちのために戦って、傷を癒やしてくれた貴方に恩返しがしたい。今はそれだけね」


ベ「私は実のところ魔王になんてなりたくなかった。忙しいし、何よりも…皆私のことを【ベルゼブブ】としてしかみないから。でも貴方は私という個人を見てくれる。だから、私は貴方の側にいたい」


ア「私は君に興味がある。二天龍すら圧倒する力を持つ君が今までどんな生活を送ってきたのか。それが君の側にいたいと思う理由だ」


レ「あの戦闘で貴方に助けて貰った時、こう思った。『なんでそんな悲しそうな眼をしているの?』って。そしてその悲しそうな瞳を楽しさで埋めてあげたいと思った。だから私は貴方の側にいたい」


6人の言葉を聞き、こう思った。


『ああ、俺はこんなにも恵まれていたんだな』って。


だからこそ聞きたい。もう父さんや母さんに会えないかもしれないのに、それでも俺についてきた人の言葉を。


「桜さんは?」


桜「…どうしていきなりそんなことを訊きたがるのか、僕には分からない。でも言えることは1つだけ」


そう言うと、桜さんは俺の頬をがっちり捕まえて−−−−キスしてきた。しかも結構ディープなやつを。そしてキスを止めると満面な笑みを浮かべて、こう告げた。



桜「愛してる!たとえ何億年、何万年の時が経とうともこの心は変わらない!!一万年と二千年経っても、僕はきっと君に会いに行く」



今まで最もストレートで、俺が求めた最良の言葉。俺はただその言葉を、必要とされていることを知りたかっただけなんだ。そう思った。


-5-
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