小説『魔女』
作者:紅桜()

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 『魔女狩り』


 それは多くの女性を苦しめたものだった。
 時には男も魔女とされ、捕えられることがあった。
 家から煙が出れば、毒薬を作っていると言われ、猫を飼っていれば魔女だと言われたほど、人々は徹底的に魔女を消そうとした。自分が疑われていると思い、山奥に逃げれば、怪しげな魔術を使っているに違いないと、捕えられた。


「愚かな魔女を消し去ってしまえ」

「生かしておけば、いずれ人間を滅ぼす」


 口をそろえてそういった。
 そして、言った本人が、次の日に魔女として捕えられていった。

「最初は、魔女を消すための掟でした」

「しかし、しばらくするうちに在る問題が起きはじめました」

 それは、嫉妬して魔女として殺してしまおうとするものが現れたことだった。
 ある時は恋に、ある時は才能に、ある時はその美貌にと、嫉妬し、自分の目の前から消してしまおうと周りにあいつは魔女だと言いふらした。

「魔女だということを証明するために、自白させようと、ありとあらゆる拷問がされました」

 時には高温の熱を持つ釘を刺されることさえあった。

「勿論。魔女ではないと判断され、生きて返される人もいました。しかし、殺される人もまた多かったのです」

 酷い拷問に耐えかねて、魔女でもないのに自分は魔女だと言う人は多々いた。そして、大抵の人は見せしめとして、公開処刑された。魔術を使えば、人間に危害を与えれば、お前もこうなるのだと魔女たちに知らしめるために。


 酷いことだと、顔を歪ませる人々。小声で話し合う彼らに、少年は、静かに、と言う。全員が黙ったのを確認すると、自分の横に居る瓜二つの少女に向かってうなずく。


「今からするお話は、この国で歌い続けられている、悲しい、魔女と王子の恋の歌です。実際にあった話をもとにした」


 そういい、目に光が宿っていない少女は、古そうな分厚い本を取り出す。中を開くと、綺麗な絵が描いてあった。中には、美しい女性と男性が手を取り合い、笑いあう絵もあった。ほほえましいその絵に、人々の顔が和む。
 一ページ目の、紅い空の絵を目の前のたくさんの人たちに見せながら、少女は歌い始める。魔女と王子の気持ちが伝わるように、心をこめて。


「さあ、見てごらん。悲しいお話。さあ、ハンカチの用意、忘れずに」

「ある、ところに。魔女がいたそうな。ある、王子と、恋をしたそうな」


 双子の姉弟は、綺麗な声で歌い、語り始める。悲しい、魔女と王子の恋のお話を。
 涙もろい人なのか、少女が歌った通りに、ハンカチを用意するものも何人かいた。それほど、この物語は有名であった。

「その魔女は、長く美しい髪を持ち、誰もが見惚れる美貌を持った持ち主でした」

「とある王子は、その魔女に一目あった途端、惚れてしまったのです」

 しかし、そのまま二人が幸せになることはなかった。



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