小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ベルカ式結界の調査に向かったシグナムの前に突然現れたザフィーラ。

 シグナムは当然不審に思うが、目の前の存在から感じ取れるのは間違い無くザフィーラの魔力。
 それ故に、本物か偽者かの判断が付きかねる。

 「お前は…」

 「俺は何故此処に居る?何か…大切な何かを成さねば成らぬのだが…」

 言う事が一切不明では如何にもならない。

 「…そうだ、俺は狩をせねばならんのだ。俺のこの血が獲物を狩れと騒いでいる…!」

 「…この殺気!…お前ザフィーラではないな?」

 余りにも濃厚な『死』の気配がする殺気。
 一般人が此れを浴びたら間違いなく失神、下手をすればショック死だろう。
 まぁ、シグナムにはまるで通じないのだが…


 「苦しんでいるのか…案ずるな、今私が救ってやる!」

 凶暴な殺気を撒き散らすザフィーラ(?)に恐れる事は無く、シグナムはレヴァンティンを抜刀し、戦闘を開始した。













  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス31
 『その名は闇の欠片』











 とは言え、シグナムの実力はザフィーラを上回っている事は言うまでもない。
 其れはこの戦闘でも明らかであった。

 「ぐぬぅ…牙獣走破!!」

 「其れは喰らわん!紫電…一閃!」

 攻撃を軽く回避して一撃。
 矢張り実力はシグナムのほうが上だが、其れでも最近はその差は僅差となっていた。
 まかり間違っても、此れほど簡単に一撃を入れることは難しいはずだ。


 ――攻撃のパターンが古い。此れは矢張り…
 「レヴァンティン『シュナイダーフォルム』!」

 「Jawohl.」

 何かを感じ取り、シグナムはレヴァンティンをシュナイダーフォルムに変形。
 次の一撃で決める心算なのだろう。


 「二刀流だと!?騎士よ、お前何時の間にそんな力を…!」

 「お前の知らない内にな。……此れで終わりだ!飛竜…双閃!!」

 光速二連の炎熱斬撃砲の前に防御は意味を成さない。
 防御をいとも簡単に貫通し、ザフィーラ(?)の身体は炎に包まれる。

 勝負は、この一撃であっさり付いてしまった。


 「ぐぉぉぉぉ!!何故だ!何故、この拳が届かぬ…!何故防ぎきれぬ…!」

 「その荒々しい攻撃、正に野獣そのものだが、矢張り本物には程遠いな。
  本物のお前ならば、今の攻撃を防ぐ事くらいは造作も無いだろう…いや、間違い無く防ぐな。」

 「うぐ…うぉぉぉぉぉ!!!」


 ――シュゥゥゥン…


 負けたザフィーラの姿をした者は、光の粒となって消えた。
 同時に結界も消滅する。

 「…消えた?今のは一体…」


 ――ピッ


 『シグナムさん、アースラのエイミィです。』

 結界の消滅を観測したのか、エイミィから通信が入る。
 その声には何処と無くあせっている様な感じを受ける。

 「如何した?結界は消滅したはずだが。」

 『確かに結界は消滅したんですけど、今シグナムさんが戦ってた相手…其れはどうやら思念体みたいなんです。
  観測してみたら、海鳴の彼方此方で同じような事が起きてるんです!』

 「何だと!?」

 幾らなんでも驚くのは無理も無い。
 決して強力ではないとは言っても、街中に今のが発生するなど歓迎できる事態ではない。


 ――ヴィン


 『将、聞こえるか?リインフォースだ。』

 「お前か。」

 『此方でもその思念体を観測した。彼等は如何やら闇の書の闇――ナハトの残滓の様だ。』

 「ナハトの残滓だと!?馬鹿な、アレは完全に砕いたはずだ!
  それ以前に、アレは此処とは違う次元世界で消滅させたんだ、何故この世界にその残滓が現れる!」

 シグナムの言う事は尤もだ。
 クリスマスのあの日、闇の書の闇・ナハトヴァールは激戦の末に完全に破壊したはずだ。
 しかも、地球とは異なる次元世界で。

 それが残滓とは言え残っているとは信じられないし、次元を超えて現れた等如何考えてもありえない事だ。


 『シグナム、俺だ。』

 「遊星か。」

 『この現象なんだが、夜天の魔導書を完成させる為に、俺のモンスター達の攻撃も書に蒐集させた事が関係しているかもしれない。』

 「…如何言う事だ?」

 更なる疑問。
 残滓がこの世界に現れたのが遊星のせいとは…?

 『モンスターの攻撃の蒐集が=俺の魔力の蒐集だとしたら、赤き竜の力の一端を蒐集した可能性は充分にある。
  もしそうなら次元を超えてもおかしくは無い。俺は赤き竜の『その力』でこの世界に来たからな。』

 言われて納得、確かにそうだ。
 遊星がこの世界に居るということは、赤き竜には次元を超える力が有るということに他ならない。

 ならば、遊星の推測通りだとすれば、成程ありえない話ではないだろう。

 『その残滓は闇の欠片とも言うべきものだ。闇の書が魔力を蒐集した者達の記憶を再生している可能性がある。
  既にヴィータとザフィーラは沈静に向かった。高町なのはとテスタロッサ達も力を貸してくれるそうだ。』

 流石に皆対応が早い。
 アースラ経由で、なのはやフェイトにも連絡が行っているのだろう。

 若しかしたらプレシアとリニスも出動しているかもしれない。

 「分った。私も引き続き鎮圧の方に向かおう。」

 『あぁ、そうしてくれ。私とシャマルも主と共に出る。』

 「主も!?」

 『…一応は止めたんだが、我等の主が黙っている事など出来はしないだろう?
  なに、少しずつでは有るが私も力が戻ってきているし、シャマルも一緒だ。
  別行動だが遊星も出る。主をみすみす危険な目にあわせるような真似だけはしないさ。』

 はやても出動する聞いて、黙って入られないシグナムだが、こう言われては止められない。
 もとより、はやては傍観者で居ることなど出来ない少女だ。

 ましてや、自分の家族や友達が関わるとなれば余慶にだ。

 だからシグナムもそれ以上は何も言わない。
 騎士として、主が決めた事にとやかく言うことは無い。

 ただ、その身に危険が及ばないように最善を尽くすのみだ。


 「…分った。だが、お前もまだ完全ではないんだ……無理はするなよ?」

 『分っている。……闇の書の、後始末だ。』

 『アースラからもクロノ君が出ますから!』


 戦力は充分。
 此れならば、鎮圧はそれほど時間がかからないだろう。


 ――キィィィン…


 「!この感じは…。如何やら新たに現れたようだ。…鎮圧に向かう!」

 『あぁ、無理だけはするなよシグナム。』

 「お前もな、遊星!」

 其処で通信終了。

 その間にも新たに結界が発生している。
 戦力は充分であっても、早めに処理するに越した事はないだろう。








 ――――――








 「此れも俺の記憶が再生されている結果なのか…?」

 八神家を出発した遊星も、着実に残滓の鎮圧を行っていた。
 行っていたのだが…

 「黒く染まったシンクロモンスターとは……叩き込め、ジャンク・ウォリアー!!」
 「トァァァァァ!」


 ――バキィィィィン!!


 そう、現れたのは黒く染まったシンクロモンスター達。
 遊星のデッキのモンスターのみならず、遊星が此れまでに戦ってきたシンクロモンスターのオンパレード。

 尤も、それは只のコピーであるから全く敵ですらないのだが…


 「闇の欠片のシンクロモンスター…姿が黒くなり、ステータスは半分に落ち込んでいるのか。」
 「そのようですマスター。」

 如何やらそう言う事のようだ。
 早い話が、見た目は黒くなっているだけだが、力に雲泥の差がある。

 現実に、此処まで出てきたモンスター達は全て『ジャンク・ウォリアー』のみで蹴散らしているのだ。


 ――闇の欠片の力が全てこの程度なら、鎮圧はそれほど苦戦はしないが…


 だが、だからこそ『嫌な予感』がするのも事実。

 何となく、此処までの戦いは『準備運動』のような気がしてならないのだ。
 勿論只の勘だが。


 だが、遊星の勘は鋭い。
 デュエリストとして、技術者として培われた勘は相当な物がある。


 ――俺の記憶を再生しているのなら、モンスターだけでなくデュエリストも再生される可能性がある。
    チーム5D'sの皆が再生されたら勿論だが、『あの人達』が再生されたら、少しきついな…


 だからこそ、この闇の欠片の再生効果が厄介なものと考えている。
 自分の記憶にあるデュエリストが闇の欠片として現れたら相当に苦戦するのは間違いない。

 ましてや『あのデュエリスト』が再生されたら、苦戦どころの騒ぎではないだろう。


 ――…考えても仕方ないか。俺は俺のすべき事をするだけだ!
 「まとめて蹴散らせ、ジャンク・ウォリアー!『スクラップ・フィスト』!!」

 「ウオォォォォォォ!!」


 ――バッギャーーーン!!


 再びジャンク・ウォリアーが欠片のモンスターを粉砕、大活躍だ。
 この結果内のモンスターは此れで略倒した事になる。

 「…結界が消えない…矢張り他に居るのか?」

 其れでも消えない結界に、警戒を解かずにステラを地上に降ろす。
 場合によっては地上で相手をする必要があるからだ。



 そしてこの判断は正しかった。



 「…矢張り、俺の記憶が再生されているせいか…!」

 地上に降りた遊星の目の前には1人の男が立っていた。
 まるで遊星が降りてくるのを待っていたかのように。

 「貴方が再生されるとは…複雑な気分だな。」

 遊星の目の前の男。


 四方八方に伸びた不思議な髪形。

 紺色の学ランに黒のインナー。

 左腕に装着された初期型のデュエルディスク。

 そして、首から下げれた逆三角錐の装飾品。


 デュエリストならば知らない者は居ない伝説の存在。


 「久しぶりだな遊星。また会えるとは思って居なかったぜ。」

 「武藤…遊戯さん…!」



 初代決闘王にして最強のデュエリスト。




 武藤遊戯が遊星の前に威風堂々と立っていたのだった…















   To Be Continued… 

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