小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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次の日、聖弥は異常な寒さで目を覚ました。
聖弥は周りを見回すと、犬の散歩に来たおじいさんが変な目線でこっちを見ていた。
それはそうだろう。
ベンチで学生服を着た男が寝っころがって今起きたような動作をしているのだから。
聖弥は気にすんな、と自分に言い聞かせ、頭の三角巾とハンカチをとった。
血はかさぶたになっていた。
聖弥は公園の水で頭についてる血を洗い、顔を洗った。
そして、学校へ向かった。

教室へ入ると、すでに翔大、愛里、美奈の三人がいた。
「あ、聖弥。おはよう」
愛里が聖弥に気付いたのか、挨拶をしてきた。
聖弥は出来るだけいつも通り接することにした。
「おはよう」
「で、昨日どうなったの?」
美奈が父と話した件について質問をしてきた。
「・・・父さんは何も反省してないよ」
「そんな・・・。聖弥のお父さんは何も感じてないの?」
美奈が悲しそうな顔になった。
「そうみたいだ。もう、この話はよそう。学校生活が楽しくなくなる」
「待って。私から言いたいことがある。本当にそれでいいの? ・・・私のお母さんにも同じこと言ってたし。皆と聖弥を離そうとしたんだよ? 絶対にいつまで経ってもあなたのお父さんは変わらないよ。誰か大人の人とかに相談したほうが良いんじゃない?」
愛里は真剣な表情だった。
「いや、いいんだ。この件は終わらせるんだ」
「そう・・・」
愛里は珍しく悲しい表情をしていた。
どんな時でも場を明るくさせようとしてくれる愛里だからこそ、人一倍悲しく見えた。
結局、気まずい空気のままチャイムが鳴り、聖弥達四人は席に座った。
先生が入ってきて、日直が朝学活を始めた。
いつも通り日直が
「おはようございます」
と言った。
聖弥は、いつも眠さと怠さでこの挨拶をしていなかったが、今回はちゃんと挨拶をした。
最期の学校生活だから・・・。
そして、一時間目が始まった。
愛里は合図を出す準備を始めたが、聖弥が寝ることはなかった。
いつもは睡魔に負けてしまうのだが、今回は絶対に寝ないと決めていた。
「お? 今日は聖弥が寝ないなー。珍しい。どうしたんだ?」
先生も嬉しそうだ。
聖弥は適当に「今日はスッキリ起きたんです」と答え、黒板の文字をノートにうつし始めた。
とても懐かしかった。
チャイムが鳴り、一時間目が終わると、愛里達が聖弥のところへ集まった。
「どうした? 聖弥。今日に限って寝ないなんて」
翔大が気になっていたことを真っ先に言った。
「今日は真面目に授業受けようと思ったのさ」
「へー、珍しい」
美奈が驚きの声を上げる。
「無理しなくていいんだよ」
「大丈夫だよ、愛里。今日はなぜか全く眠くないんだ」
「本当? 無理してない?」
「ああ、してない」
再びチャイムが鳴り、二時間目が始まった。
その先生も聖弥に「珍しい」と感心した。
この時間も聖弥は一切睡眠をとることはなかった。
それどころか、楽しむことも出来た。
二時間目が終わると、隣の席の愛里が顔を覗き込んできた。
「頑張るねー」
「ハハハ、眠くないし」
「そう? 次の授業も頑張ってね」
「ああ」
『最期だからな』
聖弥は改めてもうすくで自分は死ぬのだと思い直した。
ふと、自分が中学校に入学した頃を思い出した。

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