小説『ハイスクールD×D〜魔乖術師は何を見る?〜』
作者:ロキ()

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翌日イッセーが悪魔になっていたことを残念そうにしていたイリナは、ゼノヴィアと共にグレモリー眷属に会いに行った。


ア「ところで、本当にあの2人だけで良かったの?」
「何か問題があるのか?」
ア「そりゃあ、あるでしょう。あそこにはアーシアちゃんもいるんだよ?【魔女】と呼ばれた子が。それに木場君は【聖剣計画】の被験者が聖剣使いである彼女たちを恨まないと思う?」


……しまったぁぁぁぁぁぁぁっ!!!完っ全に忘れてたよ!っていうか、今もどこかで戦っているような…これ結界じゃん!ああ、もう!マジで面倒くさい!


「行くぞ、アルトリア。取り返しのつかないことになる前に!」
ア「もう結構手遅れだと思うんだけどなぁ…」


俺達が結界の張られている所に行くと、やっぱりというか案の定というか木場君と…これは少々意外というかイッセーが戦っていた。

やたら変態的な笑みを浮かべていたけど。俺は自分の神器【神の記せし象徴(アーティファクト・オブ・セイクリッド)】を展開した。


「禁手化(バランス・ブレイク)ッ!!!!」


表面上には何の変化もないが、これで神器に記された神器の使用・禁手・融合・譲渡が可能になった。それで【魔剣創造(ソード・バース)】の亜種禁手化である【魔天楼の剣角(ソード・グラーティム・バース)】を展開した。

こいつの能力は単純に【魔剣創造】の上位互換だ。その代わり、神話に登場するような伝説の魔剣をも創れる。手始めに最強の魔剣ことグラムを創り、一振りで結界を破壊して戦いに乱入した。


「何をしてるのかな?」
イリ「あっ…。ごめんなさい」
「分かれば結構。それでどうして戦っていたんだ?まあ、おおよその察しはつくけどな」
イッ「アーシアを馬鹿にしたんだ。アーシアは何も悪くないのに…」
「言いたい事は分かった。その経緯もな。どうせゼノヴィアが挑発したんだろう。あとは…お前らもいい加減にせんかっ!」


俺は未だに鍔迫り合おうとしている2人の剣に向けて衝撃波を放った。その1撃で木場君の剣を破壊し、ゼノヴィアの【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】を吹き飛ばした。


ゼ「何をするのですか」
「やかましい。お前はここに喧嘩を売りに来たわけじゃないだろう。それに人が話しているのに、いつまでやってるんだ。あといがみ合ってちゃ始まらんだろう?…リアス嬢大変ご迷惑をお掛けしました。我々はこの辺で失礼させていただきます」
リ「え、ええ…。ごきげんよう」


俺はグラムを消して【魔天楼の剣角】を【神の記せし象徴】に戻した。すると雨が降ってきた。しょうがないから簡易魔術で雨を弾きながら歩いた。そしたらいきなり光の槍が降ってきた。空を見上げると十枚の黒い翼を持った男がいた。


「何の用だ?コカビエル」
コ「来たのが聖剣使い2人に雑魚の悪魔祓いと訊いた時はガッカリしたが、まさか貴様もいるとはな。【白の魔乖術士】よ」
「コカビエル、今すぐに【エクスカリバー】を返すなら見逃してもいい。【最強の幻想(ラスト・ファンタズム)】、【勝利を約束された剣】。あれは俺とアルトリアの絆の象徴。お前程度の者が持っていていい代物じゃない」
コ「答えは分かっているだろう?−−否だ。俺はこれで戦争を仕掛ける!堕天使こそが最強なのだと示すために!」


種族自体が存亡の危機に立たされているのに、何を寝言をほざいているんだ?最強も何もそんな余裕は無いだろうに。まあ、どうでもいいか。

俺は空間に穴を開けてそこに手を突っ込んだ。え〜と、どこにしまったっけ?あ、あったあった。一気に腕を引き抜くと、そこには刀身が真っ黒な刀が出てきた。それもとんでもない量の負の力を宿した、な。コカビエルも驚愕の表情を浮かべた。


コ「き、貴様!何故だ!何故人間風情が【魔刀】を持つことが出来る!?」


魔刀…それは妖刀と似て非なる物。製作過程はほぼ同じだが、本質がまったく違う。妖刀は大量の人間や妖怪を斬ることで沢山の呪いを浴びて完成する。

だが、魔刀はその完成された妖刀でその身を断った者の怨念…恨みや辛み、嘆きの感情が色濃く宿った存在だ。


『主、今回の怨敵はこやつか?』
「そうだよ、狼牙。でもな、殺しちゃ駄目なんだ。だから死ぬ寸前までいたぶってやる…!」
狼『くくくっ。さすがは主殿だ。我を開放してもその程度しか呑み込まれぬとはな。まあよい。それでは我が主殿の怨敵よ』

「『さあ、絶滅タイムだ!!!!』」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

〜アルトリアside〜

闇色の刀身が輝き、ライトの格好まで変わっていた。真っ黒なジーンズに真っ黒なシャツを着てその上に真っ黒なコートを着込んでいた。まさに【夜】や【闇】を体現でもしているかのように。


ラ「後悔と反省と懺悔でもしてぶっ倒れろ!コカビエル!」
コ「フン!そんな事をするわけが無いだろう!神に祈れだと?見くびるで無いわ、この【魔人(ヴェルディ・ネッツィーロ)】が!」

しかも性格まで豹変してるし…魔刀、ねぇ?確かに普通の魔剣や妖刀に比べれば禍々しい気配はするけど…言うほどの事かな?


イ「ど、どうしたんでしょうか?」
「うん?何が?」
ゼ「いや、どう考えてもライト殿のことでしょう」
「ああ、大丈夫大丈夫。暴走なんかはしないから。したとしても、いざって時は私が止めるから」
ゼ「それは問題だらけなのでは…?」


でもやっぱりライトは優しいなあ。『アルトリアとの絆の象徴』だって!ああ、こういう時に幸せを感じるって間違っているんだけど、別にいいよね!?


イ「あの刀は一体…?」
「あれはね。魔刀・狼牙って言うんだよ。多分ライトが持っている魔剣の中でも上位に入るほどの刀剣だよ」
ゼ「それは…まずくないのか?」
「普通の人が持ったら危ないね。私でもちょっと危険かな?でもライトも桜さんも普通に使ってるよ。要するに意志が強ければ、普通に扱えるってことだね」


扱えるとは言っても、多少は負の力に呑み込まれる。それでも性格がその場限りで変わったりするだけで、人格が破壊されたりする事はないらしい。

まあ俗に言う体を乗っ取られるってことだね。もしもそんな事態に陥ったら、死ぬより恐ろしい目に遭うだけなんだけど。


ラ「ヒャハハハハハッ!どうしたどうした?その程度のもんなのか?ええ?どうなんだ、コラ!」
コ「くっ…。まだだ!戦争を起こすまで死ねるものか!」
ラ「この戦争狂が!他人に迷惑かけるならテメェは勝手に野垂れ死ね!このクソ天使が!大体、堕天したくせにどの面下げて翼付けてんだぁ?とっととその醜い翼をもいで本当の意味で堕天しろや!」
コ「【魔人(ヴェルディ・ネッツィーロ)】に言われたくはない!禁忌の剣を振るう忌まわしき人間め!貴様こそ呪いにまみれて朽ち果てろ!」


なんか高レベルの戦いの筈が幼稚な子供の喧嘩に変わってきたような気がする。まあ、悪口と言うよりは単純な罵り合いだけど。あれ?一緒か。どうでもいいけど。


「ライト〜。そいつ今は【エクスカリバー】を持ってないから意味ないよ?」
ラ「けっ。肝心な時に役に立たない奴だな。ここは見逃してやるから、とっととどっか行け」


コカビエルは忌々しそうな表情を浮かべていたが、実力差を理解したのか飛び出して行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
〜ライトside〜

けっ。まったくあんな弱いならそもそも挑んでくるんじゃねぇよ。興醒めだっての。俺は魔刀・狼牙を次元の狭間の向こうにある家の武器庫に突っ込んだ。


「はぁ…。まったく面白くなかった。封印されている状態の俺と互角ってどんだけ弱いんだよ」
ア「ライトが強過ぎるだけだと思うんだけど。私でもあそこまで圧倒的な戦い方は出来ないよ。っていうか、ライト途中で遊んでたでしょう?」
「遊ばなきゃやってられるか。あんな雑魚の相手はな。あれで堕天使の幹部かよ。正直な話やってられないって」


イリナとゼノヴィアの方を向くと、2人共表情が驚愕の色に染まっていた。まあ、死ぬ覚悟で来たのにあっさりと扱われればそうもなるだろうな。


「2人共、大丈夫かい?」
イ「え?あ、うん。大丈夫。そういうライトさんの方が大丈夫なの?」
「大丈夫。あの程度の奴にやられる程、弱い訳じゃないからな。…言っておくが別に2人は弱くないからな?俺と比べるのがそもそも間違っているしな。十三(イスカリオテ)課の長官嘗めんなよ?」


十三(イスカリオテ)課ならまあトップ3までなら、幹部クラスでも倒せるだろう。とはいえ遭遇する確率が低いし、各々が自由人すぎて集まったことがめったにないんだが。


イ「でも…なんていうか、ちょっと怖かった」
「ああ…。すまん。あの刀は【魔刀】って言って、とある人たちにしか持てないんだ。その素養を持っている奴は大抵、狂気に呑まれて殺人事件とかを起こして教会の連中に抹殺されるから、その存在が知られてないんだよね。魔神を殺すことで至る者達…【魔人(ヴェルディ・ネッツイーロ)】と呼ばれるんだ」


【魔神(ヴェルディ・グランツィーロ)】自体はどこにでもいる。だからこそ狙われやすいんだが。

ただ多くの者を斬る。そんな目的の為に創られたのが【魔刀】という存在で、それを振るう逸材こそ【魔神(ヴェルディ・グランツィーロ)】なんだ。【魔人】はその権利を簒奪しただけの愚か者にすぎない。

別に一般人でも振るえない訳ではない。ただ、振るうとなると素養がないと100%狂う。【魔刀】とは狂気の塊だからな。強靭な精神を持つ者でも、ちょっと油断すればすぐに呑み込まれる。俺でも片足分くらい突っ込んでいるから、言葉遣いが荒々しくなったりする。


「まあそれは置いといて。帰ろうか」
ア「そうだね。私、お腹空いちゃった。早く晩ご飯にしようよ!」
「相変わらずお前は俺に対して容赦なさすぎだろう。戦闘直後の人間に晩飯を要求するような奴はお前とレティアぐらいだよ」


レティアっていうのは、ベルゼブブの事だ。ルシファーの名前はセルニアン。アスモデウスはラグーナ。レヴィアタンはフェリス。

とはいえ、昔は本名は家族以外に呼ばれたことが無いらしく、これはこれで中々楽しい。と言っていた。俺はファミリーネームで呼ばれたことがあまり無いがな。


「大量に用意しなくちゃな。アルトリアは食い意地がはってるからめちゃくちゃ飯を食いやがるし…。作った身としては嬉しいんだが、家計を管理する身としては勘弁してほしいものだよ」
イ「まあまあ…。何も食べないよりはいいじゃないですか。食べられるってことは健康の証じゃないですか」
「健康すぎて困るって結構レアな体験だと思うんだけど…どう思う?」


イリナとゼノヴィアには笑って誤魔化された。俺の料理を美味しいと思ってくれる事自体は嬉しい。でもな〜量がな。一般の成人男性の5倍は食べるからな。こいつに飯を奢った奴は大抵泣きを見ることになる。


そんな事を考えていたら、1羽の烏が飛んできたから俺は足に括り付けられていた手紙を受け取り、手紙を広げて読み始めた。ちなみにもう雨は完全に止んでいた。


「帰ったらしなくちゃいけないかな…」
ア「…どうかしたの?」
「ん?単純に依頼だよ。魔導書の解呪と解読だ」


手を出した魔導書そのものが問題だらけなんだけどな。【始原と終焉の二重奏】。少なくとも俺にとっては禁呪指定の代物だ。写本ですら暴走すれば島の1つや2つは簡単に吹き飛ばすことが出来る。


しかも宅配でもう送られているらしい。両方とも出来ない訳ではないが、あれは決して手を出すような代物ではない。下手に手を出せば…喰われる。


あのガキ…いつか絞め倒してやる。いつも厄介な事件とかしか持ってこないし。報酬が良いのがなおムカつく。


ちょっと苛々しながら俺たちは帰路についた。

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