小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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聖弥は息を切らしながら家に入り、大声で叫んだ。
「父さん!話したいことがある!」
家で大声を出したのは初めてだった。
その呼びかけに聖弥の父、木村が怠そうに玄関に来た。
「なんだ?偉そうにしやがって」
「父さん!あんた最低だよ!」
「なんだと!親に向かってその態度はなんだ!!」
木村は聖弥を思いっきり蹴飛ばした。
聖弥は頭をドアノブに強くぶつけ、頭を抑えた。
その時、ヌルッとした感触があった。
見ると、血が手にべったりついていた。
だが、聖弥の怒りはその痛みを吹き飛ばし、木村に強く言葉をぶつけた。
「あんた何なんだ。俺はあんたの実の息子なのに、自分のストレス解消のために暴力とか、友達から孤立させようとかふざけたことしやがって・・・。しかも、他の人にも迷惑をかけている。あんたより俺のほうが、何十倍も、何百倍も、つらい思いをして、ストレスたまってんだよ!」
聖弥は今までの怒りをこの言葉に全てこめて吐き出した。
聖弥が父のことを「あんた」と言ったり、自分のことを「俺」と言ったりするのは家内では初めてだった。
だが、聖弥がいくら気持ちをぶつけても木村は怯むことなく
「は?親に逆らっていいのか?じゃあお前の親権放棄するわ。荷物まとめて出てけ!」
「ああ、そうするよ!」
聖弥はこうなることは分かっていた。
だが、どうしても許せなかった。
一度でいいから自分の気持ちをぶつけたかったのだ。
聖弥は自分の部屋に行った。
そして、一枚のハンカチを血が出た部分に当て、三角巾でハチマキのようにハンカチを抑え、応急処置をした。
そして、制服に着替え、明日の教材だけを持ち、家から出ていった。
『明日が最期の学校だ』
聖弥はその日、公園の屋根付きベンチで一夜を過ごした。

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