小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 海鳴市のとある場所にて、

 「ぐぁぁぁぁぁ!」

 「他愛も無い…お前も邪神復活の為の生贄になってもらおう。」

 「ひ、ひぎゃぁぁぁぁぁあ!!!」

 「邪神復活には程遠いが、中々に力が集まってきた…ふむ、そろそろ使ってみるか。」

 この日、時空管理局の魔導師が又1人姿を消したのだった…









  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス7
 『動き出した世界』









 ――海鳴市・とある広場



 ――カツン


 軽快な音と共にボールがゲートを通過する。


 「5番ゲート通過。」
 「ほっほ〜やるの、ヴィータちゃんや♪」

 「へっ此れくらい余裕だぜ!」

 其処では老人達とゲートボールを楽しむヴィータと、

 「…何をしてるんだあいつは…」
 「楽しそうだから良いんじゃないか?」

 其れを見ている遊星とシグナムがいた。

 偶に外出していた際に何時の間にか知り合って仲良くなっていたヴィータと老人達。
 で、出かける度にこうして親睦を深めているらしい。


 「…デバイスはあんなふうに使って良い物なのか?」
 「知らん…」

 そして本日6件目の修理を終えた遊星と今日のシフトをこなしたシグナムが偶々この場を通りかかり、
 ヴィータに発見され、老人達にも誘われこの場に…

 「ほれほれ、どうじゃお若いの。あんた等もやってみんか?」

 「いや、私達は…」
 「面白そうだな、やってみるか。」
 「お、オイふ…八神!」
 「良いじゃないか、折角誘われたんだ。何事も経験だ。」
 「む…確かに。」

 真顔で正論を言われては反論など出来ない。
 なのでシグナムも誘われるままゲートボールを。

 で、


 「1番ゲートから8番ゲートを一気に通過じゃ…」

 「なんと!」
 「やるのぉ若いの!」
 「此れは負けてられんぞい。」

 「なぁシグナム、アイツの苦手なものってなんだろうな…」
 「聞くな。私も思ったところだ。」

 無駄に完璧超人振りを発揮した遊星が老人達から賞賛されていた。








 ――――――








 ――時空管理局・上層部


 「又してもか…此れで3人目。予言が現実になっていると言う事か…」

 「構わん。最後に笑うのは我等だ。大体にして消えた連中程度の魔導師など幾らでも替えが効く。」

 円卓に集った数人の人物。
 話している内容は実に酷い…此れを何も知らない管理局員が聞いたら如何思うのか…

 「寧ろ問題は闇の書だ。魔力の蒐集は行っていないのだな?」

 「グレアムの使い魔からの報告ではそうなっている。それどころか守護騎士達が人間のように働いているそうだ。」
 「全く滑稽なものだ。所詮はプログラムに過ぎんと言うのに…それで持ち主の方は?」

 「徐々にだが闇の書の侵食が進んでいる。此方から手を打たずとも何れは命に関わる事態に陥るさ。」

 「と成れば当然守護騎士は主を守る為に魔力の蒐集に乗り出すだろう。」

 「ならば我等が下手に動く事はあるまい。当面は監視と静観を続ける方向で…
  すべてが整ったあとで闇の書もろとも我等が手中に納めれば良いのだ『正義』の名の元にな。」

 暗く、そして欲望に満ちた会合は続いていった…








 ――――――








 「意外と楽しめた。あの老人達とは結構会うのか?」

 一通りゲートボールを楽しんだ遊星達は帰宅中。
 3人並んで歩く姿は傍目には兄妹に見えなくも無い。

 「まぁ、アタシが出かける時は結構会ってるぜ?はやてを1人に出来ねぇから今日みたいに誰か家にいるときだけだけどな。」

 本日はシャマルが非番で家にいる。
 なのでヴィータは自由に外出できたというわけだ。

 「でさ、たまたまあの爺さん達に会った時にゲートボールに誘われたんだ。
  どうもアタシのデバイスをゲートボールに使うアレと間違えたみたいでよ。
  で、やってみたら結構面白くて、爺さん達とも何時の間にか仲良くなっちまった。」

 「いいんじゃないか?あの爺さん達もヴィータの事を孫みたいに思ってるみたいだし。」
 「思いがけない才能と言うか、そう言うものがあるものだな…」

 「べ、別に良いだろ。アタシだって爺さんや婆さんのこと嫌いじゃねぇし。」

 僅かばかりに顔を紅くして言うヴィータに遊星とシグナムが笑みをこぼす。
 バレバレの照れ隠しが如何にも可愛く思えてしまうのだ。

 だが、このほのぼのとした空気は突然に壊される。
 遊星の腕に有る赤き竜の痣――ドラゴンヘッドが突如として光り始めた事で。

 「遊星!?」
 「不動!?」

 「此れは…!」
 ――この疼きは!俺が戦うべき相手が現れたというのか?


 「な、何か滅茶苦茶光ってねぇか?」
 「大丈夫か不動!?」

 「あぁ、大丈夫だ。だが此れは、どうやら俺が戦うべき相手が現れたらしい。」

 「お前の戦うべき相手だと?」

 頷き続ける。

 「赤き竜が俺をこの世界へ導いたのには何かしらの理由がある。恐らくはこの世界で俺が倒さねばならない相手がいる。」

 「ふ〜ん。で、如何すんだよ?」

 「俺が成すべき事が有ると言うなら其れを成し遂げるまで。2人は先に家に「戻らんぞ。」シグナム?」

 「我々を甘く見るな不動。我等は既に仲間だろう?ならばお前1人で戦いに赴く理由は無いはずだ。」
 「ひっさびさの戦いだからな、あたしの腕が鳴るってモンだぜ!」

 自分1人で戦いに行くつもりだった遊星にシグナムとヴィータが反論。
 強い仲間意識は既に芽生えていたのだ、特に一度戦ったことの有るシグナムには。

 「1人で行くよりも複数の方が有利であるのは戦いの定石。そうだろ?」

 「…そうだな。分った2人とも力を貸してくれ。」

 「おうよ!」
 「無論だ。」

 そして、

 「デュエル!」
 「「セット・アップ!」」

 すぐさまデバイスを起動し、痣の導くままに戦いの場へと向かっていった。








 ――――――








 遊星の痣が光を放った直後、既に戦闘は始まっていた。

 黒い不気味な瘴気を纏った者と対峙しているのはなのはとフェイト、そしてアルフだ。

 遊星の痣の発光よりも早く異変を感知し、この場に直行しそのまま戦闘と相成ったのだが…


 「はぁ、はぁ…フェイトちゃん、アルフさん…大丈夫?」

 「だ、大丈夫此れくらい。」
 「でも、此れは予想以上にきついね…」

 3人とも満身創痍の状態。
 特になのはとフェイトはバリアジャケットが所々裂け、デバイスも無視できないダメージを受けている。
 無論アルフも身体のあちこちが擦り傷と裂傷だらけ。

 管理局の魔導師にも引けを取らない彼女達がこれほどまでに苦戦しているのには理由がある。

 「く、倒しても倒しても復活するなんて反則じゃないか…!」

 そう、アルフの言うように目の前の存在は幾ら倒そうともすぐさま再生し、直後に強力な攻撃を仕掛けてくるのだ。
 なのはが撃ち貫こうが、フェイトが切り裂こうが、アルフが粉砕しようがそのつど復活されては堪らない。
 おまけにカウンターのように放たれる攻撃には対処しきれず、積もり積もった僅かな被弾が数を重ねて大ダメージと言う悪循環。

 だが、其処は不屈の心を持つなのは。
 普通の攻撃でダメなら最大の一撃で吹き飛ばすことにすぐに思考をシフトした。

 「フェイトちゃん、アルフさん、10秒間時間を稼いで!」

 此れだけで2人には何をするのかがすぐに分った。

 「よっし!任せな!」
 「10秒間…守りきってみせる!」

 すぐさまフェイトとアルフは相手に攻撃を仕掛ける、あくまで倒さぬように、再生のカウンターを受けないように。
 同時になのはは上空へと舞い上がり、必殺の一撃を放つ用意を始める

 「行ける、レイジングハート?」
 「All Right My Master」

 問い掛ければ相棒は応える。
 ならば問題は無い。

 「うん、それじゃあ行くよ!」
 「Yes.Star Light Breaker」

 なのはの足元に桜色の魔方陣が展開され、同時に同じく桜色の魔力が収束して行く。
 其れもなのは1人の魔力だけではない。
 空気中のマナ、既に魔法として放たれた魔力の残骸、そういったものまでを取り込み力は増大して行く。

 そして、

 「此れが私の全力全壊!スターライト…ブレイカァァァァァ!」

 放たれた必殺の一撃、不敗の奥義『スターライト・ブレイカー』
 先のジュエルシード事件の際に、なのはが辿り着いた己の能力を最大に使った超必殺技だ。

 其れは寸分の狂いも無く、敵に命中し霧散させる…が、

 「そ、そんな…」
 「嘘だろ…なのはのアレを喰らったってのに…」
 「復活しちゃった…」

 霧散した直後に又しても再生、そして降り注ぐ無数の氷の刃。

 「きゃぁぁぁ!」
 「やぁぁぁぁぁ!」
 「わぁぁぁっぁ!」

 更なるダメージを受け吹き飛ばされる。
 加えて悪い事に、

 「レイジングハート!」
 「バルディッシュ!」

 今の一撃でなのはとフェイトのデバイスが完全破損し、使用不能に陥ってしまう。
 2人ともデバイスが使えなければ、所詮は只の少女だ。
 アルフ1人で戦うのは、流石に分が悪すぎる。

 「ふふふ、邪神には及ばぬが矢張り素晴らしい力だ。小娘共、お前達の力貰うとしよう。」

 この不死の存在の主と思われる黒いローブを纏った男が現れなのは達を見て口元をゆがめる。
 今まで自分が喰らった魔導師や人間とは比べ物にならない魔力を持った少女達。
 彼女達を喰らえば己の目的は一気に加速するのだ。

 「さぁヤレ!」

 男の掛け声と同時に黒い物体は突撃してくる。
 最早迎撃する術は無い。
 万事休す…3人ともそう思った。


 「手札から速攻のかかしの効果発動。このカードを手札から捨てることでバトルを強制的に終了させる。」

 しかし突如現れたグラサン付きのイカシタかかしが敵の攻撃を食い止める。
 加えて、

 「おらぁ!」
 「店長の御息女に……貴様、無事に済むと思うな!」

 現れたシグナムとヴィータが瘴気を纏った敵を打ち据える。
 この突然の援軍に驚いたのは他でもないなのはだ。

 「し、シグナムさん!?」
 「高町、随分手痛くやられたな?此処から先は我等に任せておけ!」

 闇の書の守護騎士であることはフェイト経由で聞いている。
 まぁその守護騎士が自分の両親が経営している喫茶店でバイトをしていると知ったときは相当に驚いたが…

 「き、気をつけて。アレは倒しても復活するの!」
 「悔しいけど私達じゃ倒しきれなかった…」

 もたらされた敵の情報。
 此れだけを聞くと不死の力を持った無敵の相手に思えるが、遊星はこの僅かな情報から思考をめぐらせていた。


 ――倒しても復活する?妙だな…其れにアレの操り主と思われるあの男の腕にあるのは間違いなくデュエル・ディスク。
    まさか、俺以外にもネオ・ドミノシティからこの世界にやってきた者が居るというのか?
    だが、そうだとしても俺は俺のするべきことをなすまで!


 遊星の心に迷いは無い。
 赤き竜が何らかの目的で自分をこの世界に導いたのは間違いない。
 そして、自分は今正に戦いの場に立たされている。

 加えて未だ幼い少女2人が傷つきながらも戦っていた。
 そうなれば遊星が引くなどと言うことはありえない。

 「俺のターン!チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚。」
 「はぁ!」
 ジャンク・シンクロン:ATK1300


 「召喚獣!?」
 「そ、其れにバイクが空を飛んでるの!」

 その光景になのはもフェイトも驚きを隠せない。
 アルフに居たっては口を開けて『ぽかーん』としている。


 「ジャンク・シンクロンの効果で墓地の速攻のかかしを特殊召喚!」
 速攻のかかし:DEF0


 そんな事はおいておき、遊星はモンスターを召喚して行く。


 「俺の場にモンスターが存在し、墓地のモンスターが0の場合手札のミラー・レディバグを特殊召喚できる。
  そしてこの効果で特殊召喚したミラー・レディバグのレベルは俺のフィールド上のこのカード以外のモンスターのレベル合計と同じになる。」
 ミラー・レディバグ:ATK100    Lv1→4


 「レベル合計8…これってよ来るよなアレが!」
 「あぁ間違いない。あの神々しい召喚獣が来るぞ。」


 「レベル4と成ったミラー・レディバグと、レベル1の速攻のかかしにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング。
  集いし願いが、新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
 「ショォォォォォ!」
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500



 「す、凄い…ドラゴンを使役するなんて…」
 「其れに凄く綺麗…なのにとっても強い力を感じるの…」

 なのはもフェイトも驚きを隠せず、アルフは完全に放心状態。


 一方でローブの男は此れに実に歪んだ笑みを浮かべていた。

 「現れたか不動遊星…忌々しい赤き竜のシグナーよ。…来るが良い此処が貴様の死に場所だ。」


















  To Be Continued… 

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