小説『真ん中』
作者:たまちゃん(たまちゃんの日常サタン事)

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これは、あたしが自転車旅行した時の話なんです。。。




静岡の〇〇駅の裏手に公園があるんですけど、

そこで水補給したり、洗濯したりね、

まぁ、洗濯物が乾くまでひと休みしようかな?って思って、

ごろーんと横になった。

良い天気なんだ。

まるで、太陽に包み込まれるかの様な陽射し。




旋回する鳶の・・・


ぴ〜ひゅるるるるる

ぴ〜ひゅるるる


柔らか〜い風が、肌を撫でてゆく。





うまく言葉にできないけれど、

こんな感じを求めて旅をしているんだなぁ!

と、

そんな感覚をただ漠然と感じていましたねぇ。


都会の喧噪にまみれていると、

そんな何気ない感覚を失ってしまいがちですけどねぇ。







目を開けると辺りは薄暗くなっていました。

いつの間にか眠っていたんですね。

正直、ヤバいと思いましたよ。

だってこれから峠に登ると、確実に途中で夜中になっちゃう。

厭ですよ、夜中の峠道は。





でも、しょうがない。



どんどん進んで行くと・・・

もちろん、日が暮れていって景色がシルエットになってゆく。


遠くの山、

ガードレール、

自分までもが、まるで影絵の中に吸い込まれていくような、

不思議な感覚。






暫くすると、山肌が階段状になってきた。

場所が静岡県なだけに、

『茶畑だなぁ』と思いましたね。

山の上の方から、ずぅ〜っとね。

段々畑になってるんだ。

その間を縫うようにして道が続いている。





頂上付近にさしかかった頃には、

辺りはもぅすっかり暗闇に覆われていました。


『やだなぁ!休みたいなぁ!』


と思っていたら、あったんです。





それはちょうど、車2台分駐められるくらいのスペースでした。


実際に駐車場として使っているのでしょう、

とりあえずそこにテント張って寝る事にしました。




どれくらいしてか、音がした。


遠〜くの方から、




き、き、き、





・・・違う。


それ、声なんだ。



きゃっきゃっきゃっ




子供がね、

はしゃいでる、あの声あるじゃないですか?

しかも、近づいて来てる。

時計を見ると、夜中の2時30分なんだ。

ありえない。

山の中なんですよ。






きゃははは






いる。


このテントのすぐそばまで来てる。



きゃははは

あははは



ひとりじゃない。


何人もの子供が、私のテントを取り囲んでいる。




怖い。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ・・・




きゃははは


きゃははは




どんっ

どんっ



私の右わき腹、

左肩に衝撃があった。


ちょうど、4〜5歳くらいのね、

子供の足ですよ。

それでね、踏まれたんだって、そう思いました。




恐怖のせいなのか、

金縛りのせいなのかで、

身体が動かない。

すると、頭と足首を、ガッと、捕まれた。



ぐ、ぐ、ぐ、


ものすごい力で引っ張られた。



ぐっぐぐぐぐぐぐぐぐぐー!



上に持ち上げようとする。

だからまるで、

自分の身体が

テントの中で

くの字に曲がってしまっているような

感覚なんだ。





でもまっすぐ寝ている感覚も同時にある。

奇妙な状態。

苦しくて、痛くて、もがこうとする。


きゃはははは


無邪気な声なだけに、逆に怖いんだ。







『うわあああああああああああああああああああああああああ!』







自分では、思いっきり叫んだつもりだったんですが、

かすれた声を絞り出すのがやっとでした。


でも、そのおかげか?

周りが静かになり、身体が自由に動きました。




その後2時間、

私はテントの中で身じろぎもせず過ごしました。

ようやく夜が明け始めたので、

大急ぎでテントをたたみ、その場を離れました。


そして、元の道に戻った時、私は愕然としたのです。





段々畑、

それは【茶畑】なんかじゃなかったんです。




【お墓】が、ずらぁ〜と、並んでいたのです。


つまり私は、

墓の真ん中に

テントを張って、寝ていた訳なんです。



そして、峠を下りきった処に、

弥勒菩薩の仏像を発見したんです。


【水子供養の墓】だったんですねぇ。


その時、不思議なんですがね・・・




(ああ、遊んで貰いたかったんだなぁ!)

(寂しかったんかなぁ?)




って…

怖いっていうより、



悲しいような・・・



切ないような・・・





そんな気持ちになりましたねぇ。




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