小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 早朝行われた遊星とシグナムの一戦。
 はやての号令で終結したその闘いを遠方から見ている黒いローブを纏った男が1人。

 「不動遊星…オノレ、忌々しいシグナーめ。」

 男は恨みの篭った眼で遊星を睨み付けていた…配色が反転した異常な瞳で。

 「まぁ良い…この世界で貴様を叩き潰すのも一興だ…」

 次の瞬間、男はその場から消え去っていた…









  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス5
 『仕事しましょう』









 さて、八神宅の朝にはすっかりお馴染に成っているものがある。

 「調子は如何だ?」

 「良好です。只、右側のブースターの出力が15%低下していますので整備が必要と思います。」

 「少し加速が弱いと思ったら、右側のブースターが原因か。」

 そう、遊星のD・ホイール整備。
 使用した後のみならず、毎日の整備は欠かした事がない。

 更に、デバイス化に伴い搭載された人格が整備すべきとことを指摘してくれるのは嬉しい誤算だった。
 此れにより、遊星の整備スピードは以前の数倍に跳ね上がっているのだが…


 「本当にお前は、自分のデバイスの整備に余念が無いな不動。」

 整備をする遊星にシグナムが話しかける。


 あの闘いから早5日。
 騎士達もすっかり、日常に馴染んで日々を生活している。


 さて、召喚当時は騎士甲冑を身に纏っていた騎士達だが、今は普通の服を着ている。
 此れははやてが提案したものだが、服選びには遊星も付き合った。

 で、結果として騎士達全員によく似合う服が購入されたのである。

 「DホイーラーにとってD・ホイールは自分の半身みたいな存在だ。常に最上の状態にしておくのは当然だ。」

 「己の剣の手入れは怠らずか…確かに。ところで、ソレの名前はなんと言うんだ?」

 「…名前?」

 「?有るのだろう?私の『レヴァンティン』の様に。」

 その言葉に遊星はD・ホイールを見る。
 (感覚的に)D・ホイールの方も遊星を見た。(様に感じる)

 「…無いな。」
 「無いですね。」

 「な、無いのか!?」

 はい、遊星のD・ホイールに名前は有りませんでした。
 まぁ必要無かったというのもあるのだが…

 「…不動、自分の相棒には名前くらい付けてやったら如何だ?」

 「……なら『遊星号』で。」
 「スマナイ、私が悪かった!その侘びに私が名前を考よう!」
 「?」

 完璧超人もネーミングセンスには恵まれなかった様子。


 しかし、言った手前、変な名前は付けられない。
 少し悩んだ後…

 「そうだな、『ステラ・エクィテス』と言うのは如何だ?ラテン語で『星の騎士』と言う意味になるが。」

 「良いですね!其れにしましょう!!」

 遊星より早くD・ホイールが反応した。

 「お前が良いなら其れで良い。」

 遊星もあっさり了承。

 「それにしても『星の騎士』か。流石だなシグナム、良いセンスだ。」

 「う、うむ、気に入ってくれたのなら私としても考えた甲斐がある。」

 目出度く遊星のデバイスの名前が決まったとこで…


 「遊星〜、シグナム〜、朝ごはん出来たで〜!」


 家主であるはやてから声が掛かる。

 「もうそんな時間か。」

 「行くとしようか。主はやての料理が冷めてはもったいない。」
 ――何処か釈然としないものはあるが、不動の役に立てたのならば善しとしておくか…








 ――――――








 場所は変わって『時の箱庭』。
 此処に居るのは箱庭の主であるプレシアと、管理局のリンディ、そして異世界よりやってきた女性。


 因みにリンディは管理局ではあるが、なのはがプレシアの連行に抗議した際、それに同調した数少ない人物でもあるのだ。

 で、只今フェイトとアリシアは学校に行っているので大人達は集まってマッタリと…

 「闇の書が起動したのは間違い無いのだけれど、リンカーコアの蒐集を行って居ないようなの。」

 過ごしているわけでもなかった。
 闇の書の起動を感知したプレシアだが、それ以来闇の書を完成させる為に必要な魔力の蒐集が行われていない事に疑問を持っていた。

 「上層部も其れを不審に思っているみたい。尤も彼等は完成した闇の書を封印して上で自分達の物にするつもりみたいね。
  危険なロストロギアを封印したって言う実績と、強大な力の両方を手中に収めたいんでしょうね。」

 自らも管理局で上位の地位に居るリンディだからこそ其の言葉は重い。
 そして管理局が抱える裏の部分と闇が見て取れる。

 「それにしても何故蒐集を行っていないのかしら?」

 「今回の闇の書の持ち主が、闇の書の完成を考えていないからじゃない?」

 「「!!?」」

 「アレ…?私変なこと言った?」

 『ガッ』とSEが付きそうな勢いで見られた女性は若干引く。

 「其の可能性は考えていなかったわ…」
 「今までの持ち主が、己の欲望の為だけに闇の書の完成を目していた歴史があるから其の例に捕らわれていたわ…」

 「あくまで『今までは』でしょ?今回の持ち主が魔力の蒐集で他人に被害が出る事を善しとしない人なら無い話じゃないんじゃないかしら?」

 「確かにそうね…沙羅、貴女の洞察力には感服するわ。」

 「こう見えても私は科学者なの。あらゆる事態を考える事には長けてると自負してるわよ?」

 悪戯っぽく女性――沙羅は言ってのける。

 「そうね…貴女は科学者だったわ。類希なる能力を持った、ね。」

 「そう言ってくれると嬉しいかな。で、管理局の方はどうするの?」

 「分らないわ。此ればっかりは私の一存でどうにか成るものじゃないもの。
  クロノを含め、私の部下達は抑えることが出来るけど…管理局全ては無理ね。」

 其れはそうだ。
 如何にリンディが管理局で高い地位に居ようとも出来ない事はある。
 管理局全体を纏め上げるなど到底無理な話だ。

 「そうなると最悪の場合は、矢張りフェイトとなのはちゃんには出張ってもらう事になりそうね。
  あの子達には苦労をかけるわ…本来なら私達『大人』が確りしないといけないのに…」

 「そう悲観しないの。適材適所、私達は私達に出来る事をしましょう?」

 全く邪気の無い笑顔にプレシアとリンディの顔も緩む。

 「沙羅の言う通りね。私達には私達のやるべきことがあるもの。せめてあの子達が無事に居られるように…ね。」

 「其れが一番よ。所でリンディ…」

 「なに?」

 「渋いのが嫌なら日本茶飲むな。」

 沙羅の指摘を受けたリンディの傍には空になったシュガーポットがあった…








 ――――――








 場所は再び八神宅


 「此処は、此れくらいか?」

 「遊星、何しとるん?」
 「何だ此れ?」


 パソコンでなにやら作業している遊星に問い掛けるはやてとヴィータ。
 起動しているのはイラストレーターのソフト。
 画面に出ているのは何かの広告のようだが…?


 「修理屋を始めようと思うんだ。何時までもはやてに頼ってばかり居られない。
  家族も増えたことだし本格的に働こうと思って、其の為の広告を作っていたんだ。」

 「あ〜成程。…うん、ええんやない?シンプルやけど結構目を引くわ。
  時に何で『八神修理工房』なん?『不動修理工房』と違うん?」

 確かに。
 遊星が働くのであるなら『不動修理工房』であるべきだ。

 「あぁ…此の世界に『不動遊星』は本来存在していないからな。病院の石田先生にも俺の事は従兄妹と言って有る。
  だから表向きには『不動遊星』じゃなく『八神遊星』と名乗ろうかと思うんだが…構わないか?」
 「全然OKや!むしろありがとうございました!」

 音速で了承された。
 はやての顔が紅かったのは多分気のせいではない…


 「しかし、仕事か。不動の言う事も尤もだな。騎士として主に頼りきりと言うのは良くない。」

 会話に加わってきたシグナムが遊星の言っていることに同調する。


 確かに、僅か9歳の少女に頼りきりと言うのは良くないだろう…世間的に。


 「あぁ、働けるなら働いた方が良い…ヴィータ以外は。」

 「な、何でアタシは除外なんだよ!」

 除外されたヴィータは噛み付くも…

 「…労働基準法や。まぁヴィータは見た目が私と大差ないからな〜無理とちゃうん?」

 そう、労働基準法。
 如何見たって子供にしか見えないヴィータが働くのは無理だ、法律的に!

 「ま、皆が働き始めたら、家には誰もおらんよになるからな、ヴィータが居てくれるんは嬉しいけどな?」
 「は、はやて〜〜。」

 落ち込みかけたヴィータははやての一言で持ち直し抱きつく。
 なんと言うか、1週間弱ではやては騎士たちの扱いを完璧にマスターしている様子…流石は主。

 「シグナム…」

 「みなまで言うな不動。」

 「そうか…」

 遊星とシグナムも感心するやら呆れるやら…

 「…取り合えず、広告を適当な場所に貼りに行くか。」

 「私も手伝おう。」

 「助かる。ついでに求人誌を幾つか持ってくるか。」


 この日を境に、ヴィータを除く騎士達は就職活動に奔走する事になるのだった…























  To Be Continued… 

-5-
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